第51話 マッチョはお好きですか?
一応はこの世界にも警察に準ずる制度は存在する。
犯罪行為の重さ軽さによって、もっとも重いものは磔刑もしくはギロチンによる死刑。軽いものだと投獄もしくは犯罪奴隷を何年という形式になる。
また犯罪を行なった者には右の二の腕に焼印を印し、再犯を三度重ねた者は例外無く
そして盗賊行為を行う者の大半はそういった前科者が世間に馴染めずに手を染めてしまう場合が非常に多く、国によっては犯罪者更生のための機関など置く事もあるがまだまだ浸透していないのが現状である。
「犯罪奴隷に身を落としてしまった者の扱いは総じて酷いものですからな、我が妻も奴隷ではあったのですがわしが一方的に惚れてしまってな。」
「そんなこともういいじゃありませんか、私は貴方からの愛でこうして娶られたのですから♡」
お茶を運んできた途端にイチャイチャし始めたドルトン夫妻、奥さんはリザードマンであった。
ちなみにこの世界では明確なハーフというものはエルフ以外はあまり当てはまらず、両親の種族どちらかが産まれてくるらしい。
夫妻の子のドワーフの女の子の相手をクロがしてくれている・・・というか一緒になって遊んでいた。
「いいですねぇご夫婦というものは。」
「経産婦は妾だけじゃろうからな・・・まあ子供は良いものである。」
「・・・でドルトンさん、俺たちに頼みたいことってのは盗賊退治か?」
「そうなんです。それだけ大所帯のパーティをまとめるあんたを見込んで正式な依頼として頼みたい。」
話によるとこのボルカンの町は鉱山の恩恵で小さくとも潤った町である。その潤沢さを狙って最近流れて来たという盗賊共のターゲットになってしまったとのこと。普段は常駐する憲兵もいることはいるのだが先の襲撃の際に町長共々殺されてしまったらしい。
「町長は奴らに嫌気がさして勇士達と憲兵による討伐隊を組んで討伐に向かったのだが全く歯が立たずに打ちのめされてしまってな、翌朝町の外に彼らの亡骸がご丁寧に焼かれた状態で遺棄されておったのだ。『次はお前らの番だ』と看板付きでな。」そして恐らく斥候もその時に潜り込んだのだろうとドルトンさんは加えた。
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その後食料をクエスト準備金代わりに受け取った俺たちは盗賊が潜伏するという坑道跡に向かっていた。
そしてそこに一羽の小鳥が俺の元に降りてくると元のルヴィンの姿に変わって御者台の隣に座った。
「お兄ちゃん、賊はこの先の洞窟のような場所に十数人ほど身を潜めているみたい。」
「おっさんの情報通りか。挟み撃ちの可能性もあったから町で【
【探査】で
森やダンジョンなら襲いかかってくる魔物は大概反応するのだが、こと理性のある相手となるとこちらを認識するまでは赤い点が出ないのだ。ひとえに盗賊といっても四六時中殺意を振りまきながらうろついてる訳じゃないのである。
「便利なものにもそういう難点はあるのじゃな。」
「そゆこと。」
今回アジトに踏み込むのは少数精鋭ということで俺とウシオ、それからルヴィンとクロの四人だけでドルトンさんから借り受けた町の小さな馬車に乗ってきた、他のメンバーは盗賊の別働隊を警戒して残ってもらっている。
今回のコンセプトは盗賊共の欲しがるものは?と考えた際にクララから上がった『女の奴隷』を盗賊に売り込むという体で作戦を組むことにした。
「なんだテメェら!ここは立ち入り禁止だ!」
「はい、私どもは流れの奴隷商でして。ドルトンの町にも寄ったんですが入れもしなかったんでさ。そこであなた方の噂聞いて商品は如何かと思って足を運ばせていただきやした。」
そう言って荷台の布を取っ払うとボロボロの貫頭衣だけ着た彼女らを見せる。弱りきった無抵抗の姿だがとてもセクシーでもある。・・・騒ぐなよクロ?
【
「ほう、上玉揃いじゃねぇか。いいぜ入りな、お頭に見てもらおうじゃねぇか。」
「ありがたき幸せ。」
鎖で繋いだ三人を連れて見張りの男の後に続いていく。
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「へぇ、地味だがいい男じゃないか!いいさ、今日はあんたが酒の相手をしな!」
意外だったのは盗賊のお頭を含めた大半以上が女性であったのだ。男連中は見張りや斥候などの使い走りのようだった。
「意外かい?それともハイオークなんて見るのは初めてかい?」
「いえ、ご相伴させて頂きやす。」
【ハイオーク】
オークの女性から進化した女のみの種族、オークと違い逆に男を襲って子を成す性質である。
頭には二本の角を生やしドワーフ男性のように筋骨隆々のものが多い。そして灰褐色の肌に際どい局部だけ隠したような服や鎧を着込むのを好む。
マッチョな女性好きな読者諸兄に捧ぐ。
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