第19話 ・・・あれがドラゴンなんですか?

破竜王ドライグ

それはクロノス国王リチャードが王となった所以の称号である。

第四王子という王位から最も遠く、幼少の頃は常に病床に耽っていたような彼だったがそれだけ武功のみを良しとした先王や他の兄弟達とは違い帝王学に始まり言語学、果ては関係無いような薬草学に生物学、更には学ぶ必要すらないとまで笑われた魔術学まで様々な講師を呼び武術の稽古が出来ない我が身を呪うかのように学びに学んだのだ。

ある時魔術学を習っているおりに薦められた講師がその時既にバランに居を構えていたウシオであった、その出会いはさながらシンデレラストーリー。

灰被りと出会ったマザーティターニアの如く、置かれた待遇に毎日涙を流していた子供へと


『そんなに悔しいならば妾が力を与えたもう、存分にぬしを笑った矮小なる王や愚兄を見返し嘲笑ってやるが良い!!』


と、まるでヴィランの魔女のような台詞で奸計と仙術による肉体の活性化を得た彼はメキメキと頭角を現していき、止めとばかりに王国を襲った巨大レッドドラゴンをウシオと共に討伐した功績をもって見事に十三代目クロノス王に即位したのだった。ちなみに悪巧みはほぼ使わずに暗部(この場合影の部隊を指す)の指揮くらいにしか使っていない様子。

恐ろしいほどの真人間だった彼は先生と尊敬していたが悪女ウシオを反教師ともとっていたのだ。

よくそんな講師を得て善王になるな・・・俺ならざまぁみろと悪の帝王になる自信がある。



「まあ、妾が此奴に光る王の器を見いだしたからそんな事したのじゃがな。あとは良き王となるも魔王となるも任すとな、一つの暇つぶしである。」

「いやいや、先生が本気で俺を悪の道に進ませたいのであればそれこそ洗脳なり何なり出来ただろう。先王をあまり悪く言いたくはないが彼は野心の塊でヘタすれば隣国に攻め入るような風潮さえあった。先生はそれを長年水際で食い止めていたのも知っておる。」

「ぐぬぬ・・・その話はもうよい、疾く悪竜とやらの話をせぬか!!」


真っ赤になるウシオと笑う俺たち。


「クックック、先生もお変わりなく。コホン。

では、本題としよう。」


咳払いとともに王の顔に戻る。そう、これが執政者としての彼の顔なのだ。


「奴は突然となりの獣王が治める国より国境付近の村に現れたのだ。」


ちょうど王直属の部隊が年に何回かある冒険者と合同のモンスターの頭減らしに遠征していたこのタイミングで出現したドラゴンの知らせに王自ら討伐隊を組み事に当たった、だが結果は惨敗。死者こそ出なかったものの全滅した彼らは命からがら撤退したのだという。

瘴気を放つというのだからダークドラゴンかドラゴンゾンビの類なのであろう。


「王国軍が遠征から帰るにはまだまだ間半月はかかる、なので余は我が国に害を為そうという人災なのではと疑ったのでウシオ殿を呼んだというわけだ。」

「そのような事態ならばなぜ正式に依頼を出さぬ!」

「民に要らぬ動揺を与えれば恐慌となるやもしれん、なので秘密裏に、な。」


「おお、ファンタジーのド定番来たよ悠介!ドラゴン退治だ!!あわよくばドラゴンマスターも夢じゃないかも!」

「確かに、竜を倒したとなれば武人の誉れここにありというもの!」


とりあえずお馬鹿コンビかえでとアリスはほっとくとしてすぐあたらなきゃならない問題だな。


「村の避難は?」

「もちろん箝口令を敷いた上で王城内へと。」

「悠介もヤル気のようじゃからな、被害が出る前に向かうとしよう。」


今から馬車を使っては遅い。


「シルバー、緊急案件だ。俺に村の細かい位置を教えてくれ、すぐに【亜空間アナザー】で急行しよう!」

「了解しました。」


言うやいなや俺の額に手を触れるとすぐに村の座標を理解、すぐに俺たち全員でその場に飛んだ。


~国境の村ヨハン付近~


村の付近に出た俺たちは早速近くにいた人に見つかっていた。


「うわ!?なんだお前らいきなりなんにもないとこから出てきて!!幽霊かなんかか!!」

「ん?村人は全員避難したって話だよな?」

「今アタシが聞いてんだろが!」


と腰に両手を当てて捲し立ててきたのは緑色の鱗に身体の半分が覆われ、立派なしっぽとツノを持ったトランジスタグラマーロリ巨乳のリザードマンの女性だった。


「ああ、すまない。俺たちはちゃんと人間だよ、今出てきたのは魔術みたいなもんだ。」

「なんだそうだったのか、ニンゲンの魔術って進歩してるんだな、凄いぞ!!」


と風に舞うストレートのオレンジ色の髪を踊らせ、綺麗な赤い目を細めて笑う彼女。かわいい八重歯がこんにちわ。

なんにせよ近くにはドラゴンがいるはずだ、避難させないと。


「キミ名前は?」

「おう!アタシはクロムだぞ!!クロって呼んでいいからな!ヨロシクな!」

「俺は悠介だ。で、クロにお願いがあるんだがいいかな?」

「ああ!」

「こっちの人がシルバーっていうんだけど一緒にここにいてくれないか?この人の入れてくれるお茶とお菓子は美味いんだぞ?」

「ホントか!?よーし、ユウスケたちは良い奴だな!アタシ言うこと聞くぞ!」


シルバーは早速ゴザを広げてお茶の準備を始めた。なんでそんなもん持ってるんだ・・・?

さて、じゃあ村の様子を見に行かないと・・・と、思ったらかえでが素っ頓狂な声を上げた。


「へ!?ゆ、ゆ、悠介ちょっといい??」とグイッと引き寄せられる。

「・・・なんだよ、今から忙しくなるぞ?」

「今ね、悠介との親密度が一定値を超えたのでテイムしましたって出たの。」

「クロを?」

「うん。」

「彼女が着いてきたいってならいいじゃないか、今は戦力がいくらあったって良いんだぞ?」


そういやさっきからアリスとウシオが静かだなと思ってそっちを見たら何だか微振動しながらその場に固まってた、変なもんでも食ったか?

クロは早速シルバーにもらったクッキーを貪るように食って笑みを浮かべている。


「クロムちゃんの種族見てほら!静かにね?」

「あ、ああ。」


ステータスを開いて自分のページを見せてくるかえで、そこには・・・しっかりと【】と書かれていた。


はぁ!?まさかコイツが騒動の元凶なのか?

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