第3話 「アリシア」
医務室と看板のある部屋の前までソラトは来ていた。
「ここか。それにしても気に書かれた看板ってどうなんだよ。壁に立てかけてあるだけって。大丈夫なのかこれ」
そんなことをつぶやきながら部屋に入った。
そこはベッドが1つだけおいてありあとは机といすが置いてあるだけだった。他には何も置かれていない。本当に何にもない。医療器具の一つもない。その事実はこのアリシアという少女が相当の治癒の能力あるいは魔法で怪我を癒やすことができるということがわかる。
あるいはそんなことなくて時間がなくて簡易的になっただけか。
まぁ隣の布から出てきたやつがもともとこの受験では怪我をさせてはいけないというルールと言ってたからそのせいか。ま、普通に考えればそうか。
時間がなかったわけでもなく相当の治癒が使えるのかはわからないがもともと怪我人が出るなんて思っていなかったから簡易的でも問題ないと判断してこうなったのだろう
と色々考えた結果そういうことだと思った。
「あー怪我をしたここに来れば見てくれるとアギトって人に言われたんだが」
と視線をアリシアに向けると……。
「綺麗だ」とつぶやく。
ソラトが無意識にそういったのも無理もない。白い肌に整った顔立ち、これを見て何も思うところがないのなら、それは一般的な男してはおかしいとまで言えるほどだ。
長く金色の髪。黄色い瞳。白い肌。推定150センチほどの身長。推定Dカップ。
おそらくそれはアリシアには聞こえていなかった。あるいは聞こえていたかもしれないが表情一つ変えずにソラトのほうを見る。
「どうしたんですかその傷!今回の実技試験では一人5分少し実力を見る程度のもので受験者に怪我をさせてはいけないということを聞いていたのに」
5分程度って俺ん時は10分くらい剣を交えていたような気がするな。ま、いっか。
ソラトは戦闘の時はいろいろ考えているがこういうことは案外何も考えていない。いや、人生について考えていないわけではない。要するに細かいことは気にしないということだ。
「いやぁ試験中にやられ、ました」
アリシアがあまりに綺麗なのでソラトはぎこちなく敬語を使う。
「全くあの人は」
とアギトの性格をわかっているアリシアはため息をつくが、同時にあの人が手加減を間違うとも思えないと思い少し疑問だった。でもアギトなら普通にやりかねないとも思い納得した。
「それと敬語は使わなくてもいいですよ。私は誰に対してもこうなので気にしないでください」
ニコっとしながら言うものでアギトはなんとなく目をそらしてしまう。
だあああああああああああああか可愛いいいいいいいい。ち、ちくしょう。調子狂うぜ。
「じゃあ早速頼むは」
「はい。では傷口を見ますね」
近い顔近い。やばい。落ち着け落ち着け落ち着け。
じっと傷口を眺め、
「これ真剣で切られたような傷ですね。あの木刀にはそんなに強い魔法がかけられていたのかな?」
これについてはよくわからない様子のアリシアだ。しかし今まで多くの人の傷を治してきたので傷を見ただけである程度何でできた傷かわかってしまう。
「あぁ。木刀が折れたんでな」
アリシアも受験前に木刀に触って少しは硬度を確認している。
もしかしてこの人相当強い?
「それにしてもアギトさんは勝手な人です。先ほどあちらで少しもめている声が聞こえていたのですがアギトさんが真剣を持ち込んだからなんですね。納得です。じゃあ治しますね」
アリシアの手から緑っぽい光の粒のようなものがあふれだし、そのままアギトの頬に手を伸ばすと傷口が少しづつふさがっていく。
「すごいな。治癒の能力。魔法なのか?」
「これは能力ですよ。魔法だと魔法陣が発生しますから。魔法も使えるのですがいろいろと面倒なので、あとこの程度なら能力でも十分ですしね」
「そうなのか」
「ありがとな。じゃあ行くわ」
「待ってください」
「まだ終わってませんよ」
「え?」
不思議そうな顔しているソラトにアリシアは言う。
「口の中」
「あぁ」
そういえばアギトに投げ飛ばされたときに血がでていたな。痛みが少し引きかけていたのとアリシアが綺麗ですっかり忘れていた様子だ。
「舌も噛んでますね。こっちも治します。
「ありがとう」
口の中の傷は頬に手を当てそこから治していく様子だった。さっきよりも少し時間がかかっていた。
「直接じゃないと時間がかかってしまうんですよ。私の能力」
「そ、そうなのか」
何きょどってんだ俺は。
「本当は直接でもよかったのですがはじめてあった人の口の中に手を入れるのは失礼だと思いまして……」
天使かこの子は。
「じゃ、じゃあほんとにありがとな」
「はいまたいつでも来てくださいね」
「あぁまた」
「っぁ最後に名前聞いてもいいですか?」
「そうだった俺はソラトだ。よろしく」
「ソラトですね覚えました」
微笑んでソラトが出ていくのを見ていてくれた。
やっぱ可愛い。受かってたらまた会えるだろうか、
そんなことを考えながらソラトは医務室を出ていく。
要するにソラトは女慣れしていないのだ
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