第3話・黄は過去を思い返す
「あの山の頂上…って、えぇ!?アイツこの
今まで黙っていた
私も知らなかったわと、
「周りは山に囲まれるし、その山もあの人の所有地でしたからそれも無理ないですよ」
「じゃー、なんで
赤山さんの質問に朱顔君は少し困った顔をした。
「おい、さっさと言えやクソ陰キャ…」
「あまり褒められた話では無いのですが、実は自分にはハッキングの技術がありまして、例の富豪がどこに住んでいるのか気になった時に1度調べた事があったので」
「うん?それは本当か?」
「いくら君にハッキングの技術があったとしても、相手はあの富豪だぞ?そんな簡単に住所特定まではできないだろ?」
「はい、だからとても大変でした」
だが、彼は簡単に答えた。
下手したら世界トップクラスのセキリュティを突破したという事を。
すごい、見直したー、等の声があちらこちらから聞こえた。
その時だった。
「でも、それってさー!」
いきなり誰かが大きな声で、彼を褒める声たちを黙らせた。
校則違反の金髪でピアスもつけており、制服は生徒指導の先生ですら諦めたのかボタンをしめておらず前が空いている。
彼女はクラスの大半の女子を『私の言う事を聞かないと
そんな彼女が続けて言う。
「それって本当にバレずにハッキングできてたの?ワンチャンバレてて、逆にハッキングされていたというのはー?」
「それは無
「無いって言いきれるの?すごいねー!皆はどう思うー?」
彼女は自分が支配している女子達に声をかけた。
「わ、私もバレてると思う…」
「わ、私も!」
「絶対バレてるよ!」
続々と彼女に支配されている子達が答えた。
自分の意思は無いのか、と少し
「私はねー!」
彼女はまだ続ける。
「君!えぇ…となんだっけ!名前忘れた!とりあえず君がね、逆にハッキングされていて住所が特定されていた。それを見た富豪を殺した誰かが君の通っている学校…、つまりこの学校を見つけ、君のクラス!つまりこのクラスを知って、お金を置いたんじゃないのかなーってさ、思ってる感じなのよねー!」
「……、つまりこの件の原因は自分だと?」
「そうそう!分かってるじゃん!」
空気が一気に変わった。
「確かに、その可能性はゼロではないですね」
「でしょー!ならさぁ……」
彼女はおもむろにポケットからスマホを取り出すと、カメラを彼に向けた。
「今から撮るからこー言って?『私は
ピッ、という電子音が鳴る。
おそらく録画ボタンを押した音だろう。
朱顔君黙ってカメラを見ているだけだった。
「ちょっと、ちょっとー!早く言ってよー、君のせいで私達大変な事に巻き込まれてるんだからね?」
はーやーくー、はーやーくー、と彼女が煽ると、支配されている女子達も同じように言う。
『はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー、はーやーくー』
何回目だろうか、彼が口を開けようとした。
その瞬間だった。
若草さんが座っている椅子が蹴飛ばされたのだ。
いきなり体重を預けていた物が無くなったため彼女は鼻を机にぶつけ、穴から血が出てきた
「な、何!?」
彼女の声は驚きのあまり裏返っていた。
「は、るか…?」
「あんた…、堕ちたわね。それも、堕ちるところまで」
「アンタ!いきなりな
パンッ、と乾いた音が響いた。
黄壁さんが若草さんの頬を叩いた音だった。
「保育園、小学校、中学校のあんたはそんなんじゃなかったでしょ!?どこで間違えたの!?」
「いきなり説教ですか?意味わかんない!」
そう言うと彼女は、椅子が蹴飛ばされた時に落としてしまったスマホを拾い上げ、カメラの録画機能を作動させ黄壁さんに向ける。
「アンタが暴力を振るうとこ撮って拡散してやるんだから!」
しかし、黄壁さんは動じなかった。
そのまま無言で若草さんからスマホを取り上げると、窓から外へと放り投げた。
カンッ、という音が聞こえた。
ここは4階、まず壊れただろう。
「ッッツ!弁償してよね!」
「……」
「なんとか言いなさいよ!」
「…ったらね」
「え?何!?」
「あんたが普通の人に戻ったらね」
そういうと彼女は優しく微笑んだ。
若草さんは信じられない物を見るような目をすると、荷物をまとめ急いで教室から出て行った。
「さてと、」
彼女は軽く呟くと、教室に残っていた若草さんに支配されている子達を見た。
「君達は
「いや、私達は……」
「流石にあれは、舞ちゃんやり過ぎちゃってると思ってたから……」
「そもそも、私はあまり舞ちゃんの事好きじゃないから…」
「……そう」
黄壁さんはそう答えると、無言で竹山さんの席へと向かう。
そして、無言で机を叩いて顔を近づけた。
「ヒッ!」
「自分の意見も持てないの? それって人形と変わらなくない?」
「え、いや、私は……」
「……まぁ、いいわ」
黄壁さんは彼女から顔を離すと、
「竹山さんだけじゃないわ、空色さんも、橙さんも、他の子達も、舞といつも一緒にいる皆よ、自分の意見ぐらいもったらどう?何でもかんでも彼女の言う事にYESしか答えない人形じゃない!それでいいの?嫌なら関係見つめ直しなさいよ!今までもあまり良く思って無かったけど、今日のは流石に酷いよ?もしかしたら舞の言っていた通りかもしれないけど、直前まで朱顔君の事褒めてたでしょ?バカみたいだよ?少しぐらい自分の意見を持ちなさいよ……」
「遥(はるか)ちゃん…」
赤山さんが抑えに入った。
「あ、ごめん、思わず熱が」
「別にいいよ、その事については私も思う事があったから……、私の気持ちを代弁してもらった感じがして少しスッキリしたわ」
「そ、そう……」
♪〜♪〜
7時間目終了のチャイムが鳴った。
「今日はあまり話せなかったから、明日はちゃんと話そうね?」
赤山さんはそう言うと、今日の
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『拝見、報道各位。先日殺害された例の富豪の遺産についての情報を私は提供する事はできます。ご興味がある方は連絡をお願いします。』
その日の夜、マスコミにこのようなFAXが届いた。
この告発が、より僕達の生活を日常から離れた物へと変えていった。
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