第4話 成長
――4年後――
あれから4年たち、俺は4歳になった。……当たり前だけど。
親の形見のネックレスとハルがくれたペンダントはずっとつけたままだ。
この孤児院に来てから気づいたが孤児と行っても殆どが新しい親がすぐ見つかり、出ていく。俺は新生児とのことで4年間いるが、長く残っていた人でも7年位で引取先ができて出ていくみたいだ。
現状この孤児院にいるのは俺一人だった。
また4歳になるまでほぼ毎日ゲーショがここらへんの地理や、歴史について教えてくれた為、だいぶ状況がわかってきた。
まず、暦だが1年は365日、12ヶ月でここは現実世界と変わらない。1日は24時間で、曜日も一緒だ。そこは安心できた。
生まれてすぐ孤児院に預けられた俺は誕生日というものがあやふやだったため、法律で決められた通りになるらしく、孤児院に預けられた日が誕生日になるった。と、言うことで俺の誕生日は10月19日ということになる。
地理的な部分でいうと、ここは異世界グランディア―ルの王国カリディア。で、今いるところがカリディアの王都から東に位置するカルドアという街だ。
またカリディア王国は王政で貴族たちがその地域を治めている、が先代の王・今の王が明白な方で貴族たちの圧政や、理不尽なことが起きないように毎年2回選挙のような物で貴族が治めている地域の住民に対して投票等を行い、その貴族が治めるのにふさわしいかどうかを確認していた。そのためか王自身すごく人気があった。
カリディア自体は海で囲われた大きな島国なのだが、南と西に大きな橋がつながっており、南がディルガンド、西にガルディオシスという国とつながっているらしい。
この2つの国との交易も盛んで、基本的な外貨獲得は塩と造船業。そしてここからが異世界っぽいもの……ダンジョンが大小合わせると20個ほどあるらしい。また国自体が縦に長いため、四季もあり、南の方は常夏だそうだ。なのでダンジョン攻略目的の冒険者も含め観光も外貨獲得の一つとして挙げられていた。
で、現状俺は4歳。頭脳は33歳というなんとも言えない状況になっている。
3日に1度ほど哨戒魔法を使ってSPとコアを確保していた。
おかげでSPは10万近く溜まっている。コアもボアキングのコアが5個、コボルトキングのコアが10個といったキングクラスの魔物のコアも手に入れていた。
ゲーショはそれを見て凄く喜んでいた。
どうやらキングクラスの魔物のコアは妖刀を作る際の素材として最高らしい。
また、売っても高く買い取ってもらえるため、便利なものだそうだ。
妖刀を作る素材も集めなきゃなぁと思って自分の異空間倉庫を見ると、剣やその他金属類、貴金属類が溜まっていた。……数えるのも面倒な量だったので新規魔法作成をする。
『数量カウント魔法』対象物の……
「ちょっとまったー!!あんた俺の存在忘れていないかい?」
いきなりゲーショが出てきた。
「せっかく俺がいるんだぜ!?数くらいもう数えてデータベース化完了してるぜ旦那!」
ゲーショはこうなることを予想してか、すでにデータベース化してくれてそれを見せてくれた。
「ゲーショありがとう。お前すごいな!ってうわぁ結構あるんだなぁ……」
見ると剣類が300を超え、他にも棍棒・槍・盾が各々100ずつほど、インゴットとして鉄や鋼鉄が40ほど、銀が30、金と白金が3個、ミスリルが3個、オリハルコンが1個あるらしい。
ゲーショが言うには刀1個作るのに最低インゴットが5つほどいるみたいだ。最高で10個。それを組み合わせて炉にかけ、刀を作っていく。そんな流れらしい。俺はと言うとミスリルとかオリハルコンとか存在することに感動していた。
かなりの量の金属がいることをしった俺は、新規魔法作成を行った。
『構造鑑定』対象物の構造・含有率を調べ表示する。また市場価格と照らし合わせ金額及び買取金額を表示する。
『分解』対象物をそれぞれの物質に分解する。分解したものは亜空間倉庫に保管。数は……ゲーショが数えてくれるらしい。
2つを作ると一気にSPが3000ほど減った。
