第15話
「黙れや!」
ハルバート使いのダニエラの声です。
「冒険者はいつでも命懸けなんだよ!」
盾役で剣士のヴァレリアの声です。
「護衛対象を売る冒険者はいないんだよ!」
元盗賊で斥候役のソフィアの声です。
「冒険者風情が大口を叩きおっ、ギャァァァァアァアァアア!
眼が、眼が、眼が!
卑怯者が!」
「へん!
仲間の留守を狙って、百人を超える完全武装の人間で襲う盗賊に、卑怯者と呼ばれるいわれはないよ!」
ダニエラが舌鋒を叩きつけます。
「他国に来て民家を襲うのがエルフィンストン王家の騎士団かよ!」
ヴァレリアが追撃の舌鋒を放ちます!
「盗賊だ!
強盗だ!
エルフィンストン王家の騎士団が斬り取り強盗を働いでいるぞ!
エルフィンストン王家の騎士団は強盗だ!
エルフィンストン王家の騎士団は人殺しだ!
エルフィンストン王家に騎士隊長ディエゴ人殺しの強盗だ!」
「黙れ、黙れ、黙れ!
俺は誇り高きエルフィンストン王家の騎士だ!」
「死になさい、卑怯者!」
ドッカーン!
私とネイは遅れて戦いの場に駆けつけました。
私が迷っている間に、カルラが仲間を助けに走ったのです。
それが私を決断させました。
共に戦うと!
ネイを安全な場所に隠そうとしましたが、縋りつくような視線に、置いておくことなどできなくなりました。
私が勝って生き延びればいいのです。
私はネイを抱いてカルラを追いかけました。
私が玄関についた時には、戦場となっていました。
ソフィアが使ったであろう目潰しと煙幕によって、玄関内のロビーの視界は最悪でしたが、百十一対三の戦いでは、それが唯一の勝機だったようです。
ですが、不利であることに違いはありませんでした。
板金鎧に身を包んだ百十一人の対人戦闘訓練を積んだ戦士が相手なのです。
勝機は少なかったでしょう。
ですが私とネイが駆けつけた時には、ディエゴと配下の半数が死傷していました。
カルラたちは重傷を超えて重体です。
私は躊躇うことなく、重体のカルラたち、中級上の治癒魔法を書き込んだ魔法巻物を使いました。
一人一枚では完全に治すことができず、二枚三枚と消費しました。
黄金よりも貴重な時間が流れるなか、玄関の外で待機していた騎士と従士が、ようやく驚愕から立ち直り、玄関の中に入ってきました。
私は魔法袋に入れていた攻撃用の魔法巻物を使って迎撃しました。
ケガがほぼ完治したカルラは、魔法による狙撃を始めました。
ダニエラがハルバートを振るって騎士たちの中に飛び込んでいきます。
ヴァレリアは私を護ろうと大盾を構えています。
ソフィアが再び目潰しと煙幕を投擲します。
私は何ともいえない嫌な感覚に囚われました。
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