　おいおいホームズ、「グロリア・スコット号」事件のことを忘れたのか？

　あの騒動の舞台となった船、グロリア・スコット号に乗っていた兵士たちを率いていた男だよ。ずいぶんと勇敢な人物だったようだね。まぁ私は直接、お目にかかったわけではないから、正確なところはわからないのだけれど。

【ネタばらしコラム】

注　この先「グロリア・スコット号」の内容に触れます。未読のかたはご注意ください。

　ネタばらしについては配慮をしているつもりなのですが、今回は注意喚起の前にやらかしてしまったような気がします。グロリア・スコット号が囚人護送船だったことは隠しておかねばまずいとも感じるからです。

（追記　記事公開前に問題の箇所を訂正しました）

　マーティン大尉は囚人を護送していたグロリア・スコット号に部下の兵士と共に同船していた人物。囚人の船乗っ取り計画にあい、兵士らは全滅してしまうのですが、勇敢に抵抗した模様は回想の手紙という形ではありますが描かれています。

大衆をターゲットとした肩のこらないエンタメにおいて、悪党と対峙する側をよく描くというのは、まぁ作家の良心というか枷みたいなものなのでしょうか。名探偵ものの場合、警察官がポンコツに描かれるのはよくあることなので、ドイルがせめて囚人護送船にいた兵士はかっこよく描こうとしたのかもしれないと想像するとおかしいです。