第49話 ドワーフに会いに行くんですか?

「さーて、次はどこに行くかなぁ。」


俺たちはタラスク馬車に乗って街道を進んでいく、道なりに行けば次の分かれ道で山方面か海方面の選択肢になるだろう。


観光してるだけで襲われるエルフの国はもう勘弁かなぁ・・・面倒に巻き込まれるのも避けたいし。

結局ダンジョン制覇はギルドには伝えないことにした。それでなくともダンジョンで拾った素材やら要らない装備とか売り払ったらその金を目当てに襲いかかってくる不届き者ばかりだったからだ。ほんとこの世界のエルフは下手な人間よりも人間くさいのしかいないんだろうか・・・。


「そういえばエルフは仲間にならなかったね、流れからするとそんな感じになるかと思ってたのに。」

「お嬢様、一応はわたくしもエルフではありますよ?ハーフですが。」


そう呟いたクララは瞬時に姿が変わり大蛇の下半身は消え、いつの間にか格好もロンスカのメイド服に変わっていた。体毛も髪の毛くらいに収まって俺たち以外にはただのエルフのメイドさんにしか見えないだろう。


「どうしたのその姿?」

「獣人の持つライカンスロープ能力はご存知ですね?これはその応用のようなものでして下半身が人間以外の形をした種族にはこうしてヒューマンに近い姿となれる者もいるんですよ。」

「へえ、初めて知った。アラクネもそうなのか?」

「・・・・・・いいえ、ボクも今知りました。」


それをアリスは目をまんまるにして見つめていた。

アリスはこれまでの旅の道中ずっと一緒だったが明らかにヒューマンのサイズにしか対応していない宿屋や店に閉口する場面も少なくなかったのである。これも亜人種ならではの悩みの種かもしれない。


「クララ殿!どうやったらその魔術が使えるように!?」

「魔術ではなく固有スキルようなものですかね?」

「たしかにクララのステータスには変化スキルがあるな・・・アリスには無いやつ。」

「そんなァ・・・ボクだって邪魔にならない身体には憧れもあるんですよ?」


確かに。俺も獣人みたいに変化出来たら面白そうだなと考えてみる。

・・・あれ、考えてみたら出来たんだが。


「アリス、出来るかもしれん。」

「!?どうゆうことですかユウスケ様?」


変身ミューテーション

たった今創造した。これは自他問わずに自らの身体を好きに変化させる魔法だ、そしてどのように変えるかはこの魔法を受けた者が変更出来るようになるので実質


「そんなことまで出来るのですか!?」

「・・・お兄ちゃんの魔法は何度見ても破格だな・・・これは狙うなという方が土台無理ではないのか?」

「ルヴィンの変身スキルの見様見真似だぞ?」

「レア種族ヴァンパイアの秘術の真価をかんたんに模倣してる時点でそんな事言われても・・・。」


実はスキルと魔術は別物である。

魔術はどんな者でも使用できるがスキルに関しては種族限定であったりジョブ限定のものが存在する。一部魔力消費にて発動するスキルも存在するが、剣技や料理などは技術スキルに分けられる。要はパッシブスキル自動発動アクティブスキル任意発動という訳だ。

ルヴィンのヴァンパイアの秘奥義とは変化スキルのことを指していたのであろう。


「わたしの場合は変化できると言っても脚を蛇から二本足に変えるだけですから全身変えられるルヴィンお嬢様には敵いません。」

「そ、そうなのか?やはり我が種族は至高の存在であるのだな!!」

「ダンジョンでドラゴン化してなかったか・・・?まあいいや、チョロ吸血鬼はほっといてアリスは実験してみるか?」

「是非とも!」

「じゃあ【変身】っと。」


すると俺の魔法を受けたアリスの身体が一瞬光に包まれるがすぐ治まってしまった。


「なんか変わった感覚ある?」

「・・・今の一瞬で変化の仕方が理解出来た気がします・・・。」


そう言うと馬車の中で立ち上がったアリスの腰から下が淡く光るとみるみるうちに蜘蛛の半身が縮んでいき綺麗な二本の脚に変わってしまった。

もちろん何にも履いていない。


「おお!素晴らしいですぞこれは!」

「え、なになに?」


クロはシルバーとYOtube動画を見ていたらしく聞いていなかったようだ。人間の足に恥ずかしがるアリスをジロジロ見回している。

ちなみに俺は展開が読めたので目線は咄嗟に外していた。


「わあ、アリスのあしカエデそっくりだ!」


「お客さんら、分かれ道に着いたで~?どっち進むんやユウスケちゃん。」

「ああ、ありがとうライラ。山の方は何があるんだっけ?」

「たしかこのまま進めば国境越えてドワーフの国やな、んで海沿いを進めばそっちは人魚の国やわ。」

「よし、じゃあ両方行こうか!まずはドワーフの国にしよう。」

「なんで?」

「俺たち武器とか全然じゃないか。一度じっくり見てみたかったんだよな。」

「・・・もしかして勘違いしとるかも知らんけどドワーフ=鍛治職人やないで?確かに種族適正でそういうジョブを生業にしとるのも多いんやけど。エルフにアーチャーや術師が多いって思い込むんと同じやで?」

「そうなの?・・・でもいるなら行ってみようぜ。」

「りょーかい!ほなタラスクはドワーフの国に向かうで!」


その後はゆっくりと進み、馬車の中では変化スキルを使って遊んだりライラと御者を変わったりしながら一行は国境を抜けて高山地帯へ入っていくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る