@魔王城城下・魔司法裁判所

「裁判長、被告モン・リュミエールとフレイは不幸な境遇に生まれました。被告モンの親はあの悪名高き勇者一行です。父親は天啓を受けたとホラを吹いて勇者を名乗り、魔王を殺したとして現在叙勲年金暮らしをしております。被告モンの父は自分の他は女ばかりの同じパーティの全員に手をつけており、被告モン二人は異母兄弟です。母も父と同じで逆ハーレムを築いてどちらも家には帰らないーー」

「待ちたまえ。『魔王を殺した』? 」

「はいもちろんこれもホラです。以前辺境伯が族に殺されたことがあったでしょう。それを魔王陛下と吹聴しているのです。こんな異常な家庭環境に育ったのです。それにーー

それに、なんといっても彼らは未成モンなのです! どうぞ寛大な判決を」


ふくふくと恰幅のいいいかにも好々爺然としたスライム紳士の弁護モンは切々と訴えた。裁判長は獅子の顔の眉間に深い皺を刻み判決を言い渡した。


「被告人フレイ並びにリュミエールを住居不法侵入、窃盗、傷害、殺モンの罪で再教育処分とする。なお再教育期間中に反省が見られなかった場合、刑事未成モンに科すのは前代未聞ながら消滅刑もやむを得ない」


史上稀に見る大量殺戮者に世論も魔司法省も当然消滅刑を是としていた。発展途上にある人間の国とは違い、魔導も科学技術も発達したこの国では死と消滅は違う。この国では死者を蘇生させるのは容易いし、実際殺モンされた罪なき者たちは子供も含めて全員消滅していない。しかし殺モンは殺モン重罪には違いないのである。

しかしながら調べが進むととんでもない事実が明らかになる。この凶悪犯罪者たちはなんと20歳前後だったのだ。成モン年齢100歳、平均寿命500歳の魔王国において未成モンどころか義務教育期間前の年齢、つまりは未就学児だ。

少モン法の年齢引き下げと消滅刑を望む者、しかし引き下げたとして改正前の事件に遡及処罰してよいのか、少モン法に従う場合再教育刑を課すことになるが今までここまでの重罪人はいなかった、果たして再教育できるのか? 少モン院で事足りるか? どの機関で誰がやるのか?

人々は極悪非道の大量殺モン犯に恐れ慄いて世論は消滅刑肯定否定の真っ二つに分かれた。そこで魔司法省幹部自らが再教育の受け入れに名乗りを上げた。うまくいかなかった場合は自分がこの手で悪魔を消滅させると確約したことでようやく国民のパニックはようやく終息を見せ始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る