第4話 「違和感」

「ぅ雨か。雨?さっきまで雨なんて降っていたか?」





 ソラトがそう思うのも仕方がないことだ。試験会場は外だったからだしかもその時は晴れていたのだから。





「それはあの中は魔法でそういう風にしてあったからです」


「なるほどなぁ。ってアリシア」





 一人で出てきたつもりだったがいきなり声をかけられて驚く。





「すいません。もう怪我人はいないとのことだったので私も出てきちゃいました」


「そ、そうなのか」


「はい」





 なんなんだこの子はほんとに。





「お兄ちゃん!そこの女は誰なのよ」


「え?エレナ。なんでここにいんだよ」


「終わるのを待ってたのよ」


「あぁこの人はアリシアさん試験で怪我したんだで治してもらったんだよ。ほら挨拶しろよ」


「お兄ちゃんの怪我を治していただきありがとうございました。アリシアさん。さようなら」


「なんか機嫌悪くないかお前?」


「ふんだ」


「じゃ、じゃあ俺たち帰るのでまた受かってたら会いましょう」





 妹のエレナが明らかに不機嫌そうで一刻も早く帰りたがっている様子なのでアリシアともう少し話したいソラトだが、いったん帰ることにした。





「おいどうしたんだよ。なんでそんなに機嫌悪いんだ?」


「あのアリシアって人にデレデレしちゃって」


「はぁ」





 エレナはソラトの事が大好きなのでソラトが他の女と話していると機嫌が悪くなる。いままでソラトはあまり女性というものと話してこなかったのでエレナがこんなとは思っていなかったため不機嫌にしてしまった。





「で、実技試験の方はどうだったの?」


「ん~まぁまぁかな」





 結局一発も入れれなかったし投げ飛ばされて中断だし。もしかしてまぁまぁどころか全くダメだったのか……でもアリシアって子が5分程度って言ってたのに10分くらい剣交えたししかも真剣まで持ってきたし俺の実力を見たかったんだよな?最後なんか怒られてたし、真剣持ってきて。あれよく考えたらいいんじゃね?





「まぁまぁってなによ」


「合格間違え無しってことだよ」





 と言いエレナの頭に手を添えなでなでする。





「ぅふふ」





 エレナはとてもうれしそう





「さすがお兄ちゃん」


「っていうか雨強くなってきてないか?早く帰るか」


「たしかに」





 さっきまで小雨程度だったが数分でかなり強い振り方をしている。





「家まで少し距離あるからどっか適当に雨宿りしていくか」


「このままじゃべたべただよ」


「そうだな。それにもう昼下がりだし飯もまだだし」


「じゃあ甘いもの」


「……甘いものか。俺は普通にご飯が……」


「あ・ま・い・も・の」


「わかったわかった」





 ソラトは妹のエレナに押し切られて甘いものが食べれる店に入る。





「?!」





 ソラトが何か違和感を感じる。





「今何か……揺れた」


「はぁ何を言い出すかと思えば……」


「気のせいか?」


「そう気のせい。早く頼んで食べたい」


「そ、そうだな」





 どうせ俺の金だが、しかも甘いものそんなに好きじゃないんだよな。





 と思いながらメニュー表に手を伸ばす。





「っぅわぁ」


「なに」


「いやなんでも」





 食べたくねぇ。





「すいませーん。これとこれお願いします」


「じゃあ俺は同じので」


「かしこまりました」





 もう何でもよくなっていた。





 にしてもさっきの違和感は何だったんだ。





「ありがとうございました~」





 ソラトたちは昼食を終え店を出るが……。





「むしろさらに強くなっている。勘弁してほしいぜ」


「はぁもう濡れていいや」


「そうかじゃあ走るか」





 ソラトはもともと濡れても別にそこまで気にしないがエレナが濡れるのを嫌がっていたからエレナに合わせていただけだ。





 店を出て走って帰ろうとした瞬間!





「地震?」





 それは違和感というにはあまりにも大きな揺れだった。





「おにいちゃん」


「あぁお前は早く家に……いや避難所だな。避難所に行け」


「え?なんでいいからいけ」





 かなり強めに言い強制的に町の中央付近にある避難所に行かせた。





 ソラトはこれがただの地震には思えなかったからだ。何の根拠もないがソラトには確信があった。





「まただ。雨でよくわかりに悔いが何かが近づいてきている気がする」


「俺もだ」


「ってアギト」


「急に現れやがって」


「すまんたまたま見かけたんでな」


「で、要件は何だよ。たまたま見かけただけでわざわざ話に来るような仲じゃないだろ俺ら」


「その通りだ。不運なことって重なるんだよ。力を貸してくれ。俺はお前の力を剣を交えて知っている」





 不思議そうな顔をして、、





「もしこれの原因が魔獣だとしてもこの町にいる衛兵にでも頼めばいいだろ」


「だから不運は重なるっていっただろ。んぅ実はな今この町には今能力持ちや魔法が使えるのは3人しかいないんだよな。しかも俺以外の二人は戦闘向きじゃあない。あとは言いたいことわかるよな?」





 ま、もともと俺もその原因を突き止めに行く予定だったので断る理由はない。





「あぁわかった」


「じゃあ俺は先に行って様子を見に行く。そのあともう一回合流だ」





 と言ってアギトはあり得ないくらいの速さで駆け抜けていく。





「何事もないといんだが、、」

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