第57話 モンサンミッシェルのような感じですか?

トンネルを抜けた先は夕暮れに彩られた大海原だった・・・まあ運河の中もずっと水中だったが、今は太陽の下差し込む光で海中が照らされとても美しかった。

色とりどりの珊瑚礁、煌めく魚群、たおやかに揺れる海藻、そして何より目の前に現れたとてつもなく巨大な宮殿が荘厳にそびえ立っているのが目を引く。それでなくともこの光景は素晴らしい、写メ撮っとこう(カシャッ)。


「観光目当てでは無いぞ・・・まあ気持ちはわからんでもないがな。」

『はいっ、皆様お待たせしました~ここが人魚国ローレライの誇る王宮、リヴァイアサン宮殿です~。』

「でっかいおしろだ!!かっこいい!」

『先日のハリケーンで少し壊れたところも改修工事が終わったばかりですのでキラキラしてますねぇ~。』


陸に近い浅瀬とはいえ、海底から水面を貫く巨大建築物にみんなが目を奪われている。幸い突然襲撃を受けるような自体にはならなかっただけ安心した。


『さてお腹もペコペコですし、わたくしの懇意にしているお店にでも行きましょうか?』

「・・・今アンタは宰相に追われてる身じゃなかったのか?」

『どんな時でもお腹はすくものですよ〜?エドガー様達を引っ張って参りましたのでわたくし背中とお腹がくっついてしまいますわ~?』と白いワンピースのスカートを捲りあげるジェーン。


「はしたないだろ!」

『はしたない・・・とは?むしろ爺はなに故姫様がお召し物など羽織っているのかが疑問だったのですが。』


バロンさんは見た目で歳はわからないがジェーンの側仕えも兼任しているようだ。ちなみにジェーンは疲れたと言ってはいるが彼が来てから海馬ケルピーとバロンさんに牽引を丸投げして馬車の中におり、先程外に出たばかりである。


『我々近衛は防具を備えて当然ですが普段はほぼ何も付けておりませぬ。』

『そうですよ~このワンピースという可愛いお洋服はエドガー様より頂いたプレゼントなのです!』

『なんと!?』

「・・・なんかオチが読めてきた。」

『陸生種族、しかもヒューマンの方からの熱いですのよ?わたくしトキメキが抑えられません!』

『とうとう姫様にも求婚者とは・・・爺も喜ばしゅうございます。』

「・・・悠介、またやっちゃったみたいだねぇ?」


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悪事千里を走るなんて言葉もあるが、ワイドショーネタが知れ渡るのも恐ろしく早いものだ。

その日、王都リヴァイアサンでは突然姫の一人がおかから婚約者を連れてきたと祝賀ムード一色になったのだった。


今俺たちが馬車で進んでいるのは街の海上部分だ、ローグスレイプニルも呼び出してゆっくり夜の街を進んでいる。

ここでは大体の水棲種族も変化スキルで二本足で歩いているのだが・・・やはり最初のジェーンと同じで素っ裸か簡単な布を巻いただけの者ばかりである、裸族やストリーキングには夢の町であろう。行く先々でトップレスのお姉さんなどからお祝いの言葉を受けるので目を逸らしてばかりである。


「やはり服を着ている者の方が珍しいようですなこの街は。」

「お前たちのように羞恥心を投げ捨てたものばっかりで我が浮いているではないか・・・。」とアリスの言葉に苦言を漏らしたうちのパーティでは俺と同レベルに露出の少ないルヴィンがガックリこうべを垂れている。


それもそうだ、異世界出身組の俺やかえでとウシオ以外のパーティメンバーではという概念を持つはルヴィンだけだったりする、それでも胸元ぱっくりの軍服を愛用してるのだが。


「まあまあ、そんなことよりもう少しでお店ですよ〜?ここの貝のパエリアは最高なんですよ~♪♪」

「・・・それより部屋になにか取りに行くんじゃなかったのか?」

「もう日が遅いですから明日に致しましょう。明日は忙しくなるかもしれませんよ~?」


そして姫様オススメのお店で皆まんぞくするまで飲んで食べて・・・襲撃を受けたのは店を出てからだった。

探査エクスプレーション】にはばっちりと十数個の赤い点が出ていたので油断なく拳銃を抜いている。

そうして目の前に出てきた族の一人は忍者のように目出し帽を被っており体は・・・鎖帷子のようなものしか着ておらず、かろうじて局部を隠しているだけにしか見えなかった。魚人か人魚なのは頭の形が魚なので明白であるが。


「何奴だ!?我々をジョアンナ姫一行と知っての狼藉か!」

『姫にはここで死んでもらおうか、殺れ。』


樹氷フリーズパッケージ


マシンガンのようなフルオート射撃で魔法を。この新しい魔法は【氷結アイシクル】を効率良く銃弾として使うために改良した魔法だ。

効果はわかりやすいだろう、銃弾を受けた瞬間に全身と周囲の水分が凝結し凍りつく。そしてあたかも樹氷に閉じ込められたかのように即席の墓標が出来上がるのである。

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