斧
「おい、青魔導師」
赤騎士が言った。
「どぅわっ!? ちょっと、窓から入って来ないでよ!」
朝食を吹き出しかけた青魔導師が言った。
「申し訳ない。何分、急ぎの用であってな」
赤騎士が頭を下げながら言った。
「いや、だからって窓からはないでしょうよ。で、何よ?」
青魔導師が尋ねた。
「アレ貸してくれ。木を割る奴」
赤騎士が言った。
「は? 斧のこと?」
青魔導師は首を傾げた。
「違う違う、トマホーク」
赤騎士が言った。
「戦闘用! 物騒!」
青魔導師が嘆いた。
「戦闘用でも調理用でもなんでもいい。そいつを貸してくれ!」
赤騎士が急かすようにして言った。
「いいけど、何をそんなに急いでいるのよ?」
青魔導師が尋ねた。
「何をって、アレがなきゃ、火が起こせない、すなわち飯が食えないということだ。早くしないと、僕は今にでも倒れてしまいそうだよ」
赤騎士が腹を押さえながら言った。
「どんだけギリギリなんだよ! つーか飯ならあるけど?」
青魔導師がテーブルの上の料理を差し出しながら言った。
「いや、そういんじゃなくて、自分で作らないと意味ないから。もうここまで来たら」
赤騎士が手を振りながら言った。
「面倒くせ! そのこだわり面倒くさいわぁ!」
青魔導師が嘆いた。
「面倒が臭かろうが、なかろうがどうでもよい! さあ、オ……トマホークを貸してくれ!」
赤騎士が冷や汗を浮かべながら言った。
「斧って言いかけた! 今、確実に言いかけた! ……まあいいけど。表の倉庫にあるから、勝手に持ってきなさい」
青魔導師が呆れ顔で言った。
「恩に着る! では、倉庫に! ……と、その前に」
赤騎士はテーブルの上に視線をやった。
「は? 何?」
青魔導師は首を傾げた。
「……そのポテトサラダ、もらっていいか?」
赤騎士が尋ねた。
「意志が弱い! さっきまでのこだわりどこ行ったよ!」
青魔導師が吐き捨てた。
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