そんな消費するのか……と思いつつ教会の裏に行き、適当に選んだ刀を亜空間倉庫から出した。
まずは構造鑑定。この剣は鋼鉄45%、銀が35%、白金が17%、ミスリルが3%だった。
市場価格は1万バル。1バルでパン1個なので1バル100円相当と考えた。と教えてくれた。1バルの下が1シルバル、10シルバルで1バル。この国では1シルバルが銅貨、1バルが銀貨、100バルで金貨、1000バルで白金貨、1万バルでミスリル硬貨、10万バルでオリハルコン硬貨だとゲーショが教えてくれた。
そしてその剣を分解魔法で分解する。
すると鋼鉄のインゴットが4個、銀のインゴットが3個、白金のインゴットが2個、ミスリルのインゴットが1個出来上がった。1個に満たない場合は1個として数えられるらしい。
今回は選んだものが良かっただけっぽいが一旦保管している剣を分解した。
結果は鉄が434個、鋼鉄のインゴットが256個、銀のインゴットが129個、金のインゴットが40個、白金のインゴットが55個、ミスリルのインゴットが20個、オリハルコンのインゴットが12個になった。
フム……と考えていると教会の中から呼んでいる声が聞こえたので表に戻った。
教会に入ると新しい子供がそこにいた。
銀髪でボブカットにしている、少し顔がまんまるとした無口っぽそうな可愛い感じの黒色のローブにワンピースのような服を着た女の子だった。
横にいたシスターが喋った。
「新しい子よ。エリクご挨拶は?」
「エリク・アランドです。4歳で、えっと……」
前世でもまともに女性を前にて話したことなかった俺は異世界に転生しても性格は変わらなかった。人見知りと仕方ない。中身はもとの人間だしね……。
詰まって恥ずかしくなったので教会の椅子の裏に隠れた。
すると新しい女の子はニコニコと笑いながら近づいてくる。
「僕はカリン・アスマス。6歳だから僕がお姉さんだね。これからよろしくね!」
俺よりしっかりしてる。エンジニアだったので人ともあまり話すことがなかったが、たまに人と話すことがあったときはオロオロしながら会話していたあの頃の俺よりしっかりしている。
ただ、コミュ障の俺はキョドってしまい、そのままシスターのところまで逃げてしがみついた。
仕方ない。他の人とコミュニケーションをとること自体あまりなかったから……。
「あらまぁ……ふふ。まぁちゃんと喋れるようになってからもあまり人と話さなかったものね。これから仲良くするのよ?」
シスターはそう言うと頭をなでてくれた。
シスターに頭を撫でられると何故か落ち着いた。さすがシスター。
その日を境に俺の周りはにぎやかになった。
ご飯を食べるときも、勉強するときも、遊ぶときもカリンが一緒にいた。
おかげでカリンとは普通に話せるようになった。
カリンは魔法がすごく得意らしい。しかも回復魔法という聖魔法でも上位の魔法を使える珍しい人だった。
教会はけが人・病気の人を魔法で治す治療院を兼ねていたので、カリンが魔法を使って人を治した時、シスターは驚いて腰を抜かしていた。
他にもカリンは俺に色々教えてくれた。
言葉だったり、簡単な計算方法だったり(前の知識があったのでほとんど無意味だったが……)を勉強時間に一生懸命教えてくれた。
今日は10月10日だ。
カリンの誕生日が10月22日だったのでなにかプレゼントができないか考えていた。
教会の裏にいると、何故かカリンにバレるため、ここ最近は街から出て少し歩いた森の入口の切り株に座って色々していた。
一応ここは町の外ということもあって安全のために哨戒魔法を使っている。
「なんかいいプレゼントない―?」
わからなかったのでゲーショに聞く。
「ハイハイハーイ!おっとマスター!恋愛相談は受けるけど成就法は……」
「わかってるわかってる。プレゼント何がいいかなぁって。」
「プレゼント!!いいねいいねー。前コボルトキングを倒したときにそいつが持っていたアクセサリーの石と貴金属系のインゴット使って刀鍛冶スキルを利用してアクセサリーとかどうだい?」
「いいねそれ!」
早速取り掛かる。
……取り掛かる前に魔法をまた新しく作った。
