第13話 もしかしてひと月も持たないんですか?

「わーいお兄ちゃんとお出かけー♬︎」


そう言いながら俺の手を取って執務室から出てきたのはもちろん幼女姿のウシオである。その後ろのかえでは苦虫を噛んだような顔になりそうなのをなんとか抑えているといった感じだ・・・。


「あら?お出かけですか?」

「うんそうなのー♪♪ウシオ様のお茶買いに行くの手伝ってもらうのー!」

「あら、良かったですね~、ユウスケさん、エスコートよろしくお願いしますね?」


と、すれ違ったアイムさんは軽い挨拶のみでさっさとお仕事に戻っていった。

そのままギルドの出口を出て女神とアリスを残した宿屋に向かっていき・・・。


「ふう、騙し仰せたの・・・今までやらなくてよかったわい。」

「いいのか?いくら俺たちと一緒に王都へ行きたいからって黙って出てくるなんて、いなきゃバレるでしょ?」

「良いのじゃ!普段妾に自由なぞ有って無いようなものじゃからな!それにあ奴らに任せてきたのじゃ、ひと月はバレぬじゃろ。」


ウシオが置いてきたというのは式神が二体。

普段から子供のような喋り方や仕草を徹底させていたという、俺たちにお茶を運んできていた式神一型。そして正体である大狐の姿を模した式神二型の二体である。

お互いに連携を取り、ギルドの仕事もある程度こなせる一型と副ギルド長のお茶飲み友達を兼ねている二型を配置することで自分がいなくても誤魔化す寸法とのこと。


「お久しぶりですウシオさん。」

「うむ、しるばぁも息災でなによりじゃ。」

「え、え、【白面】のウシオさま!?なんでボクらの宿に???」


そして面倒事になる前に天真爛漫キャラでニコニコしたままのウシオと共に宿に戻った。

駄女神はフラフラしていたものの女神としての体裁を守りたいのかしゃんとしている(つもり)のようだ。


「アリアドネも久しいな、妾がここにおる事は他言無用じゃぞ?」

「で、なんで王都にいきたいんだ?」

「なんでも国王から内密の用があるとのことでな。妾も奴めがおしめをしておる頃から知ってるでな、蔑ろにも出来ぬのよ。」


とピコピコと動く尾っぽを左右させながら答える。かえではそれを触りたそうに息を荒くしている。


「で、王都までどう向かうのでしょうか?」

「お主もやたらと女神の力は使えぬのじゃろう?なれば商人の護衛をしながらゆくのが良いであろうな。」

「おお、それも異世界あるあるだねー!」

「・・・あるある、なのか?妾はこの世界に来るのが初めてであったがお主は違うのか?」

「そいつは小説での異世界あるあるを言ってるだけだから気にしない方がいいぞ?」

「色々と難儀な奴だの・・・まあよい。確かちょうど良いクエストがあったはずじゃからそれを受けるといいぞ。」


その頃。


「ウシオさま行っちゃったねー。」

「こゃーん。」

「いざって時?はちゃんとお話しようねー。」

「こゃーん。」


ウシオ不在が露見するまであと十日。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る