012(天才肌)
「ほう……。ハイブリッドはまだ旧式のチェーンを使ってるのか」
バサラはチェーンをデスクに置きっぱなしだった。
「別にいいだろ」
「新型のチェーンなら死傷者を出さずに済んだかもな。旧式でせいぜい頑張りな〝プロトタイプさん〟」
そう捨て台詞を吐き、木村はオフィスから出ていった。
バサラはやりきれない気持ちでいる。混血に向かって、プロトタイプさんというのは、出来損ないって意味だ。
すると、バサラのデスクに牡丹が来た。
「バサラさん、悪く思わないでね。実は木村中尉の弟さんが、あの爆発テロで亡くなってるの」
「何!? 木村の弟が、あそこに居た?…………警察官だった?」
「バサラさんにも弟が居るでしょ? だから、解ってあげてほしいの」
バサラは21歳の女の子にフォローされる。
「人間の兄弟と人造人間の兄弟なんて、似て非なるものだよ。まあ、牡丹の言いたい事は分かった」
木村が、バサラへの風当たりを強くしていたのは、弟をテロで亡くした。その場に、バサラも居た。
「あっ、ごめん」
「別にいいさ。純血だろうと混血だろうと、目指す所は同じだ」
「ですね。そういえば、何を書いてるの?」
「顛末書だよ」
「ああ、やっぱり。減給?」
バサラは暫し、考える。そして、話す。
「減給はなし。謹慎もない。逆に地球を救うかもしれない」
「ぷっ。何それ」
牡丹には何が何やら解らないようだ。
「牡丹の力も役に立つかな? キノさんに相談してみよう」
「何を始めようっていうの?」
「だから、地球を救うのさ。詳しくは、キノさんに聞いて。この後に飯でもどうだい?」
「サラッとデートの誘い? また今度ね。でも、地球を救うっての、面白そうね。ワクワクしちゃう。それでは、お先に失礼しま~す」
牡丹も帰って行った。バサラは窓から外を見ると夕焼けだった。
ーーバサラが高層マンションの自宅に着いたのは、夜の21時頃だ。せっかくの休暇が台無しになってしまった。
ピピピ。バサラの腕時計型ウェアラブル端末に、キノさんからメールが入った。
『今日で休暇は終わり。明日から通常出勤してくれ』
バサラはもう少し休みたかったが、仕方ない。
バサラはリビングで現在は生産されてない、古いチェーンを装備してみる。レストア品でも悪くない。脳波とのシンクロも良好。新型のチェーンを扱える奴と違って簡単にバージョンアップは出来ないが、徐々に馴染んでいく。
「俺のデジタル統制力ならいける!」
バサラはチェーンを外して、ニュースを観ようとする。3日前の爆破テロ以外の情報が欲しかった。
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