第43話 パスタ対決と吸血鬼?
~かえで視点~
そしてお昼の時間。
ライラとクララは料理対決とばかりにみんなが食べ切れるようにとスパゲティをお互いに半量ずつ作った。
ライラの皿は少量のトマトにたっぷりの赤ワイン、牛と豚・・・に似た種の動物の挽き肉を使ったオーソドックスなボロネーゼだ。しかしそこにポルチーニ茸を使うことで香しい香りを演出している。
日本人の言うミートソースとボロネーゼは実は材料こそ似ているものの別種のスパゲティである。違いはボロネーゼはそこまでトマトを多用することなく赤ワインで煮立てることで特有の渋みが肉の味を引き立て、あまり一般的では無いかもしれないがきしめんの半分ほどの太さの平打ちパスタを使うことでその重厚なソースを余すことなく絡めて頂けるのだ。対してミートソースはトマトと玉ねぎをたっぷり使いパスタは通常のもので頂く。ボロネーゼは最初からソースをパスタに絡めた状態で提供されるがミートソースは主に上からかかっている場合が多いだろう、筆者はアレが苦手で味がまばらになることが多くて困っている。
「ライラ特製スパゲティ・ボロネーゼだ、さあお上がり。」
対してクララの皿は・・・黄色い。
「こちらはこの地方原産とされる
「すごい・・・二人ともスパゲティでこんなに本気出す!?(チュルッ、モグモグ)ライラさんのこのお肉のパスタとっても美味しい!、たれと平たいスパゲティがよく合います!」
「むう、妾もすぱげてぃはこの世界に来てから知ったがこんなにうまいものは初めてじゃ!まさかかぼちゃを使ってくるとは、具となったこの塩漬けの肉とキノコもいい味を出しておる!」
「はぁ、こんなに美味しいのはうちにいたヒロさん以来だよー、懐かしいなぁ・・・。」
ちなみにヒロさんとは横山家お抱えの料理人である。どこぞの
そして私とウシオさんが満足したのを見てライラもパンプキンクリームのパスタを食べてご満悦のようです。
「はぁ・・・ライラお嬢様のボロネーゼも素晴らしい味でした、ご馳走様です。」
と、その場のいる者の中で最も美しい作法でクララも完食。ガチのお嬢様であるかえでも見る影はない。
「そういや悠介たちはちゃんとご飯食べてるかなぁ・・・。」
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~悠介視点~
残っていたバランの食堂のおばちゃんの弁当がとうとう無くなってしまった、あの森牛の煮込大好きだから【
「ちょ、ちょっと待て!!」
「へ?」
現在昼飯を済ませてから一気に進んで最高到達高度と呼ばれている四十階層のボス部屋である。
考え事をしていたら他の三人がさっさとレッサーデーモンを追いつめさあトドメという所で件の血まみれになった悪魔が声を上げたのだ。
「話せたのかお前?」
「基本的に高位の悪魔ともなれば人語程度理解するッ!それよりもなんだ貴様らの出鱈目な強さは!」
「アンタが知らないだけでこの世にはアホみたいに強いやつなんてわんさといるさ、今まで当たらなかっただけ幸運だったんだろう。」
「クッ・・・ならば貴様!一人戦わず女どもに任せていたのはお前が絶対的存在ということだろう?」
「ぜったいてきそんざい?」
「そうですね、あながち間違ってもいないかと。」
「ボクたちのご主人です!」「少し違わないか!?」
「まあいい、貴様嫁はいるか?」
「いねぇよ、まだ19だ。」
「ならよし、お主我が娘を娶らぬか?」
と言ったレッサーデーモンは反論する間もなくボロボロになった腕を地面に向けると抱えるほどのサイズの魔法陣を生み出し、皆の注意が向くとそこから一人の女の子が現れたのだった。
「よく見ればまさか獣神の加護の持ち主とは・・・では我が適わぬのは道理よ。娘よ、お主も望んでいた強き雄に我は出会った。この者ならば文句の一つもない、果ては覇王か魔王となろう!」
「はいパパ!」
元気よく答えたのはこの世界では珍しく露出度の控えられた高校のブレザーのようなミニスカの軍服?に帽子をかぶった少女だった。見た目は俺やかえでと同い歳くらいに見えるが・・・。
「って俺の話を聞け!俺だって意思の疎通が出来るやつに命乞いされたらそれ以上刃は向けねぇよ!」
「なんと慈悲深い、やはり王の風格というやつか。」
「お兄ちゃんかっこいいね!」
「お、お兄ちゃん?だから、」と言いかけたところで悪魔の方はサラサラと足元から砂となって娘の出てきた魔法陣に吸い込まれていく。
「娘よ時間のようだ。我は魔界で再生するまで数百年の別れとなろう、その頃には立派な孫を見せておくれ?」
「うんパパ!頑張って立派なママになるね!」
にこやかに頷き一人満足した顔で完全に消滅するレッサーデーモン・・・魔法陣もさっさと消えてしまったようだ。
「話も聞かないで娘押し付けて消えたぞアイツ・・・。」
「なーなーユウスケ、ボスのへやクリアでいいのか?」
「ユースケ殿とおっしゃるのね?」と、クロの言葉に反応した悪魔の娘が俺の目の前に歩いてきて止まった。
「あ、ああ。」
「フフ、お初にお目にかかります我が主。我は魔界では不死の軍団を束ねていたアンデッド種の頂点たるヴァンパイア族のルヴィンと申します、
そう言って最上位の敬礼をする、した瞬間にそれまで目立たなかった大きな胸により美しい谷間が自己主張をし始めた・・・露出が少ない分谷間だけ目立つな・・・違うそうじゃない。
「いや、俺はただの冒険者だぞ!?」
「一介の冒険者にはその指輪を持つことさえ出来ません、そのフェンリルの加護の指輪は魔術の素養もない者が触れれば触れた先から四肢が腐れ落ちる程の魔力が封じてある物。それにしてもパパったらなんて素晴らしい男性に巡り合わせてくれたの♡幼い我を拾ってくれたお礼に誠心誠意ユースケ様に仕えないと!」
「だからなんでそんなにお前ら親子は話を聞かないんだよ!!」
俺は魔王となる一歩を踏み出してしまったのだろうか・・・。
「まあ、今更な気もしますがね。」
駄女神は黙っててくれませんかね?
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