第5話
「お願いです。
私を仲間に加えてください。
冒険者の経験はありませんが、護身術はたしなんでいます。
回数も効果も少ないですが、治癒魔術が使えます。
後方要員としてならお役に立てると思います」
「ほう!
それが本当なら助かるよ。
なあ、ウィリアム」
「そうですね。
ですが能力次第です。
失礼な言い方になりますが、実際の能力を確認しなければ、仲間に入れる事はできません。
ですが誤解しないでくださいね。
救いの手を差し伸べるのに反対しているのではありませんよ。
我々が狩りや依頼をこなしている間は、宿屋で待っていてもらえばいいのです」
「そうか、そうだな。
どうかな、ポーラ嬢。
今実力を確認させてもらえるかな?」
二人の騎士の会話に聞きほれていました。
安堵して、普通の状態で話をすると、二人の美声がよく分かります。
思わず聞き惚れそうになる美声だったのです。
しかも面貌を上げた顔が全く同じなのです。
双子なのでしょうか?
それともよく似た兄弟なのでしょうか?
「はい、当然の事だと思います。
冒険者は命懸けのお仕事だと聞いています。
実力の分からない人間を、仲間に加えられないのは当然です。
なにからお見せすればいいですか?」
「じゃあ護身術の方から見せてもらおうか。
でも護身術といっても色々あるよね。
遠くの敵を斃せるような技は覚えているかい?」
イライアス様と名乗られた方ですよね?
全く同じ顔なので、間違えているかもしれません。
ですが気さくに話しかけてくれる方がイライアス様だと思うのです。
「狩りの嗜みで弓術を学びました。
護身用に投擲術も学びました」
「ほう。
それがある程度使えるのなら、狩に同行してもらえるかもしれない。
背中の弓は盗賊除けの擬装ではなかったんだね。
だったら試しにあの木を狙って射てくれるかい」
イライアス様が示される木は少し遠くにあります。
目測で百メートルは離れています。
狩猟で獲物を正確に射るのなら、五十五メートルが限界なのですが、私を試しているのでしょうか?
「あの、百メートル離れていると、狩りでは正確に射れない距離だと思うのです。
飛距離を試すおつもりなら四百メートルくらい先を狙いますが?」
「ほう!
本気で狩猟をされていたんだね。
だがそれは後で試させてもらうよ。
まずはあの木を狙ってくれ」
「分かりました」
私はイライアス様の指示通り、最初に百メートル先の木を狙って的中させました。
次に距離を試されて、四百メートル以上を射ることができるのを見て貰いました。
最後に素早く射る事ができるのも確認してもらいました。
狙うべき動物がいなかったので、狩猟の腕前を披露することはできませんでした。
「これだけ弓が射れれば十分だが、刀剣の扱いも確認させてもらおう」
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