第46話 炎の魔剣は憧れますよね?
飛んでくる槍衾はさっと払い除け
目前から迫る巨大な石球は割ってから壁にめり込ませ
鋭利なギロチンは拳一つで叩き割り
巨大なゴーレムさえ弱点を消すことなく捩じ伏せ
吊り天井など片手で防ぎきり
モンスターハウスなど笑いながら全滅させ
罠のついた宝箱も素手で開き無傷。
それが調子に乗ったルヴィンとクララを先頭とした行軍だ。
後ろから襲いかかってくるようなタイプの罠や魔物だろうと瞬時に二人が対処するため俺たちは本気で歩いているだけであった。
次の日朝からダンジョンに挑戦した俺たちは先日はいなかったメンバーも多かった為一階層からやり直しとなったのだが、既にもう三十五階層のボス部屋も難なく抜けていた。
「そこがこないだコイツを拾った部屋だよ。」と俺の右手中指に嵌った【獣神の指輪】をルヴィンに見せる。
「やはり我らを見て逃げ出すような輩の落とした宝箱から出てくるようなシロモノではないですね・・・どんな幸運が巡り巡ればそんな結果を生み出すやら測りかねません。」
「ラッキーだなユウスケ!」
本当にラッキーならそもそもこの世界に居ない気もするけどな・・・まあ、みんなと出会えたなら幸運か・・・など思いついたが死んでも口にできない。そんなこと言える程ピュアならなろう主人公にでもなれる気がする。
ちょうど飲んでいた水を吹き出したウシオはほっとこう。
「ご主人様、お嬢様の加護が働いているとはいえ既に正午も近いですのでお昼になさいましょうか?」
「ん?そんな時間か。」
クララはどこから取り出したのかアンティーク品のような鎖の着いた懐中時計を滑らかな手つきで眺め仕舞った。スマホを見ればいいのに・・・。
「ではこちらへ、
クララが取り出したのは人数分のテーブルセットと簡易的なキッチンだった。そしてものの数分で昼食の席が用意された。
前言撤回、既にスマホも使いこなされておる・・・。
「本日のメニューはご主人様のお好みになられている森牛のシチューとクロワッサンでございます。」
「わーい!シチューだ!」
「クク、きっちり胃袋まで掴まれておるようじゃのご主人様よ?」
正直に言って例の煮込みよりよっぽど丁寧な味付けで好みでした。
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そして誰もいなかった四十階層を抜け、サクサクと進んで五十五階層。
そこに現れたのはシェイプシフター、要はこちらの姿を真似て攻撃してくるタイプの魔物だ。
だが銃まではコピーしてくることはなく、遠距離からの【
「うへぇ、アタシたちのモノマネしてくる奴だったの?」
「何もさせずに速攻、うむ一番の手とは思うが・・・。」
「もし明確に俺たちの誰かの姿になってたらそれこそ攻撃しづらくてしょうがないだろ?」
「確かシェイプシフターは上級に近い悪魔だったような・・・おや、ドロップ品が複数あるぞ。」とルヴィンが拾ったのは人形のようなものとネックレスに・・・剣?
「おお、やはり上層ともなればいいものばかり落ちるではないか!」
「ええと、鑑定しますね・・・・・・【モノマネドール】【魔術弾きの首飾り】それからコレは・・・【フレイムタン】。」
「フレイムたん?なんか可愛い。」
「モノマネドールは触れて魔力を注いだ者の姿そっくりに変身する魔道具版シェイプシフターのようなものですね、動きはしますが喋ることは無いので囮に使えるでしょう。首飾りは名前のままあらゆる魔力攻撃を反射する結界を装備した者の周囲に張れます、回数制限こそありますが。」
「どっちも使い道次第かもしれんけど微妙な・・・。じゃあこの剣は?」
「ああ、この魔剣は確かパパの宝物庫にもあったから知ってるぞ!」
ルヴィンは刀のような魔剣を慣れた手つきでスラッと鞘から抜くとジッポライターのような匂いと共に火花が散ってたちまち刀身が炎を纏い出す。
「このように魔力を通しながら抜剣すると火を噴く
「おお、コレは良いですね!」と珍しく良い反応をするアリス。
「じゃあアリスが使うか?俺じゃ剣は振るえないし。」
と言いつつも興味の沸いた俺は刀のような剣を借りると試しに抜いてみることにしたが・・・。
ズドオオオオオンッ!!!
抜いた拍子に振り抜いてしまった結果その剣閃にも似た大出力の炎はダンジョンの壁を斜め一直線に焼き焦がし、グズグズと真っ赤になった岩の壁は溶けだしてまだまだ明るい外の様子が見えたのだった。
再生するはずの壁も焦げてそのままになっている。
「・・・取り敢えず悠介は使用禁止じゃ。」
「はい・・・。」
「ダンジョンの壁が直らない威力とは・・・?」
「え、フレイムタンってそんな使い方あるんですか?」
「流石はご主人様です。」
「すごいぞユウスケ!かっこいい!」
こうして俺はフレイムタンに触れることすら禁止になったのだった・・・漫画に出てくるような剣でかっこいいと思ったのになぁ。
その後はアリスが脇に差して進むことになった。
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「ではこの先がいよいよ六十階層ですね!」
先程のボス部屋から進んだその先はやたら広く感じる草原のような回廊が続き、壁もなく太陽のような明かりまでさんさんと降り注いでいたので本当にダンジョンの中か怪しかったが階段だけはひょっこりと次の階へ続いていた、あらためて異世界なんだなと痛感した瞬間である。
「中の反応は白い点が一つだけ、今までと違い敵対反応ではありませんね?」
「でもボスはいるんだろ?」
「おかしいですね、罠でしょうか?」
「いけいけどんどーん!」
「あっ、クロお嬢様!?」
待ちきれなくなったクロによって開け放たれた最後のボスの間、そこに居たのは・・・白い旗を口で器用に振るこれまた全身真っ白なユニコーンであった。
見れば泣いているようにも見える。
「ひ、ひぐぅ・・・殺さないでください・・・。」
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