第8話・緑は対環に気付く
僕は、
とりあえず お前は見とけ、だそうだ。
(今日の授業(かいぎ)は面白い事になりそうだ)
******************************
♪〜♪〜
チャイムが鳴ると同時に、
「さぁ、今日の
「今日の分の議題は考えていない。皆で何か案を出して欲しい」
「なら!」
と、後方で誰かが叫んだ。
いや、
僕は振り返る。
声の主は、やはり露草君だった。
彼は宣言するかのように言った。
「赤山さんが、金曜日に皆で書いた署名をまだ先生に提出をしていない事について話し合いたいです!」
「は?」
山吹君は、驚きのあまり彼女を見た。
クラス全体もザワつく。
「……そうだね、それについては、私も話そうと思ってたから」
「じゃあ、何で提出をしなかっ
「忘れたのよ」
「はい?」
「私も人間だよ?忘れる事ぐらいはあるよ…。けど、それは学級委員長としては
彼女はそこでキレイなお
クラス中から、いいんだよー、しょうがないよねー、わすれることぐらいだれでもあるよー、の声が聞こえる
しかし、ここまで計算済みだったのか、竜胆さんが動いた。
「昨日や
「うん?」
「昨日や一昨日、あなたはどこで何をしていたの?」
「……どうしてそれを?」
「いや、署名って名前書いてあるだけに見えるけど、それだけでも結構な個人情報よ?それをあなたが知らない訳がないから、よっぽどの事情があって休日中に提出をしに行かなかったんだろうなと思ってね」
「うーん、言いたい事は分かるけど、そこまで言わなきゃダメかな?一応私にもプライバシーはあるしね」
「けど、あなたは自分以外の当時その場で名前を書いた25人分の個人じょ
「待って!」
赤山さんとは別の誰かが立ち上がりながら叫んだ。
「
「なんで、そんなに
「は?」
竜胆さんが睨むが、彼女は気にせずにそのまま続けた。
「風花ちゃんだって人よ?学級委員長である前に人なのよ!?少しぐらい忘れてもいいじゃない?」
「けど、提出し忘れたのは署名なのよ?」
「それがなんなのよ!!?」
彼女の身体の細さからは信じられないような大きな声で叫ぶ。
「確かに署名は個人情報の塊かもしれないけど、それを紛失したとか、そういう話じゃないでしょ!? それなのに、なんなのよあなたは!」
「なんなのよは、私のセリフよ。本人でも無いのに何?」
「友達だからよ!」
そこで2人は、自分達以外のクラスの人達に引かれている事に気が付いた。
「みどりちゃん、ありがとう。本当に嬉しい。けどね、これは私のミスだから……ね?」
川澄さんは赤山さんに促され、席に着いた。
結果として、クラスの意見は『署名を提出し忘れたのは赤山さんのミスであるが、竜胆さんは責め過ぎだ』という物になった。
一見失敗したように思えるが、竜胆さんが言うには これでいいのだと言う。
彼女らの動きにはこれからも注目していく必要があるようだ。
******************************
(今日も一緒に帰ってくれなかったな……)
私は今日1日の出来事を振り返った。
朝一から
「あ〜!もうなんなのよ〜!」
クッションを壁にむかって投げた。
ポスッという軽い音がする。
いつまで経っても、もやもやとした気分が晴れそうになかった。
私は昼休みの事を思い出す。
彼らは
(やっぱり、風花ちゃんにはあらいざらい話してもらおう! きっと! きっと私になら!)
思い立つと、すぐに彼女に携帯でメッセージを送った。
『ねぇ、今暇?』
返事は一瞬で来た。
『暇だよ?なになにー?』
『もし、よかったら、ツバキ公園に来てくれない?』
私は家の近くの公園の名前を出した。
『行けない事はないけど、そこで何をするの?』
『いいから来て、そこで詳しい事は話すから』
『オッケー』
とりあえず呼び出す事には成功したので、私は急いで指定した公園に向かった。
○●○●○
私が到着して5分後くらいに彼女は来た。
「みどりちゃん、ごめんねー 遅れて!」
「いや、いきなり私こそ呼び出してごめんね」
「それで何をするの?」
「いや、少し話したい事があってさ……」
「うん、話したい事?」
「そう……、あの、言いたく無かったら言わなくてもいいんだけどさ……、風花ちゃんの家族について、なんだけど」
すると、彼女の顔から笑みが消えた。
「家族?何?」
「いや、離婚し
「なんで知ってるの?」
(あれ?誰だ?目の前にいるのは……)
私は、目の前にいるのが風花ちゃんではないような気がした。
「その、生徒調査書っていうも
「それをどうやって見たの?」
「いや、私は見てないんだけど、露く
「露草?露草がその事をあなたに言ったの?」
「いや、私はたまたま聞いただけだから……」
「……そう、まぁ、
「……そ、そんなわけ!」
公園の
「まぁ、いいわ。二度と話しかけないでね?」
「……え?」
聞き間違いか?
彼女は今何と言った?
「聞こえなかったの?それとも聞こえないふり?まぁ、どっちでもいいけど、とりあえず二度と話しかけないでね」
聞き間違いでは無かった。
「そ、それって、私達はもう友達じゃ
「ねぇ、知ってる?」
彼女は私の声を遮り、話す。
「色相環図でね、『
「それって……」
「つまりね、」
彼女は私に背中を向けて、公園の出口に向かって歩きながら言った。
「そもそも私は、君のことを友達だとは思ってなかったよ?」
(そうか、そうだよ、私の勘違いだったんだよ……)
「……だよね、ごめんね。
そこで彼女の動きが止まった。
「私、彼にそんな事言ってないよ?」
「……え?」
もう、
何が、真実か分からなくなってしまった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます