終章-4:マヒコの一面と、作戦会議

 メイアが去った後、舞子も皮椅子を立つ。

「じゃあ、私も一度家族のところに戻りますね?」

「ああ。3階と4階の社宅階に泊まれる場所がある。メイア達が良く知ってる筈だ。メイアと勇子、空太が食堂に揃えば、3人に案内してもらって、自分達の家族を移動させるといい。いつまでも食堂にいたんじゃ、落ち着かんだろ?」

「お気遣い、ありがとうございます」

 そう言って居間を出ようとした舞子は、ふと思い出して自分の〈余次元の鞄〉へ手を突っ込んだ。

 そして、意を決するように話を切り出す。

「あ、あの! 命彦さん……これを」

 舞子は、サラピネスの攻撃を魅絃が受けた時、偶然手で掴んだお守りを、命彦に差し出した。

 命彦は、舞子が差し出した、袋が酷く破れているお守りを手に持って問う。

「これはもしかして、母さんがいつも身に付けてたお守りか?」

「そうみたいね。私が改良した〈転移結晶〉の欠片もくっ付いてる。確かに母さんのものよ」

「どうしてこれをマイコが持っていたのですか?」

 ミサヤが問うと、舞子が少し俯いて答えた。

「実は、魅絃さんが神霊魔法攻撃を受けて倒れた時に、偶然私の方へと飛んで来まして。地面に落とすと、そのまま瓦礫に埋もれて見失う気がしたので、思わず手で掴み取ってしまったんです」

「そうだったのか……ありがとう舞子。母さんに代わって礼を言う」

「い、いいえっ! 反射的に掴んでしまっただけで。それに、持っている時に少しだけ袋が破れてしまったというか、破れていた部分が広がってしまって……申し訳ありません」

「頭を上げろよ、舞子。これは一応、身を守るための装身具型魔法具だ。母さんが攻撃を受けた時、役目を果たしてすでに破損していた筈。気にする必要はねえよ。おっと!」

 命彦が座卓の上に魔法具のお守りを置こうとした時、破けた袋から3枚の紙が座卓の上に飛び出した。

「これ、写真みたいね? 映像媒体で残すのが一般的である今の時代に、紙媒体で残してるとは。随分昔っぽさが感じられるけど……この寸法だと、わざわざお守り袋に入るよう、本来の画像を縮小化したのかしら? ……え、待って。この写真の女性はもしかして?」

 写真を見て驚く命絃と顔を見合わせ、命彦も少し目を丸くしつつ、首を縦に振った。

「ああ。多分母さんが家族として想う……故人達の写真だろう。俺の実母に、母さんの実姉と伴侶の写真もある。姉さんにとっては、叔母さんと親父さんの写真だね」

「ええ。私が生まれる前に死んだ、ぶっちゃけ話に聞くだけの見ず知らずの叔母と父親だけど。母さんたら、いつまでも引きずってるのねぇ? 10年以上経ってるんだから、もうそろそろ割り切ってもいいと思うんだけど」

「それだけ愛情深いんだよ、母さんは。家族と思うからこそ、この3人のことをいつまでも憶えていようと、決して忘れまいと、肌身離さず持ってたんだろうさ」

「ふむ。ミツルの意図はどうあれ、結果的にこの魔法具のおかげで、弱体化しつつも十分に殺傷能力が残っていたあの神霊攻撃魔法が、致命傷で済んだのですね? さすがに即死していれば、普通の治癒魔法も効きませんから。……もしこの故人達の想いが、ミツルを守ったのだとすれば、感慨深いことです」

 ミサヤが写真を見詰めて感傷的に言うと、命彦が子どものように頬を膨らませた。

「アホらしい、死人に生者が守れるかよ。母さんが作った魔法具が、母さん自身を守っただけだ。その魔法具に、偶然写真達が入ってた。それだけだろ? 母さんが生き残ったのは、母さん自身の力だ。故人が働きかける要素がどこにある? その写真に残留思念が宿ってるとか言うんだったらまだ分かるが、あいにくそれはただの写真だ」

