第9話・伽羅は見て見られた
俺はいつもより早く家を出て、校門で ある人を待ち伏せしていた。
程なくして、対象の人物がやって来た。
俺のクラス、3年5組の学級委員長であり、例の100万円の件について何か知っていると思われる人物だ。
皆の前では『完璧な学級委員長』を演じてはいるが。俺は彼女が時たま見せる『闇』のような何かがとても気になっていた。そんな時に起こったのが、100万円の件と署名未提出の件。
俺と同じ考えをしている
横を通り過ぎようとする彼女に話しかける。
「おい、赤山」
「ん?おぉ!
「ちょっと、お前に聞きたい事があってさ?」
彼女は一瞬、怒りに似たような謎の表情をしたが
「ん?何かな?」
と、言った。
「署名の件。ちゃんと昨日提出したのか?」
「もちろんよ、少し遅れっちゃったけど…。ごめんね?」
「そうか、提出したなら別にいいんだけど」
「……露草君、」
「ん?」
「なんで、私が署名を提出していない事を知ってたの?」
「先生に聞いたからだよ。日曜日に用事で学校に行ったついでにな、『署名の件考えてくれましたかー?』って。 そうしたら先生が知らないとか言い出すもんだからめっちゃ驚いたよ」
あはは、ごめんねー!
と、彼女は笑いながら言う。
「じゃー、露草君、もう一個聞いてもいいかな?」
「どうぞ?」
「どこで、私の『生徒調査書』を見たの?」
(は?)
どうしてだ、何故知っている。
俺は頭をフル回転させて答えを導き出そうとする。
この事を言ったのは、『
彼女らがチクったのか?いや、そんな訳が無い。あの2人は赤山さんの事をあまり好いてはいなかった筈(はず)。
(つまり…、)
無意識の内に彼女を睨んだ。
(これは、
「なんの事?」
「んー、ごめんね、勘違いしてたみたい!」
(何とか切り抜けたようだ)
「別に気にしなくていいぞ?…」
「ありがとう!じゃ、今日も授業頑張ろうね?」
そう言うと、彼女は下駄箱に向かって走っていった。
(やっぱり、あいつは
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(間違いない、あの反応は……)
下駄箱で靴を履き替えながら確信した。
(どこで、どうして、どうやって確認したかは知らないけど、)
私は校門近くで別の人を待っている。
いや、待っているフリをしている彼を睨んだ。
(
******************************
7時間目。
今日の
署名の提出が遅れた事についてだった。
「ちゃんと、昨日の放課後に提出しました。以後、このような事が無いようにします!本当にごめんなさい」
非の打ち所が無い謝罪だった。
ここで竜胆さんか、露草君が何か行動をするかと思ったが、そんな事は無かった。
そのままの流れで、今日の議題が発表された。
『今週末の行動について』
今週末と言っても、今日は火曜日。それを今話したいとはよっぽどの事情があるのだろう。
先週に、この事について話さなかったのは、そこまで頭が回らないほど混乱をしていたからだろうか。
「休日の行動を話し合いたいって……、普通に過ごすんじゃダメなんですか?」
「いや、普通に過ごす分には構わないと思うよ? けどね、大量に物を買ったり、高級な物を買ったりすると、例のFAXの件もあるからあまり好ましく無いと思うし。実際に暴力団に襲われた人もいるから外出自体を控えるのも手かなー、とか色々と考えていたら頭パンクしそうになっちゃって……。だから、細かいとこは皆に考えてもらおうと思ってね」
クラスの意見は様々で、
『自分の身は自分で守るから勝手にさせてくれ』や『あまり、お金を使わないなら外出はあり』、『そもそも外出自体を禁止にすべき』
このままだと意見がまとまら無いと判断したのか、赤山さんは多数決をする事にしたようだ。
結果は、『お金を使い過ぎないのなら外出を認める』。
そこで
「ん?何かな?」
「お金を使い過ぎない…って事だけど、使い過ぎのラインはどこ?」
「そうだねー、だいたい1万円ぐらいかな?」
「1万円か、OK、ありがとう」
どういたしまして、と彼女は言う。
「他に質問がある人はー?」
教室を見渡したが、手を挙げている人はいなかった。
しかし、僕はそこで、いつもなら誰かが座っているはずの席が空白な事に気が付いた。
(あの席は……、
視線を前に戻すと、赤山さんがこちらを見ていた。
「
「え……、いや、何も……」
「そう……」
(彼女は、一体なんなんだ?)
全く見当がつかない。
******************************
放課後。
僕はまた、露草君と竜胆さんに自転車置き場に呼び出された。
放課後という事だけあって周りには、下校時に自転車を利用する生徒達で溢れていた。
「あの……、今日は?」
「いや、
「え……?ま、まぁ、暇ですけど……。何をす
「なら、決まりだな」
「何が!?」
実はね、と言いながら竜胆さんはポケットから何か紙切れのような物を取り出した。
それを僕に渡す。
「これは……?」
「
「……は?」
面倒事に巻き込まれる気しかしなかった。
いや、そもそも朱顔君は何者だ?
なぜ、
これには、あまり触れない方が良いような気がした。
「や、やっぱり予定があったかもぉお……」
「
露草君が首に手をまわしながら笑顔で言う。
「は、はい。行きます。行かせていただきます……」
「いい子だ」
(は?)
******************************
彼を殺すためである。
2人の左手の小指はもう無かった。
黒髪の男は、
(
卑怯と言われても構わない。
外道と呼ばれても構わない。
彼らは、命がかかっているからだ。
おそらく、これで失敗したら殺される。
(ならば!殺される前に殺さなければ!)
金髪の部下が、
何も言わずに。
待たずに。
スポッス、という何かが抜けたような音がする。
消音器をつけていたからだ。
その弾丸は、
しかし、それが
弾丸は勢いをそのままに止まらず、金髪の男の左頬に当たる。
「ッッツツツ!痛っっつたァァァ!!」
「しまっ
彼が『失敗』した事に気付いた時には
「
声を発する前に、黒髪の男は気を失わされた。
ゆっくりと、
そこには、痛みに
「あ、ああ、やめろ、くるな!」
どうやら彼は、左頬に銃弾が当たった時にパニック状態に
「あ、いや、どうせ、そん、あ、あぁァァ
そこで、金髪の男は気を失った。
いやー、こいつには俺なにもしてないんだけどなーと、言いながら頭をかく。
彼は、
そして、
『後は勝手に生きろよ』
そう書き置きを残し、去っていった。
******************************
その
3年5組13番、
彼は、
「
そう呟くと、彼はある所に連絡をした。
「もしもし、そちら、
男達が目を覚まさないか気にしながら電話を続ける。
「今から言う場所で、
******************************
そして、彼が『
同じく3番、
彼は黙って、
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