第14話

 その日私は狩りに不参加でした。

 ウィリアム様たちは元々のメンバーを六人で狩りに行かれました。

 私が創り出した中級の魔法巻物を大量に持って狩りに行きました。

 もっとも必要なければ魔法巻物は使いません。

 魔法巻物の原材料となる魔皮を集めるのに、狩れる魔獣の価値以上の魔法巻物を使ったら大損だからです。


 残った私は、カルラに魔法巻物の創り方を教えています。

 他のアマゾーンメンバーは、私の護衛をしてくれています。

 もっとも、同じ部屋にはいません。

 魔術契約をしているとはいえ、魔法巻物の創作方法を盗もうと考える者が、どのような方法で知識や技術を盗むか分かりません。

 知らさない事が一番安心安全なのです。


 私はカルラに色々と教えたのですが、全部ウィリアム様の受け売りです。

 私が元々持っていた知識も技術も一つもないのです。

 だから年上のカルラから尊敬も眼で見られるのは胸が痛みます。

 ですが、大恩あるウィリアム様たちを売るわけにはいきません。

 ウィリアム様とイライアス様は、自分たちにそんな知識や技術があることを、誰にも知られたくないようなのです。


 もっとも、カルラに教えるのは、初級の魔法を刻み込んだ魔法巻物だけです。

 中級に必要な魔法陣は一切教えません。

 これも他のメンバーと同じ理由です。

 知識や技術を盗まれる危険は少なくしなければいけないのです。


「ポ~ラ~、ネイも手伝う~」


「でも難しいのよ。

 大切なモノだから、傷つけても汚してもいけないの。

 だからここに手を置いて、魔力を込めてちょうだい」


 なんでこんな事を口にしたか、後になって考えても分かりません。

 邪険に扱ってネイを傷つけたくないだけなら、他にも言い方はありました。

 手伝う真似事だけをさせるのなら、他にも色んなことがあります。

 魔法を込める真似事をさせようとした理由などないのです。

 神様も導きだったとしか思えないです。


 ドッガーン!


「私はエルフィンストン王国に仕える騎士隊長ディエゴだ!

 勝手に国を抜けだしたサンディランズ公爵家のルシアを逮捕に来た。

 邪魔する者は問答無用で斬り捨てる。

 ルシア!

 無用の犠牲者を出したくないなら、素直に出てこい!」


 マルティナの放った追手です!

 ディエゴは、悪夢の中でマルティナに籠絡されて私を殺す男の一人です。

 ディエゴはグレンヴィル伯爵家の長男で、右将軍の父親の跡を継ぐと目されている、剛勇でなる王国の騎士隊長です。

 一人で来ているはずがありません。

 騎士隊を率いているなら、十人の騎士と百人の従士を率いているはずです。

 殺されるのが分かっていて、大人しく捕まりたくはないです。

 ですが、そのために誰かを犠牲にするのも嫌です。

 私はどうすべきなのでしょう?

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