第6話 ニューボディ
「むぅ、くぁぁ……あぁよく寝た。」
転生は第二段階に移り俺は再び眠りに落ちた。
今度は本当に痛くなかったので一安心。
いやぁ、最初のやつは痛かったぁほんと。あんな痛みは二度とごめんである。
そんな趣味は無いのである。
「ん~、なんか体が軽いな。よっ、ほっ、と、んん?」
体に違和感がある。今度はどこを
と、足元を見る。
しかし見えない。
「あれ?足、が無い!?いや違う。」
正確には足元が見えない。謎の障害物で足元が見えないだけだった。
落ち着いて見れば足はちゃんとある。
いや、足もなんか細いぞ、毛もない。
うーん、現実逃避はやめにして目の前のこれに集中しよう。うむ。
「おっぱいダァァァァァっ!!!!!!うわぁぁ初めて見たぁぁぁぁ!!!!ってゆーか声もなんか変わってるぅぅぅぅ!!!」
「おはようございます、ハジメさん。よく眠れましたか?」
「あ、アンジェ!アンジェ!!おっぱいだよ!!」
俺は死ぬほど混乱していた。すでに死んでいるけど。
「ハジメさん、落ち着いてください。そんなに触ると取れちゃいますよ?」
「え!取れるの!?おっぱいって取れるの!?」
混乱した俺は混乱する前から揉んでいた自分の胸から手を離す。
初めて触ったものが自分の物というのはあれだけど、おっぱいはおっぱいだ。
取れてしまうと言われれば素直に従うほかない。
おっぱいのことで俺の頭はいっぱいだった。
アンジェはいつもの微笑みを浮かべ
「その体はまだ転生の途中のなのです。完成体は今ご覧の通りなのですが、簡単に言えば、枠組みを作ってその後中身を枠に合わせていく、とでもいいましょうか。さすがにパーツごとに作業をするのは効率が悪いので。」
鼻だけ転生させたくせに効率を語るのか。
「ハジメさんに身近なもので言うならば、バーチャルボディ、仮想の体を体験しているといえばどうでしょう。」
「バーチャル、なるほど。見た目だけ、ガワだけはっつけてるわけだ。つまりこのおっぱいは……ニセモノ、なのか。」
「あ、あのそんなに落ち込まないでください。ハジメさん?ハジメさーん!」
ひざを突いてうなだれる俺にはアンジェの声はなかなか届かない。
だって、おっぱい嬉しかったんだもん。
初めてだったんだもん。
それがニセモノだったなんて、童貞にわかるわけないじゃないか!
「確かに今は仮想体ですが、それは今だけですよ。このあとちゃんとその体になりますので気を確かにしてくださいね。」
「わかったすぐ頼む。」
「駄目ですよ~落ち着いてくださいね~。それよりも、今はちゃんとその体を確認してみませんか?まだ一部しか見ていませんでしょう?」
ふふ、お恥ずかしながらまだ足とおっぱいしか見ていませんでね?
そう言われればそうだなと、急に冷静になってきたところであります。
アンジェはいつものように惑星のような球体の装置を操作し、俺の前に鏡を作り出す。
そこに映っていたのは美少女だった。
上からも、下からも何度も何度も目線を行き来させる。
まず目に付いたのはその肌の美しさだ。
白く絹のようにきめ細やかで、シミ一つ無いその肌はまるで光っていると錯覚するほどの輝きがある。
すらりと伸びた腕、細くしなやかな指は間違いなく俺の指だ。
細くスラッとした足から目線を上に移していく。
腰はキュッと引き締まり、その上にある少し大きめの胸との対比でより細くみえる。
ほっそりとした首から目線を少し上にずらすと、形の良い唇が顔を出す。
薄ピンク色の唇からは、先ほどから聞き慣れない声が聞こえるが、すでに声は変わっているらしい。
少々低めだが落ち着いた声音に自分のことながらドキッとしてしまう。
鼻はすでに見ていたが、あぁ、ここにあるべくしてある鼻だなと思うほどベストフィットしている。やっぱり元の顔には合いませんわ。
キリッとした目は瞳が金色に光る。元の俺がこの目で見られたら瞬間勘違いするだろう。
黒い眉もキリリと主張し、黒いロングの髪は、全ての光を吸収してしまうのではと錯覚する漆黒の怪しい艶やかさだ。
「これが、俺。」
息をのむほどの美少女に絞り出す言葉はこれが精一杯だ。
言葉は続かない。
どこか気が遠くなりそうなのは気のせいではないかもしれない。
鏡を凝視する俺にアンジェは声をかけようとするが、俺の顔を見てギョッとする。
ちなみに今俺は全裸だ。
そして俺は童貞だった男だ。
俺は赤く染まった顔をアンジェに向け満面の笑みで頷く。
「ありがとう。」
「ハッ!ハジメさん!?」
「もう死んでもいい。」
「ちょ、ちょっと駄目ですよハジメさん!これから、これから転生するんですよ!?死んじゃだめですよハジメさん!!!!」
全部見た。初めて本物を全部見た。バーチャルだけどそれはそれ。
エッチなことを考えて鼻血はでないって聞いてたけど、でるじゃん。
どばどばでるじゃん。
もう俺には愛棒はないけど、変わりに心の愛棒が爆発したんだろうな。
何度目かの意識が遠のくこの感じ、こんなに幸せに逝くことがあるだろうか?
薄れる意識の中で、鏡に映った俺は鼻血で真っ赤に染まり、にやけた顔はその美貌を台無しにしていた。
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