第8話
住人が往来するにも関わらず、ディベレキラを躊躇なく踏み付けて一気に跳躍した。助走もなしに、身体はふわりと空中に躍り出る。風の抵抗を直に食らっているが、それさえも足の速さと機械の頑丈さを証明するための
音もなく降り立ったドッペルテキンセンションの
「中々に難儀なようだな。その身体も」
息を切らせずに最上階まで駆け上がってきた
「
言いながら普段とは違う扉を開ける。帰宅して最初に開けるものとは別の、防音扉。
「さーて、軽口叩きながら仕事しちゃいますか」
操縦席さながらの席に腰掛けて電源を入れる。重く太い
「こんな使い方されるなんて思ってもみなかっただろうね、この場所も」
細かいレバーを幾度も調整しながら鍵盤のように高速でボタンを操る。
広々としながらも退廃した、香下のドッペルテキンセンションへと電波を届ける。
『出生はともかくとして、
これは士々瓦さんの言葉。テスタメントハーマーで出立する直前に頼まれた。私が戻ってきたのはこの電波妨害作戦を実行するためで、逃げ帰るためではなかった。本当は電磁波そのものを阻害出来れば良かったのだが、そうそう上手くはいかないようだ。
香下のドッペルテキンセンション。その大部屋の中央に聳える
心なしか
――
準備は万端。いよいよ反撃の
調整を終えた私が部屋を出ると、やはり
辺りには吸い終わった煙草らしき香りが立ち込めていて、空気が強い印象を受けた。心なしか頭がスッとする。壁に背を預けたまま黙りこくっているのかと思いきや、彼は「行こうか」と呟いて階段を降り始めた。私も後に続く。大河の前では停車場のない内燃駆動車が一両、ぽつねんと待っていた。
二人で乗り込むと、今度は
見知った街はあっという間に車窓から過ぎ去り、さほど時間を掛けずにあの森と白い鳥居が出迎える。検問所だ。立ち寄って
万が一、ヲサカナを撃破した直後に崩壊が始まった場合のことを考えると、悪性橋から脱出する際、体積が小さい方が被害を抑えられるからだ。
橋下のドッペルテキンセンションに到着すると、塔の付近でテスタメントハーマーが速度を緩め始め、やがては扉付近で停車して鳴りを潜める。
外側から、がしゃんと扉が開く。出入り口の前にいたのは士々瓦さんだった。
「お疲れ様ッス。準備なら出来てるッスよ」
普段の気怠い声で、けれど目付きは真剣そのもの。重そうな異国の鎧と、自身の倍以上もある大きな盾を携えて平然とした顔をしている。
「メルトさん、
受け取りながら横に視線を逸らす。何を見たんだろうか。
「なるべく早くケリを付ける」
普段とは比べようもないほど険しい表情で
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