第4話

「やあ、僕たちは冒険者だ。

 怪しい者じゃない。

 安心して欲しい。

 君をどうこうしようというわけじゃない

 たまたま山賊退治の依頼を受けただけだ」


 山賊を皆殺しにした騎士の一人が、面貌をあげて満面の笑みを浮かべています。

 私に敵意がないことを証明しようとしてくれているのでしょう。

 しかし完全に信用するわけにはいきません。

 冒険者は色々と言われている通り、大半はならず者です。

 行儀のよいモノなどほとんどいません。


「イライアス。

 それでは完全に信用してもらえないよ。

 私たちは分かれて行動した方がいい」


「いや、それは分かってるんだが、心配なんだよ。

 どうみてもこの人は身分の高い女性だ。

 それが供も連れずにこんな所にいる。

 見過ごしにはできないよ」


 二人の騎士の話を聞いていると、親切で心配してくれているように聞こえます。

 ですが今の私には、それを鵜呑みにする余裕などありません。

 悪夢の日々を重ねて、家を逃げ出したのです。

 逃げ出してからも、幾度も危険に遭遇し、ついさっき山賊に囲まれたのです。

 この冒険者と名乗る者たちが、いつならず者に豹変するか分からないのです。


 ヒィヒヒヒヒン!


 ティシュトリヤが大きく嘶きました。

 嘶いてこちらにチラリと視線を向けてくれます。

 その瞳が、安心していいよと言っているように見えます。

 

 フッと肩の力が抜けました。

 そのまま馬上に倒れてしまいそうになりました。

 何とか精神力を搔き集めて、崩れ落ちそうになる自分を奮い立たせました。

 私は安心していいのです!

 ティシュトリヤがこの冒険者は信用できると言ってくれているのです。


 だからなのですね。

 これまで山賊や盗賊を避け続けてくれたティシュトリヤが、今回だけ山賊に囲まれてしまいました。

 わざとだったのです。

 私のために、わざと山賊に囲まれてくれたのです。


 私の今後を考えて、信用信頼できる人間に出会わせてくれたのです。

 私を助けるために、冒険者に出会わせてくれたのです。

 彼らを頼り、一緒に行動しろと言ってくれているのです。

 ならば私のする事は一つです。


「ありがとうございます。

 あまりの恐怖と誰を信用していいのかわからず、お礼が遅くなってしまいました。

 理由があって家名も本名も話すことができません。

 どうかお許しください。

 私の事はポーラをお呼びください」


「ああ、気にしなくていいよ。

 色々と訳があるのはみんな同じだ。

 無理に聞きだそうとは思わないよ。

 そのかわり私たちの事も聞かないでくれ。

 それより最初に確認しておきたいのですが、このまま何も聞かずの分かれたいですか、それとも一緒に行動したいですか?」


 さあ!

 これからの言動が命を賭けた正念場になります!


 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る