第14話 託す者と託された者
「女神の転生計画というのはわかった。」
女神が生みだした世界のルール。
世界は生まれ、滅び、また生まれていく。
女神自身がそのルールを破ることはできない。
しかし、アンジェたちの力であればそれに対抗することができる。
その力を転生する女神に託し、世界を滅びから救おうというわけだ。
ただ、まだ気になることがある。
アンジェは俺に言った。
何も抱えず新しい命を生きて欲しかった、と。
悲しそうに微笑みながら。
「転生先で俺は普通に生きるって話だったけど、なら託された力はどうなる?
それにアンジェたちはどうなるんだ?」
一番気になったのはここだ。
「ハジメさんに自由に生きていただく、というのは今も変わりません。
何か特別なことをしていただくこともありませんし、世界を救って欲しい、というお願いでもありません。」
「……。」
「ただ、ハジメさんが再び亡くなり、輪廻の輪によって世界を廻るその時」
一呼吸置いてアンジェが続きの言葉を紡ぐ。
「女神様として再び転生することになります。」
世界の理を破壊して。アンジェはそう言葉を繋げた。
「世界が滅びるわけではありませんからね!」
俺の顔を見てアンジェが慌てて訂正する。
ほんとぉ?
「今のはアンジェが悪い。あんな言い方をすれば誰だって不安になる。
わたしもあれ?って思っちゃうくらい。」
「これから説明しようと思ったんです!本当なんです!」
「わかったわかった。アンジェ、続きをどうぞ。」
俺が優しく先を促したのにアンジェは頬を膨らませる。
「むぅ、まぁいいでしょう。最初から説明しますね。
女神様がそのまま転生しても今までの理から抜け出すことはできません。
そこで、私たちの力をハジメさんに託し転生先に送ります。
ここまではいいですね?」
俺とカルディナがコクリと頷く。
「転生先では特別何かすることはありません。ハジメさんの好きなように人生を生きていただきます。
そして命が終わると輪廻の輪を廻るのですが、ここで私たちの力が発揮されるのです。」
「ほうほう」
「次の転生は女神様として転生することになりますが、その時新たな女神として誕生する際、以前の理は女神様に適用されないんです!何故ならば、私たちの力を持っているから!」
アンジェの拳に力が入る。それはもうぐぐいと拳を握りプルプル震えている。
「アンジェたちの力を持っていると大丈夫なんだ。」
「わたしたちの力は【無に帰るもの】たちとも戦える力。つまりこの世界の理とも戦える力、抗う力というわけ。」
「そして世界のルールを新たに生みだしていくってことか。ふーむ。」
「何か気になることがありますか?」
「いや、そんなにうまく行くのかなあって。アンジェたちを信用してないとかじゃなく、単純にうまく行くのかなって。
世界の理だけぶっ壊すなんて想像できなくて。」
「その心配はごもっともです。まずそれについてですが、そもそもの話、女神様が無へ還った時、世界は滅びませんでした。」
「へー、滅んでないんだ。」
「そして、女神として再びこの世界へ転生しても世界は滅びません。
ただし、女神が生まれるとき、そのエネルギーによって世界に歪みが生じます。
その歪みを修正する際に新しい女神様によって理を塗り替えるということです。
元の女神様では同じ理しか生み出せませんが、私たちの力を有した女神様であれば、それも可能になるというわけなのです。」
もっとスタイリッシュな女神パワーとかでやるのかと思えば、もの凄い力業なんだなぁ。
「女神様だけでなくわたしたちもいるから大丈夫よ。ただ、」
カルディナは少しだけ言いよどむ。
「今のわたしたちではなく、新しいわたしたちに任せることになるけれど。」
あぁ、なるほど、そういうことか。
アンジェやカルディナたちの表情は。
「力を託すっていうのはそういうことなのか。」
「……はい。その通りです。ハジメさんはお優しいですから、何も気にせず向こうで過ごして欲しかったのです。」
「気にせずってのは無理かなぁ。」
たとえ俺が向こうで死んだ後のことだとしても気になるもんは気になる、が。
「わかった。託された。」
「ハジメさん?」
「俺に何かできることはないんだと思う。女神の力が使えるわけでも、新しい策が思い浮かぶわけでもない。
だから大人しく託されるよ。俺は俺らしく生きる。それが俺にできることだ。」
「ハジメさん……えぇ、託しました。私たちの力と想いを。」
「わたしのも。もちろん他の子のも持っていって。」
託されるってのも楽じゃないな。行く前に荷物がいっぱいだ。
「じゃあ向こうに行くまでにもう少し思い出作りしとくかー。」
「スイーツを食べよう。アンジェはおいしい物をため込んでいる。」
「あ、じゃあお餅食べますか?」
「なんでだよ!!」
そして俺は転生する。
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