第5話 えっ、なんでもできるんですか?

翌日(?)の朝。

寝慣れない硬いベッドで起きた俺の目に真っ先に入ってきた物、それはベッドに突っ伏すように寝こける幼馴染の顔だった。

上体を起こすと額から濡れたおしぼりが落ちてくる。俺を気遣って看病してくれていたのだろう。


「かえで、大丈夫か?そんなとこで寝たら風邪ひくだろうが。」


揺り起こすと半目でぼーっとしていたが、俺が起きているのに気づいたかえではガバッと抱きついてきた。痛い痛い。


「悠介起きたの!?悠介こそ起きて大丈夫なの?」


と大騒ぎしている所へシルバーが水差しを持ってやってきた。


「起きましたか悠介さん⋯あらあら。」


口元を歪ませニマニマと微笑ましいものを見て笑う女神。

抱きついていることに気づいたかえでは急いで俺から離れ真っ赤になって椅子に座ってしまった、相変わらず大きなお山はいい感触だった。


「悠介さんが倒れたのは恐らく膨大な知識量の強制ダウンロードが原因かと思われます。要はパンクしてしまったんですね。」


俺としては次の日に起きた程度の感覚だったけど、倒れた後たっぷり三日は眠りについていたらしい。

そりゃかえでも心配するわけだ。


「そんなパンクって⋯大丈夫なの?」

「知識のダウンロードというものは本来は勉強という形でゆっくりと行われるものです、悠介さんへもたらされた智恵はそれこそバスタブに海の水を全て入れようとしたのに近いんでしょうね・・・。」

「本人の俺としては全く自覚ないけどな!」


やれやれ、そんなに寝てたんだな⋯腹が減って仕方ないのも当然か・・・と何気なく考えた瞬間。


「えっ?」


俺の右手に一瞬で現れたのは、なにげなくアレ食べたいなと考えたビッグサイズのとろけるチーズと肉汁の滴るハンバーガーだった。受け取り損ねたそれをゆっくりサイドテーブルに置いた。


「悠介さん?!今何をなされたんですか??」

「えっえっ、俺は単に腹減ったからハンバーガー食べたいなって思っただけだぞ!?」

「わぁ、おっきなチーズバーガーじゃん!いいなぁ、私はアップルパイ欲しい。」

「ん?アップルパイ?」


それを思い描いた次の瞬間、左手にアップルパイが落ちてきた。某バーガーショップのアレではなく、ケーキ然とした三角形に切り分けられたタイプのものだ。甘く煮られたリンゴの香りと焼きたてのパイ生地の香りが漂ってくる。


「うそぉ!?すごい立派なやつじゃん!有名ケーキ店で出てきそうなやつだ!!」

「⋯女神さまは何か食べたいものあります?」

「⋯⋯⋯ではカルビ牛丼で。」


そうして俺の部屋の丸テーブルにそれぞれのまだ暖かな湯気をくゆらせるご馳走をみんなで朝ごはんにいただくことにした。

普通に美味いな⋯マジでどっから出てきたのか分からないけども、俺の好きなあの店の味そのままだ。


「「「ごちそうさまでした。」」」


「えー、私の見解としてはそれは物質構成魔法のように見えますね。最初は空間を超越してどこからか取りだす時空間魔法のようにも見えましたが私の牛丼の時点で肉、米、玉ねぎを始めとした食材に加えてこの丼ぶりまで瞬時に造り上げられたのが分かりました⋯。」


なお真面目に語る女神の口元にはつゆに染った茶色いごはん粒が!!


「空間魔法か⋯多分それも出来る。」


そういった俺は人差し指を何も無い空中に


「えっ!?」「なにそれ!?」


そして引き抜いてみせるとその指の先には先程シルバーの口元に着いていたごはん粒が着いていたのだ。(ごはん粒はちり紙で拭き取り捨てました。)


「なにこれ怖い。俺はマジでなんでもできるようになっちまったんじゃないか???」


ちなみにご飯を作り出した魔法は【再現】リプロデュース、空間の操作は【亜空間】アナザーと名付けてみた。

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