 ギラついた雰囲気が失せ、一瞬舞子の良く知る命彦が顔を出した。

 子どものようにどこかムッとした様子で、否定を重ねる命彦。

 その命彦を、ニヤついて命絃とミサヤは見ていた。

 舞子も命彦の心を察し、くすりと笑う。

 自分が救えず、本来であれば死んでいる可能性が高かった母を、間一髪、故人の写真が入った小さい魔法具のお守りが、救っていた。この事実に、どうやら子どもじみた対抗意識を、命彦は抱いているらしい。

 しかし、実母の写真をじっと見詰めていた命彦が、やがて認めるようにため息をついた。

「……まあ、今回はあんた達に助けられたと思っといてやる。けど次はねえ! 母さんを守るのは、魂斬家の人達を守るのは、この俺だ!」

 命彦が写真達に真剣に宣言する姿を見て、命絃達が笑う。

 当人が至って真面目に言うがゆえに、面白さが際立った。

「故人の写真に宣言してどうするのよ?」

「決意表明でしょうね、可愛らしいことです。うふふ」

「ミサヤ、戦士の主に可愛らしいとか言うんじゃねえ! ここは多分、格好良い場面だ!」

「はいはい、分かっていますよ、我が主様」

「分かってねえだろ! 子ども扱いして抱き締めるのはよせって」

「ミサヤ、ズルいわよ! あたしもする! よしよし良い子ねえ……」

「姉さんもやめいっちゅうに! 条件反射で体から力が……あふ、天国の感触が両頬に」

「ぷふふふ。命彦さんの顔、ユルユルで面白いです」

「ひ、人の顔を見て笑ってんじゃねえ!」

「はーい、それじゃあ私も失礼しますね?」

 命彦が命絃とミサヤにもみくちゃにされる様子を見て、堪え切れず噴き出した舞子は、そのまま笑顔で別荘階の居間を出た。

 餓狼のように野性味のある表情も、いつもの緩い表情も、どちらも命彦自身の持つ一面である。

 命彦の雰囲気に違和感を感じたのは、舞子が命彦の見知らぬ一面を見たがためであった。

 突然別人のように見えた命彦に、やや戸惑っていた舞子だったが、別人のように見えたのは、自分が命彦の表情や雰囲気を憶え、それを読み取れているからであり、命彦が普段は隠している一面を、自分に見せてくれているためでもある。

 そのことに気付いて、舞子はフッと笑みを浮かべた。

 命彦との信頼関係が着実に形成されつつあることを感じ取り、舞子は嬉しそうに別荘階の廊下を歩いて行った。


 舞子が別荘階の居間を出て行った後、命彦は姉達から解放されて、空気を切り替えるために咳払いした。

「うおっほん! イチャコラしてる場合じゃねえ。今から作戦会議をするぞ、2人とも?」

「うふふ、分かったわ」

「はい。今後の予定が決まったと言っても、それはこういう結果を出すという、目的が定まっただけですからね? その目的を達成するために、具体的にどうするかについてはまだ決まっていません。眷霊種魔獣を討滅するという結果を求め、それを目的に掲げる以上は、どうやって倒すのかという手段についても、当然考える必要があります」

 命彦が人化したミサヤの言葉に、首を縦に振った。

「ああ。本当は俺だけで眷霊種魔獣を倒せれば一番いいんだが、それは相当難しいことだと思う。神霊魔法を使うメイアの手を借りたとしても、恐らく現時点での勝率は、多く見積もっても2割ほどだろう」

「メイアの神の力を借りても、そこまで勝率が低いの?」

 命絃が座椅子に預けていた背を浮かし、驚いた表情で言うと、命彦が渋い表情で縦に首を振って語る。

「俺が戦って感じた力からの判断だから、根拠はって聞かれたら困るんだけど、それでも《戦神》を使用した俺と、《神降ろし》を使用したメイアを、あの眷霊種魔獣は同時に相手取れる気がする。同じ神霊魔法を使えても、メイアとは天と地ほどの練度の差を感じたんだ。それこそ、梓さん以上の力を感じた」

