016(チームナイン)
ーー次の日の朝。バサラはチェーンを装備してから、フライングバイクで基地に出勤する。
バサラはフライングバイクを基地の駐輪場に停めて、中に入る。オフィスに行くと、キノが先に来ていた。デスクに座ってる。
「バサラ、来い。見込みのある奴を1人見付けたぞ」
キノは何やらテンション高めだ。
「俺は2人だよ」
バサラは、キノのデスク前に行く。
「何!? 本当か!」
「優秀なクラッカーと金密輸の件で組んだ奴」
「犯罪者じゃないか」
「キノさんは誰をスカウトしたの?」
「聞いた事ないか? アメリカ軍特殊部隊〝チーム9〟のチリー・ジョーを」
「たしか、純血なのに〝ワープ〟を使ってテロリストを制圧するって奴? キノさん、知り合いなの?」
「私が、アンタレスニュージャージー支部に居た時の同僚だよ。連絡を取ったら快諾してくれた」
「すげえじゃん。俺がスカウトしようとしてる奴らとは格が違う」
他の隊員がオフィスに出勤してきた。
「バサラ、場所を変えよう」
バサラとキノは給湯室で続きを話し合う。
「チリーにはアメリカでメンバーを選抜するよう頼んでみた」
「心強いな。トラピストの使徒のトップシークレットを盗み出すんだから、クラッカーが要ると思ったけど、強行突破できそうだな」
「いや、いくらチリーといえども、それは無理だ。ワープの飛距離はせいぜい10~20メートルだからな」
「母船に潜入はダメか」
「さっき言っていたクラッカーをハッカーに改心させることはできないのか?」
「できると思うよ。前科を帳消しにしてやるって言ってあるから」
「それは警察に権限があるんだぞ」
「織田長官に圧力を掛けてもらうよ」
ガチャ。給湯室のドアが開いた。
「バサラさんとキノさん、何やってるの? こんな所で」
「なんだ、牡丹か」
「なんだって何よ、全く。それより、昨日話してた地球を救うってどういう事?」
「キノさん、説明を頼む」
「牡丹、よく聞いてくれ。宇宙人の深層深部の情報を盗み出す。織田長官の直令だ」
「盗み出して、どうするの?」
「恐らく、地球寒冷化を阻止しようと、上層部が重い腰を上げたんだろう」
「私は何をすればいいの?」
「牡丹は情報処理だ」
「えー、たまにはドンパチしたい」
「また今度な。トラピストの使徒がインゴットを集めている本当の理由も調査しないと。信用できる人以外に言うなよ」
「紅家は華族の末裔よ。道理は通すわ」
「そうだったな」
「キノさん、時間だ。そろそろ通常勤務に戻ろう」
「ああ。牡丹、くれぐれも宜しくな」
「うん、任せて。私はコーヒー、コーヒーと」
バサラとキノはオフィスへ戻る。
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