第4章 ドワーフと人魚の国

第50話・・・どこからその馬出したんですか?

【スレイプニル】

それは元の世界なら北欧神話に出てくる主神オーディンを乗せて走る六本足の黒馬のことである。(説明略)


なんでそんな説明をしたかというと山道を進むのに疲れて倒れてしまったタラスクを回復してやっていたらダンジョンで出てきた例の魔道具をかえでがタラスクに試しに装備させてみたら。


『ブモオオオオオオ!!』と一度あのダンジョンで聞いた嘶き声と共にタラスクがスレイプニルの姿に変わってしまったからだ。

その後は大人しかった地竜タラスクの頃と性格は変わっていないようで大人しくかえでに頭をこすりつけてすっかり落ち着いた様子となっていた。

どうやら神話級ゴッデス魔道具の【スレイプニルのくら】とは装備した魔物を強制的にスレイプニルへと特殊進化させるとんでもないモノのようである。


「たしかにレアな魔道具の中には常軌を逸するような能力を秘めた物も多いからのう・・・しかしここまで馬鹿げた性能のものは初めて見るぞ。」

「スレイプニルを従える人間なんてお兄ちゃんくらいだよ・・・。」「流石はご主人様です。」

「じゃあついでにこいつの力も見てみようか。」


ここで俺は初めて【斬鉄剣】を鞘からゆっくりと抜いてみる。

有名すぎる例の刀のような長ドスめいたものとは違い、これは誰しも想像するような日本刀そのままのイメージの刀である。長さは刃渡り二尺四寸、七十センチ程で重さはあまり感じない、むしろ鉄パイプでも持った方が重く感じるかもしれない。

刀身は真っ黒で刃の方にも峰の方にも細かい波紋が入っており、ダマスカス鋼のような独特の紋様だ。

俺は剣道経験は学校の体育の時間にやった程度しかない、しかし両手で柄を握ってみると不思議なくらいスっと自然に構えることができた。


「悠介の纏う雰囲気が変わったか?やはり何か心得があるのじゃろお主。」

「真剣持ったのは初めてだっつの!でもこいつの使い方は・・・わかる。多分のこの刀の能力だ。」


そして軽く振るうと目の前にあった木が音も無く斜めに寸断された。斬った感触は包丁でトマトを切るよりも手応えがなかったように感じる。


「うわあ・・・ボクでもとんでもない業物だって分かりますよそれ・・・ユウスケ様はそろそろ人間の強さを辞める気ですか?」

「俺はちゃんと人間だよまだ!」

「将来辞める気はあるのじゃな・・・。」


そのままにするのも可哀想なので木は【治療トリートメント】を使い治しておいた。


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その後は元気になったタラスク改めスレイプニルに【ローグ】と名付けて馬車に繋ぎ直して高山地帯を進んでいくと徐々に大岩をくり抜いて作ったような町が見えてきた、これがドワーフの町だろうか。

ん?やたら門番が多いような気もする。


「止まれ止まれ!!冒険者か・・・って何だその馬鹿みたいにデカい馬は・・・!?」

「この町は現在通行禁止だ!帰ってもらおう!!」

「なんなんだいったい・・・。」


「ここは鉱山の町ボルカン、この町は盗賊共の標的になっていてな・・・お前らのような信用ならん冒険者は町に入れることは出来んのだ。」と奥から出てきた門番の人達より一回大柄なたっぷりの髭を蓄えたおじさんが言ってくる。


「そうだそうだ!冒険者を名乗っておいて実は盗賊共の斥候かもしれねぇ!」

「消えろ!!」と投げられた石がかえでを掠めた。

チラッと視界のマップを見ると・・・敵対心を持った赤い点は一つだけだな。こいつは確かいま石を投げてきたやつだな。


「俺たちは昨日エルフの森林国を出てこちらにやってきた冒険者です、証もありますよ?」とB級冒険者の証である銀色のカードを見せるが・・・。


「うるせえ!そんなもん信用できるか!!」と、例の赤い点を表示したやつが俺に殴りかかってくる。

それをスっと避けると腕の間接を決めて押さえ込んでやった。剣道は知らないけど護身術はある程度出来るのだ。


「あんたらに聞きたいがコイツ本当に町の住民か?恐らく違うと思うんだけど。」と、眼帯とカツラをはぎ取ってみせる、わかりやすい変装だ。


「んん?誰だおまえ?」

「ああっ、こいつ見覚えあるぞ!連中の一人じゃねえか!!」

「本物の斥候はこいつみたいだな。」と、そこでクララが手刀を延髄に落として気絶させた。

後はロープで町の外の木に抜け出せないようしっかりと縛り付けておいた、これで盗賊とやらの牽制にもなるだろう。


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「いや疑っちまって悪かったな。今日も遅いし詫びって訳じゃないが俺の奢りだ、存分に食ってってくれ!」


そして案内されたのは町の酒場。

ドルトンと名乗るドワーフの彼が店主であり、町長不在のこの町のまとめ役らしい。


【ドワーフ】

ドラーフとも呼ばれる彼らは二本の立派な角が頭に生えている種族だ。見た目ヒューマンよりも立派な筋肉を持ち、戦士や鉱夫や鍛治職人となるものも多いので彼らの多く住まうこの地は自然とそういった職人が集まってくるのだという。

ちなみに男性は偉丈夫であることが多く豊かな髭を持ち、女性は百五十センチも無いものばかりで代わりに大きな胸が際立つ。


ドルトンさんはとてもわかりやすいほどのドワーフ男性であった。

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