第34話 そんなスキルあったんですか!?
気持ちの良い陽気に微睡んでいた俺を揺するのは誰だ・・・。
「ユウスケちゃんー?ご飯きたでー?」
「へえ、部屋に運んできてくれるのか・・・おお。」
すでにクロはいなくなっており、ご飯膳の前で尻尾を振っている。
みんなの前に並ぶのは量こそ少ないものの贅沢なお膳だった。
「こんな所まで和風なんだな・・・やっぱここを建てた人は日本人だよな?」
「絶対ね。」
「妾は会うたことあるぞ?
「ウシオーそれよりまだ食べちゃダメか!?」
そろそろクロの尻尾がちぎれて飛んでいきかねないので先に頂こう。
「いただきます!」
「「「「いただきまーす」」」」
「この二本の棒じゃ食べられない・・・フォークあるか?」
「はいはい。」
「うはぁ、お刺身美味しー♡」
「これは全く食べたことない味やわ・・・ユウスケちゃんの好みなら覚えなアカン。」
「和食は美味しいですわねぇ。」
「ボクにはお造りが繊細すぎて・・・。」
その後運ばれて来た大皿に乗った巨大な魚の丸焼きには大喜びで食いつくアリスであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「してユウスケ様、まだ腹が空いているので?」
俺はアリスとライラを連れて温泉街を歩いていた。
俺個人としては温泉に行った様な思い出は小さい頃くらいしか無いが、温泉街にイメージするようなものはだいたいあるのがこの街である。
射的や金魚すくいにストリップ小屋など古き良き日本の印象が強すぎる。
「いや、観光もしないで即旅館だったからさ。こういう所はじっくり何があるか楽しむのも醍醐味なんだよ。」
「確かにウチの知らないものばっかりやな・・・美味しそうな匂いもそこら中からするし。」
「しかしボクは先程のような工程をいくつも経るような料理はあんまり、決して粗野なものばかり好む訳では無いのですが。」
「アリスの戦い方なんてまさに技巧を重ねた感じじゃないか?」
「それはソレこれはコレ、なのです。・・・おや?何やらいい匂いが・・・。」
ぬ?!確かにこれは俺の愛する料理の独特の臭い。
「あ、ウチもこの匂いなら分かるわ。動物の出汁を使った海鮮とはまた別種の濃い香り。」
「ラーメンだっ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「いらっしゃいっ!三名様カウンターでいいよなっ!!」
まさかラーメンをこの世界でも食べれるなんて・・・!!
そう、俺は無類のラーメン好きでもある。楓にもっと色々なものを食べて見るのもいいよと言われたこともあるが俺の人生で食べてきた外食において最も多くを占めるのがラーメンである。
学校の帰りに啜る醤油ラーメン、海の家で大して上手くないことも承知で頂く海鮮塩ラーメン、雪の寒さを塗り替えるような風味高い味噌ラーメン、バリカタ細麺替え玉後乗せなんでもありのとんこつラーメン、時には変わり種をとスパイシーなカレーラーメン、そして様々な亜種を生み出してきたご当地系ラーメンとその全てにハズレが無いと言ってもいいくらいラーメンが好きである。
・・・何回ラーメンって言った?
そしてここはメニューに目を通す限りは様々な種類のラーメンが置いてある素晴らしい店だ、スープの入った大きな寸胴も種類の多さを語るごとくいくつも用意されていた。
「勢いで入ってしまったもののここはどういった食い物を出す店なのか検討もつきませんね。」
「なにかスープ系の料理?みたいな雰囲気はするんやけど。」
「あれ、二人ともラーメン知らないの?」と尋ねると全くと返ってくる。
「そら仕方ねぇさ兄ちゃん、オレのとこのラーメンは獣王国の中じゃこの街くらいしか伝わってないらしいからな。何でも大昔に現れた
そう笑いながら言うのは大きな体格の
「この料理はスープをとって味の決め手のタレを混ぜ、いい感じに茹でた麺を絡めてトッピングと一緒に食べるっつう単純なもんだがその全ての工程に様々な種類があるんだぜ?これで試してみな?」
そう言って女将はとんすいのような小さい器にスープとタレに麺とネギだけ振ってアリスとライラの前に出す。
「俺のは?」
「兄ちゃんはなんだか知ってる風だからな、オレは知らない奴に美味いと言わせるのも好きなのさ。そうだパスタみてぇに食べるんじゃなくすすって食えよ?」
そう言われ麺を恐る恐る麺をスープにからませながら吸い込む二人。
「こ、これは!美味いで!!!」
「単純な作り方には見えぬ深い味わい!スープの旨味とそれを殺さぬ塩味のキレと風味、そして歯ごたえの良い独特の麺に汁が絡まってこれはいい!ネギだけかと思ったがそれもアクセントとなってこの料理を高みに押し上げている!」
・・・アリスそんなに良く喋る子だっけ?食レポ技能あるの?
「お、オセロメーとアラクネの姉ちゃんイケる口か!」
「俺も早く食べたい!俺は味噌とんこつをくれ!!」
「ほなウチは鶏塩を!」
「ボクは今のとおなじ醤油の和出汁ので頼む!」
「あいよ!」
そうして俺たちは各々の全く違うラーメンを楽しみ、ひとしきり食べては他のラーメンも味見して更に舌鼓を打つのであった。
ぶっちゃけ豪華な料理よりも満足したまである・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます