第28話 6日目F:彼女からボクへの質問


「聞こえますかタチバナさん?」

 何処からか「女の声」が聞こえて来た。

 この時ボクは頭がとても痛かった。 ボクは項垂れ(うなだれ)ており、「テーブルの上」だけが見えていた。

 女は言う。

「アナタは今、“頭が冴えている”状態です。 今から幾つか質問をするので、それに答えてくださいね」

 女は“彼女”とは声が違っていた。 急な声変わりでもしたのだろうか?

 女は言う。

「アナタは今、『次世代破壊兵器』について語っていました。 それは“どういうもの”であるのでしょう?」

 ボクは『それは君の方が詳しいのでは?』と思いつつも、尋ねられた事に答えてみせた。

「『次世代破壊兵器』というのは……、“物理兵器”だろうと思われます……」

「物理兵器?」

「ええ。 話の構造から“一瞬にして広範囲に対して効果を与えるもの”だと推測出来ます……」

「…………」

 ボクがそう言うと、彼女は一瞬黙ってみせた。 そして再びボクへと尋ねた。

「それじゃあ10年掛けて調べたという『人類の10%程を滅ぼせる手段』というのは?」

「それは“ウイルス兵器”であろうと思われます……。 これも彼女の“言い方”から推測する事が可能です……」

 彼女は尋ねる。

「だったら『若返りの秘術』はどうすれば手に入れる事が出来ますか?」

 なんだか妙な展開ではあるが、ボクはボクなりに答えてみせた。

「残念ですがそれに関しては言う事は出来ません……。 “大きなお金が動く事”が“言えない理由である”と伝えて置きます……」

 彼女は尋ねる。

「それでは『地球温暖化対策およびエネルギー問題の解決』についてはどうですか?」

「今現在、『環境保護団体』と呼ばれている団体は将来的には“別の団体”になっており、それは…………」

 その後もボクは彼女の質問に答えたり、答えなかったりしてみせた。 どうしてボクが『彼女の知っている情報』を答えなくてはならないのか、とても不思議な事だった。 けれどもボクは“具体的な化学物質の名前”や“物理現象のルール”等の詳細については言葉を濁しながらに伝えてみせた。 なんとなく“言いたくない”と思ったからだ。 そもそも、この頃のボクは“主(しゅ)”という立場では無かったから、詳しい事までは分からなかった。

 ああ、なんだか頭が痛くて仕方が無い。 熱っぽさもある気がする。

 ボクは暫く「女の声」への対応を続けて後に、やがては少しずつ意識が遠くなって行っては、「眠りの底」へと落ちていた……。

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