第9話
「アンゲリキ様が秘密を打ち明けてくださったので、私も真実を話します。
私は人を愛するのが怖いのです。
生まれ育ちを知られて、相思相愛だったと持っていた恋人にふられました。
それ以来、人を愛するのが怖いのです。
女性を信じられないのです」
「直ぐに私を信じてくださいとは言いません。
言葉などいくらでも飾れますものね。
だから私を見ていてください。
私は全身全霊でヴァシレイオス様を愛します。
我が一族の宿痾なのですが、愛する者のためなら、全てを滅ぼしても構わないという執着があるのです」
「それで兄上はあのような事件を起こされたんですか?」
「はい。
我が一族の宿痾は、歴史ある貴族家なら知っている事です。
兄を意のままに操るために、兄が恋した売春婦を養女にしたのです」
「待て、待ってくれ。
だったらアンゲリキ様も、ヴァシレイオスを人質に取られたら、王太子殿下であろうと、国王陛下であろうと、平気で殺すというのか?!」
「横から口出しをするなと言ったはずですよ!」
私がほんの少し視線に威圧を込めて睨むと、ディミトリオスは金縛りになりましたが、これくらいはヴァシレイオス様も許してくださるでしょう。
本当は邪魔なディミトリオスを殺してしまいたいですが、そんな事をしたらヴァシレイオス様に嫌われてしまう事くらいは分かります。
「ヴァシレイオス様は今回の処置に疑問を感じられませんでした?
ヴァシレイオス様が私の婿に選ばれて騎士団長に任命されたこと」
「ええ、さっきも口にしましたが、王太子殿下のアンゲリキ様への執着の結果だと思っていました」
「はい、その通りです。
ですがもう少し考えてみてください。
私が話した事情も考慮して考えてみてください」
「……アンゲリキ様の言葉通りだとしたら、アンゲリキ様は王太子殿下どころか国王陛下も許されないですね。
陛下と殿下を殺してでも私を手に入れようとなされますね」
「はい、ですがそこまで過激にする必要などないのですよ。
少し脅せば分かってくださいますから」
「信じられない、いえ、信じたくないはない話ですが、冒険者ギルドの情報がありますから、信じるしかないようですね」
「ねえ、ヴァシレイオス様。
ヴァシレイオス様も私も貴族です。
貴族ならば政略結婚は普通の事ではありませんか。
さきほどもヴァシレイオス様は白の結婚を提案してくださいました。
だったら私も政略結婚を提案させていただきます。
そして結婚生活で、私がヴァシレイオス様を愛している事を証明してみせます」
「僕は、一生アンゲリキ様を愛せないかもしれませんよ。
それでもかまわないのですか?」
「ふふふふふ。
ヴァシレイオス様の心が凍ってしまっていても、私の愛情で溶かしてみせます!」
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