「関西地方を守護する【神の使徒】の、梓叔母さん以上の力ねえ……そう言えば、その梓叔母さんは、《戦神》を使った命彦と、《神降ろし》を使ったメイアを、昔同時に相手して勝ったことがあったわね? 勿論、《戦神》の効力は使い手の精神状態によって相当幅があるから、一概に同じように考えるのは難しいと思うけど……」

 顎に手を当て記憶を手繰たぐるように命絃が言うと、命彦も苦笑して応じた。

「ああ。確かに効力の点では全く同じとは言い難い。眷霊種魔獣相手に使った《戦神》の方が、俺の精神が怒りに振り切ってる分、明らかに戦闘力が高いだろう。ただ、それでも同じ《戦神》を使って負けたことは事実だ。その過去の経験と梓さんの力も、あの眷霊種魔獣の力を見極める判断材料にしてるよ」

「ふむ。マヒコが実際に戦ってみた感覚とこれまでの経験から、そう判断したのであれば、恐らくそのとおりでしょうね? マヒコとメイアに、私とマイトが手を貸しても、勝率は上がりませんか?」

「上がることは上がるだろうが、恐らく現状のままじゃあ勝率3割を超えるかどうかだろ? それだけの力の差があると、俺は思ってる。魔法による接近戦も砲撃戦も、一流以上で隙がねえ上に、こっちの使う魔法を瞬時に理解して欠点を見付ける洞察力や、精神状態を見抜いて的確に煽って来る思考力もある。その上で、圧倒的効力を持った神霊魔法を、無尽蔵の魔力に物を言わせて、ほぼ瞬時に使って来るんだ」

「私達が援護しても、勝率3割か。3回勝負で1回勝てるかどうかね? 案外イケそうにも思うんだけど……」

 命彦の眷霊種魔獣に対する評価に呆れつつ、希望を込めて命絃が言うと、命彦が首を横に振った。

「いや駄目だ。運良く勝てたやギリギリ勝てたじゃあ、戦闘終了後に俺達の誰かが欠けてる可能性が高い。全員で確実に生き残るため、勝率は最低5割か6割は欲しい。確実に勝てるとは言えねえまでも、勝てる見込みの方が高いっていう、勝つための切り札、方策を見付ける必要がある。俺達は勝つべくして勝つ、そうだろ?」

 命彦の言葉を聞き、同意しつつミサヤも考え込む。

「そうですね。メイアがある程度相手の神霊魔法攻撃を相殺したとしても、マヒコの言う練度の差から、恐らく全ての魔法攻撃を相殺し切ることは難しいでしょう。相応に神霊魔法攻撃が私達にも飛んで来ると考えるべきです。それに耐えられるか、あるいは瞬時に避けられるかどうかが、勝敗の分かれ目。言うのは簡単ですが、行うのはとても難しいでしょうね? 確かに私達だけで挑むのは愚策です。もう少し戦力が必要でしょう」

「眷霊種魔獣に勝つ切り札か……あ、物凄く単純だけど、味方を増やせばどうかしら? 確かお祖母ちゃん達が眷霊種魔獣を倒した時は、数十人の一流の魔法士達で袋叩きにした筈よ?」

 命絃の思い付きに、命彦はまた首を横に振った。

「学科位階が6の戦闘型魔法士である梢さんや勇子、空太はともかく、それ以下の実力である有象無象の魔法士が加勢に来れば、死体が無駄に増えるだけだ。一流の魔法士の加勢は欲しいが、実力者達がほぼ関東や九州に行ってる現状じゃ、残ってる魔法士は学科位階5以下の者がほとんど。死人が増えれば、その分メイアの心が動揺して戦意が削がれ、勝率を落としかねん。単に味方を増やすだけの策は良くねえ気がする」

「味方を増やすにしても、一定以上の実力で足切りにすべきということですね? しかしそうすると、依頼所に所属しており、今の三葉市に残っている一般の魔法士達を、戦力として使うのは難しいかと。実力が不足していますからね。軍や警察の魔法士であれば、学科位階6以上の魔法士が、まだ相応に残っていそうですが?」

