第3話 散々な一日
「おっ、帰ってきた!」
「はぁーあ、ひどい目にあった。」
時刻は11時30分。自身の教室へ戻ってきた。
決してサボっていたということはない。これには、事情があるのだ。
事は3時間前。メイさんを着替えさせようと、女子更衣室まで連れていったのだがメイさん一人を置いて教室に戻るのも気が引けたため、女子更衣室の扉の前で待っていた。
その時ちょうどそこへ教室へ向かう先生と鉢合わせて何やら僕がいやらしいことを考えていたと勘違いした先生に、
「ちょっと、シュウジ君ちょっと職員室に来なさい。」
と、連行されたのだ。
「でっ?誤解は解けたのか?」
「あー、何とかな。メイさんは自分の教室にちゃんと戻れたのかなぁ?」
あの子に限って、教室に戻れないということはないだろうが何故か心配してしまう。
そんなモヤモヤしている時、ケンジはふと思い出したように手を合わせて音を鳴らす。
「そういえば、そのメイさん?っていう子なんだけどよ。そこにいるぜ?」
「そこって?」
僕は、またこっちのクラスに来たのかと廊下側を見てみるがそこには、むさ苦しい男集団だけで、そこにはいなかった。僕は、再度ケンジの方を見てみるとこっちに指をさしていた。
一瞬、何こっち指してんだよ。と、ツッコみたくなったが別に僕の方をさしているわけでは無いとすぐに理解して、指先の直線状を目で追っていくとそこには顔を横に置き、寝ているメイさんがいた。
「げっ、なんでこんなところに!?」
「ん?知らなかったのか?江藤えとう メイさん。今日からうちの高校に通うことになった転校生だぜ。ってあれ?驚かないのか?」
「もう、朝からメイさんに振り回されっぱなしなんだ。もう反応するのも疲れた...」
それに、ぐっすり眠ってるのに大声で驚いてしまったらメイさんに悪いしな。
いつ家に入ったのかわからないが、朝食は栄養バランスを考えられていて、量の昼までお腹が持つように多く作られていた。
学校にメイド服を着たり、周りに人がいるのに勘違いをされる発言をしたりで常識というものが抜けている部分はあるが、メイドとしてみるなら完璧だ。
それに、寝顔も...いかんいかん。これじゃあ、変態だ。変な目で見られる前にさっさと前を向いておこう。そう思い、前を向けばケンジのにやけ切った顔があったから一発殴っておいた。
「ふんっ!」
そして放課後、部活をやっていないから残ってても仕方ないと、いつも通りすぐさま教室を出る。
学校をでると夕方の春風が吹き付ける。
暑くなく、寒くもない丁度いい気温は疲れと合わさって眠気を誘う。
「こんな日には、家に帰ってメイさんの膝枕で寝よう!」
「おい、何勝手なことを言っている。」
「てへっ、ばれちゃいましたか。」
いつから後ろにいたのか...
「自分で言ったかどうかわからなくなったら終わりだよ。」
妙にテンションが高いこの女は何を考えているのだろうか。もう家に帰って寝たい。
もうかまうことにも疲れて家路を歩き始めると、住宅街に響き渡る足音が二重に聞こえる。
嫌な予感がする。恐る恐る振り返ると、30センチくらいの間隔でついてきていた。どうやらメイドに取り付かれてしまったらしい。
「あのぉ~、メイさん。家はこっち方面なんですか?」
「そうですけど、どうしました?」
にっこりと笑う姿は眩しく、可愛かったが同時に恐怖も覚える。
まさか、一緒に暮らすとかいう展開なんてないよなぁ。
いやもしかしたら、帰る方向が同じだけなのかもしれない。そうだ、きっとそうなんだ。異論は認めん!
そして、数十分後。結局、家までついてきたメイさんだったのであった。
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