第11話 サムライスパイダーですか???

アリアドネの家族が起きてきたのは朝も明けきり、持ち回りの火の番も終えた頃だった。大層感謝されたのちに俺たちは軽い朝食を済ませると彼女たちを家まで送っていくことに。

娘からのダメージの他に大した怪我もしていなかったのは重畳だった、だが親父さんを失ったのはさぞかし辛いだろう・・・と思っていたが実際はサバサバしているものだった。奴らに破壊された家から親父さんの遺体を掘出し、テキパキと片付けていくアリアドネたち。

荼毘に伏したり葬式をあげるなどはせず、破壊された家の付近に焼いた上で土葬し簡易的ともとれる墓石を立てたのみ、長い黙祷のようなもので終わり宗教的な儀式のようなものは無いようだった。


「父さんのことは大変残念ではありますが我々は戦士ですからね、いつ死んでもおかしくない常在戦場の想いであらばいつまでも悲しんではいられませんね。」


アラクネってこんなかんじだったっけか?イメージと違うな・・・かえでから借りたラノベでは姑息な立ち回りの悪役とかって感じだっだけど・・・などと思っていると。


「よっこらしょっと、さて・・・行きましょうかカエデさま!」


そう言ってガチャガチャと日本の大鎧にも似た鉄板などを組み合わせたような鎧と複数本の長刀を家から持ち出してきたアリアドネが気合を入れた。蜘蛛の大きな腹部にリュックのようなものを括り付け、先程の長刀を背中に二振りバツの字に背負い、六本の機動脚にそれぞれ装備していた。

他の家族も同様の装備をしている。

イメージとは違ったがこの世界のアラクネは糸や毒など使うことは使うらしいが戦闘では複数本の刀にも似た片刃の剣を操るバリバリの剣士型というのが常識であるらしい。脚の剣はどう使うのか気になったので聞いてみると戦闘時には器用につま先で抜刀し取り回すとのこと。

最近では二丁拳銃どころかお腹の触腕や他の脚も使ってライフルや大型銃火器を何丁も取り回す銃使いとなるものもいるようだ。


「え、家族はいいのか?」

「ええ、ボクたちは元より傭兵家業で食べてきた一族です。家だってほぼ荷物とベッドを置いて寝に帰る程度のものでしたし。ボクはかえで様について行くと家族にも了承は得てます。」


とすっかり旅支度を整えていた彼女らに目を向けると「娘を頼みます。」と深々と礼をされてしまった。


彼女らに別れを告げて街への帰路につく、薬草のクエストはなんとか終わらせたがレッドキャップの件はどう報告したものか・・・。


「正直に伝えるのは拙いのでしょうか?」

「悪かないと思うけど俺達は新進気鋭のぺーぺー冒険者だぞ?」

「ユウスケ様には到底当てはまらない扱いとは思いますが・・・。」

「悪目立ちしたくないのが昔からの悠介だからねー、私なら俺TUEEEE!!ってテンション上がるのにー。」

「あのなぁ、こんな封建社会もあるかどうかわからないような世界だぞ?それこそかえでから勧められたラノベで調子に乗って暴れ回るような主人公はどうなる?」

「んーと、最終的にハーレム作って元の世界に帰りたく無くなる?」

「ちゃうわ!過程だ過程、貴族だの王族だのに目をつけられて面倒なことになるだろ?」

「あー・・・。」


ぽっと出の強力な冒険者などお偉いさんから見ればこれ以上の使い捨ての駒は無い。何処の馬の骨かわからないような奴など尚更だ。

そんなヤツらに関わるなど願い下げだ。


「今なら俺達の異常性はギルドの連中はわかってないんだ、適当に退治した奴らの素材や魔石の一部を渡して祭壇がここにありましたーとか報告すればいいだろ?幸い奴らは一箇所にとどまらないんだから。」


魔石というのはただの動物と魔物を区別するわかりやすい指標だ、心臓の他に体のどこかに露出した魔石を必ず持っている。例の小人は額にあったので帽子をはぎ取って全て回収してある。


「悠介基本陰キャだもんねぇ~いきなり目立つのは嫌なんでしょ。」

「誰がだ!・・・まあ間違っちゃない。」


そうして昼前に着いたギルドへの報告は薬草の納品とレッドキャップの素材(の一割ほど)と拠点について事細かに報告するに留めた。

留めたんだが・・・駄女神のやつがその後酒場でいい気になり周りのヤツらに余計な冒険譚を語って回ったせいでギルドに話がバレたらしく・・・。


「ユウスケさーん?ちょっとお話があるので奥のギルド長の部屋までよろしいですかぁー?」と受付嬢のアイムさんに翌日捕まってしまった。戦犯のシルバーは未だに二日酔いで宿でダウンしている、、、。

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