第32話 え、九尾の狐はテイムしてなかったんですか?

その後ウシオからスマホに連絡が入り、俺たちの冒険者ランクは俺をB級とし他のメンバーはC級からスタートという異例の扱いとなった、パーティとしてはB級だ。流石にハナからSランクなんていう化け物扱いはされなかったらしい。

その後なぜか幼女の姿のウシオが俺たちに合流した時に持っていたモノ、そう国内の豪華温泉宿への招待券でパーティのテンションは有頂天と達した。


「ここの宿はそらもう豪華でな?妾さえ一度しか行ったことのない超VIP待遇の温泉ホテルなのじゃぞ?」

「何だか急にウシオが現代かぶれになった気がする。」

「なっー!?それはスマホで現代日本の知識を毎夜の如く見てるから・・・って、今はどうでも良かろうが!このホテルは料理も格別・酒も最高・素晴らしい露天風呂と最高なのだ!」と、目をキラキラさせている。


「もしかして獣王国と聞いて快諾したのソレ?」

「・・・ハハッ、なんの事じゃろなー?」


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ここで役に立ったのはかえでの新しく使えるようになった【眷属召喚サモン】だった。

温泉街までどう行こうか悩んでいたら新しく覚えたというスキルを試したいと言ったかえでが念じた途端に巨大な魔法陣が展開しタラスクを馬車ごと召喚したのだった。

・・・ここがひとまずアングィラを目指そうと街を出たところで良かった・・・。

そうすると我先にとクロが乗り込んでいき、全員が乗ったのを確認したアリスがタラスクを発進させる。


「カエデすげえぞ!」

「十分かえでも規格外だろコレ。」

「えへへー、ちょっとはチート持ちの自覚出てきたかもよー?」

「召喚術式とはな・・・もしや妾もていむされれば強うなるのか・・・?しかしそれも流石に沽券にかかわるのう・・・。」

「別にいいんじゃない?どっかには契約紋出るかもだけど多分隠せるし。」

「恥ずかしいとかではなくな・・・うーむ・・・。」

「まあゆっくり決めなよ、温泉地まで遠いんだろ?」


大妖怪のプライドってもんか・・・それさえなきゃ単純にステータス倍加なのにな。


「そうなのか!?」

「考えを読むな。ってか今までのアリスやクロの例見たろ?」

「やたら仲間になったあと強力な個体を引いたなと思っておったがそういう事じゃったか・・・」

「なんせかえでのテイムはどんな種族だろうと関係ないらしいからな、魔物使いどころか全種族使いだろうよ。」

「だからってヒューマンや神様をテイムするなんてありえないと思うけどね?確かテイムの最低条件は『私か悠介への一定以上の信頼でロックが外れテイム可能となる・眷属になることを希望させれば尚良し・種族は問わず』の三つだったかな、だから嫌がる人に強制することは出来ないみたい。」

「そして眷属となったものに与えられる恩恵ぎふとはすてぇたす倍化・経験値倍加・一定以上の経験値を得ることにより存在進化えヴぉりゅーしょんじゃったか?それならばお主の能力は与えるのみなのか?」

「んーん、もちろん私へのバックもあるよ?」とスマホを開いてステータス画面を見せるかえで。


「ウシオさんほらここ見て、画面に私の名前と線で繋がれたアリスとクロちゃんにライラさん、それにタラちゃんの名前があるでしょ?」

「うむ、その四人が今のかえでの眷属なのじゃな。」

「そうそう、そしてこの状態から私のステータスに移るとほらココにある数値に()かっこが付いてるでしょ。これがみんなから私への魔力やステータスの献上なの。悠介、あの鉄を出す魔法でビー玉くらいの鉄球作れる?」

「ん?ほら。」


鉄塊アイアンクラスター


「ありがと♪じゃ見ててね?」


そう言うと馬車から身を乗り出し左手に置いた鉄球目掛けデコピンをするかえで。

瞬間鉄球はパンッという心地いい音と共に消え、少し遅れて遠くから破裂音が響く、発生源の方向を見ると・・・数十メートル先にあった大岩の中心がまん丸に抉られていた。


「ね?これがみんなの力を借りた私のステータス♪」

「・・・いつからお前のジョブは魔物使いからバズーカ使いになったんだ?」


ウシオを始めとしたみんなは信じられないものを見たとあんぐりと口を開けていた・・・かえではこの先怒らせてはいけないことが決まった瞬間である、誰もデコピンで命を失いたくない・・・。


そうしてその日の晩は予定通りライラに晩飯を作ってもらい、いっそうの事もう彼女をパーティから手放せなくなるのだった。


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そんな棄権のきの字もない気楽な馬車の旅が三日ほど続き、ようやく一行はスピア連山の麓の温泉街に辿り着いたのであった。

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