第8話 切っ先は闘いの中で

 闘技場で繰り返される闘いの数々は、目覚めてからここに至るまでのあらゆる事象よりも刺激的だった。

 刺激的ではあったが、しかし――

 どんな弓手も。

 どんな剣術使いも。

 どんな魔術の使い手も。

 私に一撃を加えられなかった。

 私の一撃に堪えられなかった。


 真の強者に出逢っていないからだ、とうそぶく人間がいた。


「その真の強者って、どこにいるんでしょうねー」


「あっ、あの。匿名さん」

「あー! 受付の係の」

「えーとですね! 近々闘技会が開催されるんです。ご参加いただけませんか?」

「私より強い人、います? なんかちょっと飽きてきてましてー」

「いますよ! 闘技場最強の奴隷剣闘士や東の聖騎士が出場予定ですし、他にも多くの強者がこぞって集まりますよ」

「そうですかー」

 もしかしたら、そこにはいるのかもしれない。

 ――真の強者とやらが。


「少し楽しみですねー」


 繰り返される闘技という名の作業。

 その中で練られた私の技術。

 人間を制圧するための技。

 これこそが私。


 けれど内なる声は「護れ」ということばを繰り返す。

 人間を倒す力で人間を護る?

 よくわからない。


 けれど今はそれでいい。

 お姉様に会えば、きっと教えてくれるはず。

 このの意味を。

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