悪役令嬢は処刑されないように家出しました
第1話
「サンディランズ公爵家長女ルシア!
その方が国の至宝である聖女マルティナを殺そうとした悪行は許し難い!
父親である宰相サンディランズ公爵の忠勤でもあがなえぬ!
よって見せしめのために処刑とする!」
「お待ちください、王太子殿下!
誤解でございます!
間違いでございます!
私は何もしていません!
私から聖女マルティナに近づいた事など一度もありません!
間違いが起こらないように、避け続けていました。
私が聖女マルティナを殺そうとするなど不可能です!」
「黙れ、黙れ、黙れ!
卑怯にもほどがあるぞ!
己の罪を悔いて減刑を求めるのならまだわかる。
だが罪を犯していないと嘘をつくなど許し難い。
その方の穢れた声など聞きたくない!
衛兵!
さっさとこの汚物を塔に閉じ込めろ!」
ああ、まただ。
また処刑されてしまう。
何度も、いえ、何十回も処刑されてきました。
毎日、そう、毎日何度も処刑される夢を見ます。
ですが毎回最後に処刑されることが同じだけで、それに至る道は違います。
私が違う選択をする事はできるのです。
最初は王太子殿下の婚約者として、貴族の常識を護った態度で聖女マルティナの接していましたが、いつの間にか覚えのない汚名を着せられて、最後は処刑されてしまうのです!
私は侯爵家令嬢の誇りを捨てました。
誇りを捨ててでも処刑を逃れようとしました。
聖女マルティナの傍若無人な態度に耐え、小さくなっていました。
それでも、最後は汚名を着せられて処刑されるのです。
その度に思い知らされるのです。
聖女マルティナこそ悪女だと。
私が死刑を宣告される時の聖女マルティナの顔!
見た目は私を恐れるような弱弱しい表情を浮かべています。
ですが、その眼には怯えなどないのです。
私を死刑にした喜びと満足感が宿っているのです。
私は誇りを捨てるだけでは駄目だと理解しました。
近づかないことが一番だと思いました。
私は聖女マルティナを避け続けました。
冤罪を着せられないようにです。
ですが、それでもダメでした。
聖女マルティナが自ら私に近づき、陥れようとするのです。
私は最後の手段を使う事にしました。
夢に入った直後に、王太子殿下との婚約を解消するのです。
ですが、ダメでした。
何度も何十回も試しましたが、自分の行動は自由になるのですが、他人の考えや行動は変えられないのです。
国王陛下も王太子殿下も父上も、婚約解消を認めてくれないのです。
夢から覚めたら、また王立魔法学院入学前の自分に戻ります。
よく心臓が止まらないモノです。
毎日何十回も処刑される苦しみを感じて生きていけるモノです。
正気を保っていられるモノです。
ですが、もう眠るのが怖いです。
眠るのが嫌です!
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