第7話・竜胆と露草は秘密を暴かんとする
「
私は、いつも
(私に言えない、『大事な用事』、か……)
色々と考えたが答えには辿り着かず、私は校門についてしまった。
そのまま、悶々とした気分で学校の敷地に入る。
下駄箱で靴を履き替えていると、同じクラスの
彼は軽く
そういえば彼は、私が初めて風花ちゃんに『大事な用事がある』と言われた日に、一緒に帰っていたらしい。
(彼なら何かを知っているかも……)
「ねぇ、
「……はい?」
彼は不思議そうな顔をした。
私から話しかける事なんてそうそうないからだろう。
「君ってさ、先週の木曜日、風花ちゃんと一緒に帰ってたよね?」
「はい……、暴力団に絡まれた日の事ですよね?」
「そうそう、その日はなんで風花ちゃんと一緒に帰ったの?」
「あぁ、それは赤山さんに『大事な事を話したい』って、言われて……」
(出た!『大事な事』)
私は彼に顔を近ずける。
草室君は多分、女の子に慣れてはいない。少しでも動揺したら簡単に言ってくれるだろうと思った。
実際に彼は動揺をしていた。
私はそれを見逃さずに聞いた。
「その『大事な事』って何かな?」
彼は一瞬で困った顔をした。
「……それは、赤山さんに他の人には言わないでって、言われてるから……、すみません」
「…そっ、かぁ……」
あえて、泣きそうな声で言うと、
「あ、でも」
彼は何かを言ってくれるようだ。男はチョロい。
しかし、それに続いた言葉は私の予想外の言葉だった。
「それは、
「え?」
「俗に言う『
いきなりの事に呆然としている私を置いて、彼は校舎の中に入っていった。
******************************
僕は校舎に入ると、すぐに職員室に向かった。
提出が遅れた書類を担任の先生に渡す為だ。
ノックを3回し、名乗り、要件を伝える。
担任の先生は自分の名前が呼ばれた事に気づくと、めんどくさそうな顔をしながらやって来た。
(この人、教師むいてないだろ)
「……先生、これ、提出が遅れていた書類です」
「ん?あぁ、あれか、おっけい了解した」
「遅れてすみません……」
「別にいいんだよ、出してくれたら」
僕は書類を渡す時、ついでにある
「先生……、署名の件、考えてもらえましたか?」
すると先生は不可解な顔をした。
そして、予想通りの答えが返ってきた。
「……署名って?」
(……やっぱり)
「いや、なんでもないです!失礼しました」
僕はそう言うと、職員室を出た。
「
彼女については色々と調べる必要がありそうだ。
******************************
4時間目の授業中。
僕の席に、手渡しで何か折りたたまれた紙が回ってきた。
紙を開く。
それは、ラブレターとかいうステキなものでは無く、昼休みに昨日の事について話したいという内容が書かれていた。
(これは誰からのやつだ?)
教室を見回すと、予想外の人物がアイコンタクトをとってきた。
(
******************************
昼休み。
僕はいつも一緒に食べている
場所は自転車置き場。
僕が着くと、彼は既にそこにいており。隣には
「あの……、昨日の事の話って?」
昨日といえば休日で休みだったはず。学校外の事だろう。
「昨日な、俺達は学校に行ったんだ」
「……2人で?」
「まぁ…そうちゃそうだが少し違ってな、お互い同じ理由で学校に来た所ばったり会ってしまった…、ん?何か勘違いしてないか?俺と
竜胆さんも黙って頷く。
「ご、ごめんなさい」
一応謝っておく。
「それでどうして2人は学校に?」
「100万円の件の事だよ。誰が置いたんだろうか?っていう話。そういう訳の分からない事をする奴は大抵昨日みたいに人が少ない時を見計らって何かをするんじゃないか?って思ってさ」
「それで忍び込んだの?」
「まぁ、簡単に言えばそうだな」
「じゃあ、犯人を見かけたり?」
「それは、出来なかったんだがな…、」
そう言うと彼はスマホを取り出し、何か写真を見せてきた。
それは何かの書類を撮影した物だった。
「これは、『3年5組 生徒調査書』というやつだ、クラス全員の家庭事情
「……それを、どこで?」
「職員下駄箱の担任のとこに入ってたのをパシャり、とな」
(あいつ本格的に教師むいてないな)
「その書類に何か気になる事があったの?」
「えぇ、赤山さんについてよ」
今まで黙っていた竜胆さんが口を開いた。
「彼女のとこを見てみて?」
そこには、
『赤山 風花『女』
→茶道部に所属。(部長)
3年5組の学級委員長をしており、明るい性格。
他者を思いやるあまり本音を言わない傾向があり、
両親が4年前に離婚をしており、母親と2人暮らし。』
と、書かれていた。
「彼女の両親は、4年前に離婚をしているのよ。そして、彼女は母親について行った」
「ん?それが?」
「分からないの?親が離婚した後、母親について行ったのよ?」
竜胆さんは、人を試す話し方をするのが好きなようだ。
ここで低評価を受ける意味も無いので答える。
「……名字が変わっている?」
「そう、流石ね」
お前は何様だよ、と思う。
「私達2人はね、その書類を見た時に同じような事を考えたの」
「……同じような事?」
「そうよ」
彼女はクラスの教室の方を向いた。外からだが教室の中を確認する事ができる。
「赤山さんを詳しく探れば、この件について何か分かるんじゃないか?ってね」
「なんで赤山さんを?」
竜胆さんは目を細めながら言った。
「彼女は金曜日、皆で書いた署名を先生に提出していない」
僕は思わず感心した。
まさか、自分以外にもその事実に気付く者がいるとは。
「え?それは本当?」
だが、あえて気付いていないフリをする。
しかし、この判断は失敗だったようだ。
「
形的に言えば、肩を組んでいるようにも見えるだろう。
「お前、今日の朝にその事について知ったよな?」
(……やらかした)
まさか、朝の件を見られていたとは。
周囲を確認しとくべきだったか?
いや、そもそも彼らが僕を呼んだ理由について深く考えておくべきだった。
「シラをきるか?」
露草君は怖い。
空手部にしては気が荒いからだ。
「……いいえ、シラなんかきれません」
「いい子だ」
そう言うと、彼は腕を離してくれた。
「何を……、したいんですか?」
「簡単な事よ」
そう言うと、竜胆さんは再び教室の方を見る。
「赤山 風花の旧姓と元父親について調べる。ただそれだけよ」
******************************
そして、草むらに隠れていた
「……風花ちゃんが?署名を?離婚?旧姓?」
自分が知らない、友達の秘密の多さに思わず目眩(めまい)がした。
(あの子、一体何者なの?)
彼女は自らの胸に手をやり、深呼吸をする。
そして決めた。
(風花ちゃんにあらいざらい話してもらう!1番の友達である私にならきっと全部話してくれるはず!)
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