第38話 クランってのは盗賊団のことですか?

【傭兵の里】サジタリウス


エルフ森林国の擁する迷宮資源で発展を遂げてきた街であり、今なお活性化している巨大な太古の城が迷宮化した【サジタリウス城】目当てに数多くの冒険者が集まる国内有数の大都市である。

そして冒険者ギルドの総本山があることでも知られており、傭兵家業を生業とする者は必ず一度はここを訪れることを目標とするものも多い。


ライブラの里と決定的に違う点は街中に木が一本も生えてないところだ。

これはダンジョンの影響とも言われているが真偽はわからない。そしてダンジョンから持ち帰られた様々な装備や魔道具その他はオークションにかけられていて盛り上がりを見せている。

治安はお世辞にもいいとは言えず、スラム街に準ずる場所は自己責任で向かうように・・・とここまでが街の門番から受けた説明内容レクチャーだ。

とりあえずアリスとシルバーがさっきの不埒者をギルドに連れていったはずなのでさっさと後を追おう。


タスラム馬車で初めて見る規模の立派なギルド本部の建物に横付けしかえでに【倉庫ガレッジ】にしまってもらう。

そして大仰な扉を開くと・・・。


「ふざけないで頂こうか!!我らはコイツらに盗賊行為を働かれたから拘束して連れてきたのだ!それを解放した上で謝罪しろなど道理に反するだろう!!」

「フン、その三人は我々大型クラン『翡翠の風』に所属する冒険者パーティだぞ?女如きに捕まえられるなんて寝込みでも襲われたに決まっている!!」

「話になりませんね・・・おや、悠介さんちょうどいい所に。」


中ではエルフを中心とした傭兵風の男たち数人とうちの二人が揉めていた。間にはさっきの三人組が置かれ何故かアリスは首輪を持った男の一人を自慢の蜘蛛の脚を使って自らの下に組み敷いていた。・・・なんだあの首輪?


「何があったんだ?」

「ええ、それが「てめぇには関係ねぇよヒューマン!」


と言って俺につかみかかってこようとした大男に臨戦態勢に入ったライラとクロが反応し得物と殺意を向ける。

・・・その前に【氷結アイシクル】で固めちゃってはいるんだけど。


「くっ、おかしなスキルを使う!野郎どもやっちまえ!!」

「そこ迄じゃ!!いつからギルド本部は不逞の輩の集まりになった!!!」


ウシオはいつの間にかお姉さんモード体型の例のセクシーなチャイナドレス姿になっていた。


「妾はクロノス国のバランギルド長【白面びゃくめん】のウシオである!

見れば犯罪者に使う【隷従の首輪】まで持ち出し勝手に付けようとした者迄おるようじゃな?恥を知るがよいぞ!」

「うるせぇ獣人のアマが!誰だか知らねぇが・・・」

「黙れ。」


するとその一言で俺たちの後ろに巨大な九尾の狐モードの式神ちゃん二号が召喚され臨戦態勢に入る。

本来ウシオの式神には攻撃能力はないはずなので虚仮威しであるが。

ツカツカと窓口まで歩いていったウシオ、さっきのように不意打ちしようと動く奴はもういないだろう。


「全く、妾の顔も知らぬ若造共しかおらんのか・・・おいそこの者、さっさと本部長のアレクを連れてこぬか。」

「は、はい、少々お待ちを!!」と、受付のエルフのお姉さんは全速力で奥に引っ込んでいくと直ぐに初老のこれまたナイスミドルなダンディエルフの紳士を連れて戻ってくる。


「これはこれはバランの【白面】殿、式神まで使ってなんの騒ぎでしょうか。」

「なんの騒ぎ、ではないわ【緑将】の!なんじゃこの輩どもは!妾たちに盗賊行為を行った者を殺しもせずに捕まえて連れてきてやったと思えばあろう事か一方的に我らが粗相をしたような扱いだ。お主が治める冒険者クランでは無いのか?」

「なんとまさか【白面】殿に刃を向けるようなものが我がギルドにいようはずもおりません、何かの間違いでは?」

「彼奴らは証拠もなしに言い掛かりを着けたと我らの仲間に反論し、不意を打って隷従の首輪まで付けて一方的に言う事を聞かせようとまでしただぞ?事と場合によれば・・・。」


珍しく怒り心頭である。

普段飄々としてるくせに仲間思いなとこもあるのがウシオのいい所だ。


「わかりました。不肖この【緑将】のアレクの名においてこの場を収めましょう。」

「なんだってんだギルド長!俺たちはザックスの奴らが・・・あ。」


その場にいた【翡翠の風】とかいうクランの連中はその場にバタバタと倒れていき、その場に立っているのは俺たちとアレクさんに受付嬢さんたち、それから連中の最後尾で静観していた少し背の低いエルフの男だけとなった。

俺の【昏睡スリプル】に似たような魔術か?対象を指定して発動か・・・今度試してみよう。


「ギルド長、我々クランは仲間を不当に拘束した者たちを罰しようとしていただけですよ?」

「黙りなさいレイド。私の耳にも拘束された三人組はよく街の入口付近で疲れた他の冒険者を狙って強盗行為を繰り返していたのは知っています。しかし他所のギルド長のパーティを襲うとは運が尽きたようだな?」

「くっ、じゃあ本当にあのアマ俺達を騙して。」


それから翡翠の風クランの連中は起きた者からギルドから逃げるように消えていった。

そして俺たちは応接室に案内されようやく一息ついたのだった。

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