第12話 ギルド長は幼女ですか?

「さて、事の顛末聞こうかのう?なお、妾(わらわ)の種族適正に隠し事など通用せぬのでそこは理解せよ。」

「はい・・・。」


俺たち女神とアリスを除く二人はギルド長、【白面びゃくめんのウシオ】の目の前で正座していた。彼女にはシルバーの面倒を頼んである。


白面のウシオ、その正体は東の国からこの国へやって来たという千年を生きる大狐の化身である。

先だって動物と魔物の違いを記したと思うがコイツは神獣と呼ばれる段階に進化した大化物で、見た目は白髪のキツネ耳を生やした幼女にしか見えないがその正体は小山にも匹敵するサイズの巨大な九尾の狐だ。

なんで知ってるかって?部屋に入った時その姿だったからだ。


「これ、誰が妖怪BBAであるか!!」

「モノローグに突っ込まんでくれます!?」

「この通り妾は対面した者くらいならばこうして心を読むことも出来るからの。」

「さいですか・・・。」

「して、お主らが報告の挙がっておった新人の江戸川悠介に横山かえでじゃな?【魔物使い】ていまぁにしても珍しいと言うに【魔法使い】くりえいたぁなどこの妾とて聞いたこともないぞ?」


ん?今なんて。


「妾もこの世界には異世界転移してきたのじゃ。ああ、アイムのやつがその扉の前で聞き耳を立てておるようじゃが防音術を張っておるから外には聞こえぬ、安心するがよい。あと苦しゅうない、そふぁあを使うと良い。」

「マジかよ・・・じゃあシルバーに連れてこられたのか?」


応接セットに座り直すと目の前にトトトッと入ってきたもう1人のウシオが俺とかえでにお茶を出して行った。

・・・式神ってやつか?


「いや、先代の神じゃな。出身は地球じゃが厳密には中国。そして本当の名は葛の葉という。」

「え、じゃあ正真正銘の九尾の狐ですか!?」

「知ってるのか、かえで?」

「逆になんで知らないかな?日本史教わらなかったの?」


「傾国の美女妲己、鳥羽上皇の愛妾妖狐玉藻、最強の陰陽術士安倍晴明の母葛の葉と言えば有名すぎる金毛白面こんもうびゃくめん九尾妖狐きゅうびのようこでしょ?中国から日本に渡り、最後は殺生石に身を変えて今でも世を呪っているっていうお話じゃない。実際は周囲に火山性ガスが噴出してるだけなんだけど。」

「そこな娘は博識じゃな、結構結構。しかし殺生石などただの伝承、本物の妾はこれこの通り以前の神に『人間に危害さえ与えなければ儂の管轄する異世界に連れて行ってやろう』と言われこの地に遥々やってきたのよ。」


と目の前の幼女はふんぞり返り、お茶を冷ましながら飲んでいる。あの湯のみはわざわざ作ったんだろうか。


「妾の話はお主らだからしたのじゃぞ?次は【魔法使い】について教えてくれぬかの、なに悪いようにはせぬ。ボウズはこの世界に何をしに来たかさえ明かしてくれれば、だがな?それにここでの話は妾の名にかけて門外不出を約束しようぞ。」


しらばっくれるのも無理そうだ。


「まず【魔法使い】とはこの世界の魔術を礎とした魔力全てを自在に操り、自由に顕現させる【魔法】を操るジョブですね。」

「なんと。」

「それが俺に適正の合う、いや、合いすぎたチートなんでしょう。」

「ちぃととはなんじゃ?」

「規格外の力、ですかね。俺にしてもかえでにしても分を弁えぬ力です。そして俺たちが女神に異世界に連れてこられたのはウィトルースにバグ・・・この世界を壊しかねない化け物が現れたから倒して欲しいとのこと。」

「ふむ・・・。」


そしてもう一度喉を潤すウシオ。


「結論から言えばそれは妾じゃないかの?」

「はい?」

など聞いてはおらんのじゃろ?妾が此処に顕現したのは大凡千年は前、してお主らの女神は・・・二日酔いじゃと?」

「ええはい・・・。いろいろ抜けてる駄女神なんでそこら辺勘違いしてる可能性もあるな・・・。」

「しかし、可能性は無きにしも非ず。これから現れるかも知れぬぞ?現に今魔王という存在自体はおるが単に魔族の王なだけの好々爺じゃ。」


猫を膝に乗せたおじいさんを想像した瞬間キツネ幼女は吹き出した「大体あっておる」と。


なんか出鼻をくじかれた感じだな・・・王都に行く必要すら無くなってきたような・・・。


「ん?お主ら王都に行く予定じゃったのか?なら丁度いい。」


と、彼女はにまりとほくそ笑んだ。

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