『アクセサリー作成』刀鍛冶スキル必須。インゴットを使用してアクセサリーを作る。デザインは頭の中でデザインした物をそのまま制作することが可能。
これでなんとかなるのかな……そうおもいつつ、まずはコボルトキングが持っていたアクセサリーの解析・分解だ。
鑑定魔法でアクセサリーの鑑定を行う。どうやら持ち主等は現状ないのか俺の名前になっていた。
この国の法律では、武器類は手に入れた人のものになるが、アクセサリー等は盗品の可能性もあるため、鑑定の魔法やスキルを持っている人間が鑑定を行い、盗品じゃないと判断されたもののみ所有が認められる事になっている。
盗品だった場合でも半年持ち主が出てこなければ、所有者の権利は手に入れた人になる。
どうやらこのアクセサリーはコボルトキングが自分で作ったものらしい。
コボルトでキングなのに手先器用だなぁと思いつつ鑑定を進める。
金とプラチナの合金でできており、石はファイアオパールだった。
早速分解すると、金とプラチナは1つづつインゴットになり、ファイアオパールは単体で残った。
カットされている状態だったので非常にありがたい。
またオパールは10月の誕生石だよとゲーショは教えてくれた。
心のなかでゲーショイケメン!!と思いつつ、色々デザインを考えていると、ゲーショが話しかけてきた。
「あのネ。マスター。道具が必要……なんだよねー。刀鍛冶だからねぇ……少なくとも台とハンマーは必要かなぁ……」
そう言うとチラッチラッとこっちを見ながら何かを言いたげだった。
「ハンマーの柄が必要だから気が必要だし、盾とか槍を分解しろってこと?」
「イエス!そのとおり!さすがマスター!」
言えばいいのにと思いつつも分解をする。
運が良かったのか石樹でできた槍と盾があったので分解を行い柄に使えるようにした。
石樹は名前の通り石のように硬い木で盾や槍の素材として人気があるようだ。
オリハルコンとミスリルのインゴットを1つづつ用意、更にボアキングのコアも用意した。それをファイガの魔法を使って溶かす。
すると目の前で溶けたオリハルコトンとミスリル、ボアキングの核が空中に浮かび融合した。更に頭の中でハンマーの形を想像するとその形になった。暫く待つと固まってきたので、最後に石樹の素材をそこに当てはめるとハンマーになった。ハンマー用の台は鋼鉄とミスリルのインゴットを2個づつ、オリハルコンをそこに1個入れた。
「Oh!!マスター!!あんた最高!!完璧なハンマーと台じゃない!!すんばらしい!!」
ゲーショが褒めてくれた。
そのまま何をプレゼントしたらいいかを相談すると胸元のリボンを止めるブローチみたいなものがいいんじゃないかとゲーショが教えてくれたので、ブローチを作ることにした。
モチーフのイメージはハルがくれた竜が宝石を守っている形のものにすることにした。
使用する金属は白金2個、ミスリル1個オリハルコン1個、コボルトキングのコア1個だ。
彫金の技術ないけどおれできるの?と思いつつも素材を合わせてファイガで溶かす。
そして溶けたものをさっき作った台の上に乗せてハンマーで叩くと頭の中でイメージした形通りにできた。
そして最後にファイアオパールを埋めると完成だ。
一応鑑定してみる。
「・・・ナンジャコリャ?」
思わず変な声が出た。
プラチナ50%、ミスリル25%、オリハルコン25%特殊能力 HP50%増加、物理ダメージ30%カット、魔法ダメージ70%カット、土魔法威力50%アップ
ゲームとかにあったらチート武器とか言われそうなそんなレベルのものだぞ。
と思っているとゲーショが答えてくれた。
「まぁ今回はいい素材だらけだし、それにマスターの愛が詰まってるからねぇ……やっぱり愛っていいねぇ」
何じゃそりゃ?と思いつつ完成した出来が凄く良かったのでこれをプレゼントすることにした。
あとはどこで入手したかとかを考えておかないと……とそんな事を考えながら教会に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます