第17話 嘘吐きは狂い咲く花園の始まり


「これはどういうことだ!?」


 銀太郎たちが村に辿り着くと、村のあちこちでハエの魔物が飛び回っていた。


「ししょー! 危ない!」


 一匹のハエ魔物が銀太郎に襲い掛かる。

 ミィルは銀太郎に向かって飛んできたハエ魔物を咄嗟に矢で撃ち落とす。


「ミィル、助かった!」

「えへへ~」

「お二人共、油断していては駄目です! 次の攻撃が来ますよ!」


 ハエ魔物は銀太郎一行を取り囲み、ミィルとリィルは矢で一匹ずつ仕留めていくが、その数が減る気配はなかった。


「ここは私が殲滅するであります!」


 リッキーがそう言って、ハエ魔物の集団に走っていく。


「おい! リッキー! 何をするつもりだ!」

「逃げ道が見つからない程に密集しているのであれば、範囲攻撃で纏めて吹き飛ばしてしまえばいいのでありますよ!」


 リッキーは群がるハエ魔物にダイザカリバーを振り下ろす。

 振り下ろされた一撃は躱されてしまうが、剣を振った際に巻き起こった暴風がハエ魔物たちの壁に穴を開ける。


「これなら通り抜けられる! でかしたぞリッキー!」

「今の内に逃げるであります!」


 銀太郎はリッキーの作った道から包囲網を突破する。

 だが、一匹のハエ魔物が足でリッキーの頭を叩き、それによってリッキーは昏倒する。


「なっ、あの馬鹿!」


 銀太郎は倒れているリッキーに駆け寄ろうとしたが、ハエ魔物たちがリッキーに群がり、彼女の身体を掴んで空に飛びあがる。


「まずい! リッキーが魔物に連れ去られた!」

「それなら私が矢であの魔物を狙撃します!」

「そんなことしたら、リッキーさんも地面に叩きつけられてただじゃすまないよ!」


 銀太郎たちが混乱している間に再びハエ魔物たちが集まってくる。


「お前たち、こっちだ!」


 その時、一軒の民家の窓から男が顔を出して銀太郎たちを呼ぶ。


「くっ、今は一旦退却だ! あの民家に逃げ込むぞ!」


 銀太郎の言葉に頷いたミィルとリィルはハエ魔物たちを撃退しながら民家の中に転がり込む。


「良かった! 無事そうだな!」


 先ほど銀太郎たちに呼びかけてきた男がそう言った。

 民家にはその男だけでなく他にも大勢の人々が身を寄せ合っていた。


「この惨状は一体何があった? 花の魔物に虫の魔物、魔王軍の襲撃でも受けているのか?」

「残念ながらそのどちらでもないのです」


 銀太郎の疑問に答えたのは一人の老翁だった。


「初めまして、私はこの村の村長です。そして、村がこうなってしまった原因は全て私にあるのです。私が昨日、あの花の魔物を村に招き入れたりしなければこのようなことには……」

「ということは、やはり、例の花が虫の魔物を統率しているのか。それにしても、たった一日でこんな風になるものか?」

「あの魔物は最初、人間に擬態していたのです。花の魔物の正体はアルラウネだったのです」


 銀太郎が窓から花の魔物を見上げる。

 その魔物は銀太郎が以前出会った見世物小屋の馬車から逃げ出したという魔物だった。

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