赤騎士と青魔導師
ジョン
訪問
「やあやあ、青魔導師」
村にある一軒家の戸を開けた少女が言った。
「何がやあやあよ、赤騎士。ノックもなしに他人ん家の玄関に入って来るんじゃないわよ」
青魔導師と呼ばれた少女が言った。
「おっと、それは失礼したな。では、やり直すとするか」
そう言うと赤騎士は青魔導師に背を向けた。
「いや、面倒だからそういうのいいから」
青魔導師は冷や汗を浮かべながら、赤騎士の肩をつかんだ。
「それもそうだな。お心遣い、痛み入る」
そう言うと赤騎士は土足で家に上がり始めた。
「いや、靴! 靴! 常識ゼロかよ!」
青魔導師がわめいた。
「ちちち。常識に縛られないのが僕のよいところさ」
赤騎士が鼻の下を指でこすりながら言った。
「いや、知らないわよ。あと、このタオルで床ふきなさいよ」
青魔導師は赤騎士に一枚のタオルを渡した。
「おっと、かたじけないな。では、ふかせて頂こう」
そう言うと、赤騎士は土足のまま、床をふき始めた。
「だから靴! 靴ぬげよ! もう、何なんだよこいつ!」
青魔導師が涙目で言った。
「何なんだと問われても、僕は僕以外の何者でもないが?」
赤騎士がほくそ笑みながら言った。
「深い! でも思慮は浅い!」
青魔導師が嘆いた。
「浅いと言えば、この前、海辺で潮干狩りをだな……」
赤騎士が顔を上げながら言った。
「言うほど「言えば」じゃねぇし!」
青魔導師もタオルで床をふきながら言った。
「何だったかな……何かすごい貝を何個か見つけてそれを何かしたんだよ」
赤騎士が頭を押さえなが言った。
「記憶力! 「何」ばっかり! 話の中身が空っぽ!」
青魔導師がタオルを絞りながら言った。
「まあ、そんなどうでもいい話はどうでもいいや」
赤騎士が笑いながら言った。
「「どうでもいい」二回言った! 何でそんなどうでもいい話し始めたんだよ!」
青魔導師は頭を抱えた。
「でも、どうでもいいことに限って、大切なことだったりするんだよな」
赤騎士が遠くを見ながら言った。
「知らねぇよ! つーか、あんた何しにウチに来たのよ?」
青魔導師が尋ねた。
「それは……えーと、何だったかな?」
赤騎士は首を傾げた。
「だから記憶力!」
青魔導師が吐き捨てた。
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