第4話・山吹は四色を選ぶ
『君!何か話しをしてくれないかい?』
『富豪の遺産についてのお話を…』
『始業式後に教室にお金が置かれていたというのは事実ですか?』
騒々しい。
僕は、話しかけてくるマスコミ達を無視して校門に入った。
隣には、途中でマスコミに囲まれ困っていた所を助けてやった
「ありがとうね、
「え、あぁ、うん、別に気にしなくていいよ」
白臼君と話している時は、女子と話しているような気がして、少しやりにくい。
それにしても、
僕は後ろを振り返り、校門前に群がるマスコミ達を見た。
一体誰がバラしたんだ……。
******************************
朝のHRの時間。
担任の先生は、少し不機嫌な顔をしながら話しを始めた。
「昨日の夜だ、マスコミ達にこのようなFAXが届いたそうだ」
そう言うと1枚の紙切れを皆に見せてきた。
そこには、
『拝見、報道各位。先日殺害された例の富豪の遺産についての情報を私は提供する事はできます。ご興味がある方は連絡をお願いします。』
と書かれていた。
先生は目を細めた、そして問いかけた。
「詳しい事は分からないが、どうやらこの3年5組の生徒達が遺産の一分を隠し持っているという内容のタレコミらしい。俺が聞きたいのは一つだけだ、それは
「否です」
即答だった。
「あの富豪の遺産ですよ? 一分でも相当の金額でしょう。それをただの高校生に過ぎない私達がどうやって隠し通せると?
言い切った。
「だがなぁ…、」
しかし、先生もその程度では引き下がらなかった。
彼は教室を見回すと。
「明らかに変わっているんだよな」
「何がですか?」
「ここから見える光景がだよ。ほとんどのやつの筆箱や
「始業式に向け、
「あくまでもシラを切る気か……。よし、ならこれはどうだ?」
そう言うと、先生は自らの『教師手帳』と書かれた大きな冊子を開いた。
そして、ある1ページに書かれている文を読み始めた。
「9月2日……、つまり始業式の日だ。本校の3年5組28番の生徒、
僕は驚きのあまり若草さんの席の方を見たが、そこには誰も座っていなかった。
今日は休みなのだろうか。
「それは、彼女が一生懸命貯めた貯金とい
「他にもある」
最近、赤山さんは話の途中で遮られる事が多いなと思い、少しかわいそうだなと思う。
誰か彼女に優しくしてあげて。
「他にもだ、同じく3年5組3番の
鶯君は休みではなかったため、先生は彼を見て話し始めた。
「君は同日、隣町で大量に服を購入したそうじゃないか、計10万円。確か君の家は親御さんどちらもが他界していて、君がアルバイトをして
「……知りません」
そっか、と先生は軽く呟くと。
「俺は、他にも情報が入っていないだけで大量購入や、高級な物を買った奴がいると思っている。正直言ってめんどくさい。全ての責任は俺に来るんだ。しかも関わっているのは、裏社会との繋がりが噂されてる あの富豪ときた、命の危機を感じているよ。何も話してくれないのなら、俺が殺されるまでに解決してくれるのを祈るよ」
そう言うと、先生は朝のHRを終わらせた。
先生が教室から出て行くと、クラスの大半の人が鶯君の席に向かった。
「君はそんな家庭環境だったのか!」
「両親はなんで死んだの?事故?」
「アルバイトは何してるの?」
「生活は大変?」
「何か手伝える事があったら気にせず言ってね?」
質問の嵐だったが、彼は笑顔ですべてに対応していた。
「あの子……、闇が深そうだね……」
「ん?鶯のことか?」
「俺はそう思わないが?」
僕は無言で彼を見つめた。
「な、なんだよ?」
「人を見る目無いなぁ……って、」
「んだとゴラァ!」
******************************
♪〜♪〜
7時間目のチャイムが鳴った。
赤山さんは少し疲れてる様子だった。
「
「うん、全然平気だよ、ありがとうね、みどりちゃん」
「マスコミのやつら、まだいるぜ?」
「そうだね、まずはそれから話さないと……、」
彼女は空白の席をちらりと見ると、
「多分だけど、このクラスの誰かがマスコミにあのFAXを送ったと思うんだ……。私は、
「綺麗事は言うなよ?」
うん、分かったと、返事をすると
「……私は、マスコミにFAXを送ったのは若草さんだと思うんだけど、みんなはどう思う?」
と言った。
彼女にしてはハッキリと言ったなと思ったが、そういえば昨日も似たような事を言っていた事を思い出した。
私も同じような事を思っていた、と。
赤山さんも闇が深そうだ。
皆の返事は同じだった。
違いない、と。
それは、彼女に支配されていた子達も同じだった。
これは彼女達が自分達の意見を持つようになったという事なのだろうか、それとも、周りに流されているだけなのか。
これについてはよくよく観察していく必要がある。
「なら、誰か本人に確認してくれないかな?」
「分かった、私がやるわ」
しかし、
「あ………、」
「ん?どうかしたの?」
「彼女の携帯、昨日私が壊したわ」
「………………………………。」
流石の赤山さんも黙り込んでしまった。
「と、とりあえず、若草の件は置いておいて、別の話をしようか?」
山吹君は
こういう事ができるが故に副学級委員長に選ばれたのだろう。
「次は、誰がどうやって封筒をこの教室に置いたのかについて話そう」
確かにそれについては皆が気になっている事だ。
彼は口を手で隠しながら、学級名簿を見て何かを考えていた。
そして、名簿から顔を上げると口を開いた。
「
何故か僕の名前が呼ばれた。
「君たち4人でこれについて考えて欲しい」
「……………え゛?」
僕は思わず間抜けな声を出してしまった。
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