第58話 江戸川メイド隊ですか?
「エドガー殿は本気を出せばなんという制圧力を発揮するのだ・・・。」
「悪いが本気は出してない。剣の方はからっきしなだけだぞ?」
頭を掻きながらレストランの近くに出来上がった氷の木に目を移すバロンさん、その後のリアクションもだいたいは想像がついた。
「此奴らは王宮の【影】の者達ではないか!本来ならば王にしか動かせぬ部隊であるぞ、やはりゼファー殿はにっくき国賊であったのか!?」
「お嬢様の証言で大正解ってことか、それにしても面倒な相手だな・・・大元を叩きのめせば終わりとは行かないだろコレ。」
相手はドワーフ国からの密輸で私腹を肥やして己の力を磐石の物とした上、王様をなんらかのスキルか魔道具で操り人形にしている。王宮の中は掌握済みであろうから踏み込むのは得策では無い、それでいてこちらには幾らでも刺客を送り込めるのだからたまったものではない。
まずはどうにかして姫様のいう証拠の品を手に入れなければ。
「それならば我が行こう、お姫様を自室まで送り届ければ良いのだろう?変身スキルの真髄を見せてやろうではないか!」
「ルヴィン、どうする気だ?」
「なに、バロンとやらについて潜り込めば怪しまれはしないんじゃないかと思って。我とジェーンは護衛の騎士にでも化ければいい。」
「なるほどな、そういうことなら俺もいこう。【
その場で俺はもし自分が女性ならどんな顔をしてるか、と軽く考えソレをモデルにぱっと【変身】してみせる。
黒髪は逆に目立つこの世界なので最も多い金髪メイドさんである。声は・・・適当にかえでに近づけておいた。
「おお!?これなら今化けたのを知っておる妾たち以外はわからぬな。」
「ユウスケちゃんの変化スキルは全く別人やな・・・どことなく女やったらこんな顔?って感じもするけど。」
「なかなかやるだろ♪この姿ならユリィとでも名乗ろうかな。」
「声が私に似てない?」
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その後、作戦通りにバロンさんは普段の執事の格好になり俺とルヴィンにジェーンの変化したメイド三人を連れて王宮内を歩いている。
外観もそうだったが内装も実にゴージャスの一言だ。鎧や様々な調度品が飾られて美術館と勘違いする程である。
この世界の王様の城はヒューマン国と獣王国くらいしか知らないけどここはそもそもスケール感から違う。体躯の大きい亜人や魚人種でも行き来が満足に行くし天井もやたらと高い・・・と言うよりも日本の城とヨーロッパの城を比べたような大きさの違いというか。
おっと、あんまりキョロキョロしないようにするか・・・。
その矢先、赤のビーコンさえ出てはいないが只者ではないオーラを振りまく大男に出くわす。
「おお、戻りましたかバロン殿。お転婆姫様は見つかりましたかな?」
「これはこれはゼファー殿。いや、残念ながら此度の情報は誤認の報告であったようです。ドワーフ国に向かった人魚という存在は確認出来ませんでした。」
「ふむ、ではバロン殿を無駄に働かせた情報提供者には厳罰が必要ですな。後ほど資料をまとめ提出してください。」
それだけ告げると俺たちの会釈も無視してさっさと行ってしまった宰相ゼファー。
見た目は温厚そうな背の高いシャチの魚人なのだろうが雰囲気も相俟って非常に胡散臭さを感じる。
糸のような開けているかもわからないような目で俺たちを見ていたが、一瞬見せた瞳からハッキリわかったのは人への信頼感など微塵も感じないような恐ろしく冷たい眼だった。
「ささ、この先がわたくしのお部屋です。」と案内されたのはまさにお姫様の部屋といった感じの薄ピンク色を基調とした可愛らしくも豪華さを感じる部屋だった。
そしてメイドに変身したジェーンが三面鏡の置かれたドレッサーの前に行くと鏡を閉じて前に倒すとその後ろの何も無い壁に手を当てる。すると一瞬光った壁が左右に開かれ
「えーと、金庫は・・・無事ですわね。例のポーチもありましたわ!」
「よし、じゃああとはどうやって宰相の企みをバラすかだな。」
「本人に突きつけてやれば良いんじゃないか?」
「それが一番ダメな気がするが・・・やはりドワーフの国王様に知らせるか、ギュウマにもいい案があるかもしれない。」
「では宿屋までお送りしましょう。エドガー様、お嬢様をくれぐれよろしくお願い致します。」
その後は特に支障もなく宿屋に戻れたが少し怪しさはあるな、戦わずに住むならそれが一番ではあるのだが。
ちなみに元の姿に戻る前にかえで達に着せ替え人形にされて写真まで撮られたのだった・・・。
「そのまま戻っちゃったんじゃ勿体ないよねぇ?」と満面の笑みだったかえでの笑顔は忘れられそうにない。
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