第10話
叩き付ける雨が、更に激しさを増す。豪雨に見る呪いが濃度を深めていく。
『ニァ・イン・ヴレス。モード、スペクトル・アルヴィレヲ』
語って聞かせるような丁寧な発音。雲から視線を外し、声の主を見遣る。
若い女性の機械音声ののち、討ち果てた
士々瓦が事前に教えてくれた通り、負傷した彼女は自動的に
わざわざ新調し、好きだと言っていた服は見るも無残に焼け焦げ、跡形も残っていない。当然、胸には
『
声はなおも
『秒読み段階。3、2、1……モード、アルヴィレヲへ移行します』
宣言の瞬間、ヲサカナが増水した地面に叩き付けられる。
『お見事です、
まるで他人のような声と調子に合点がいった。意図せず、感嘆の声が漏れていた。
「なるほど。操縦士を切り替える仕組みか」
「そうッスね。敵の乗っ取りによる暴走を食い止めるのが主な使用方法ッスけど、この機体は元々、彼女のために製作してたんで」
返ってきた言葉も落ち着いていて淡々としているが、心なしか
『
機械音声の主である女性が控えめに自己紹介をする。お辞儀をする所作も美しく、先ほどのカウンターを見舞った張本人と結び付かない。
『あなたが
それを聞いて安心した。仕組みはどうあれ、
『ですが、これはあなたの任務。終止符は御自分で』
「そうさせてもらう」
『モード、スペクトルはたった今、完了致しました。無論、説明するほどのことでもありませんが、
そう言って棘は、人体に限りなく近い風合いを持つ戦闘用女性型機械から去った。いや、単に大人しくなっただけで、戦闘が終わるまでは
しかしながら士々瓦はといえば、これ幸いとばかりに彼女の首から使用済みの
「脳に異常はないと思うッスけど、念には念を入れたいッスね。
真剣な眼差しで
あまり時間もない。並々ならぬ
「
一糸纏わぬ彼女が起きたらまず、服を手渡そうと思った。彼女はまだ、心まで朽ち果ててはいないのだから――。
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