 このミサヤの発言にも、命彦は首を横に振った。

「軍や警察の魔法士は、俺達の好きには動かせねえよ。その意味じゃ、あっちの手は借りられん。軍や警察の力をアテにするんだったら、もう最初から眷霊種魔獣の対応を全て任せるべきだ。俺達は自分達の都合で、いや、ぶっちゃけ俺の我がままで、眷霊種魔獣と戦おうとしてる。都市のために戦う軍や警察の魔法士に、俺の都合で力を貸せとか、虫の良いことはとても言えねえよ」

「その気遣いは理解できますが、しかし……目指す勝率が5割から6割というのは、どうにも遠い目標です。用意する切り札が、複数必要かと思われますが?」

「勿論分かってる。色々と考えたが、まずは当然の如く、俺達の勝率を上げる切り札が必要だろう。俺達自身が今以上に戦える力を身に付ける必要がある。その上で、相手の眷霊種魔獣の勝率を下げる切り札もいる。眷霊種魔獣を弱体化させるんだ」

 命彦が剣呑さをまた瞳に宿して言うと、命絃はすぐに理解した。

「お祖母ちゃん達が使った手ね? 魔法的状態異常と呪詛による弱体化でしょ?」

「ああ。状態異常の方は《陰遁・影縫い》以外、俺もあんまり使った経験がねえから、今回眷霊種魔獣を弱体化させるのは、主に呪詛を使うとしてだ。まず一番の問題は、どういう呪詛だったらそれができるか、だろう」

「そうよねぇ。攻撃魔法の状態異常にせよ、儀式魔法の呪詛にせよ、普通にかけても神の魔法防壁や魔法力場で、簡単に防がれてしまうわ。理想は、眷霊種魔獣が使う神霊結界魔法や神霊付与魔法の内側で、状態異常や呪詛の効力を発動させることよ」

 命絃が言うと、ミサヤが難しい顔をした。

「言うのは簡単ですが、結界魔法の魔法防壁はともかく、付与魔法の魔法力場は肉体をピッタリ覆う膜ですよ? それのさらに内側というと、もう相手の体内で呪詛を発動させる、という方法しか残りませんが?」

「……いや、それしかねえと俺も思う。外部から儀式魔法で呪う通常の呪詛は、どうしたって神霊魔法に妨害されるだろう。瞬時に思ったとおりの魔法を具現化する、神霊魔法系統のあの魔法展開速度は、他の魔法系統と一線をかくす。それが呪詛だと分かった時点で対抗策を取られるのがオチだ。下手をすれば使う暇さえ与えてくれまい」

 命彦が自分の〈余次元の鞄〉を持って来て、プルンとした粘液の入った小瓶を取り出し、机の上に置いた。

「この〈悦従の呪い蟲〉のように、それ自体が呪詛の儀式魔法として機能する呪詛物を、眷霊種魔獣の体内へ埋め込む方が、遥かに妨害されにくく、呪詛をかける点では確実性が高い筈だ」

「それじゃあもう、〈悦従の呪い蟲〉を使うことにする? すでにモノがあるわけだし」

 命絃の発言を聞いて、命彦は苦笑を返した。

「俺もできればそうしたいが、多分こいつじゃダメだと思う」

「どうして?」

 不思議そうに問う命絃に、ミサヤが命彦に代わって懸念を吐露とろした。

「〈悦従の呪い蟲〉は宿主の体内に潜み、同化して、魔力の気配を感知してから、初めて呪詛として機能する魔法生物です。眷霊種魔獣であれば、この異物を体内に仕込まれた時点で、神霊治癒魔法を瞬時に使って、全身の時間遡行くらいしかねません」

 ミサヤの言葉にハッとする命絃。姉が懸念を理解したことを表情で察し、命彦も口を開いた。

「宿主と一体化する前に全身の時間遡行を喰らえば、〈悦従の呪い蟲〉を仕込む以前の状態に、身体が戻される。異物を埋め込まれたという結果自体を、時間遡行で消失させられてしまうわけだ。幾ら俺達の最高傑作である〈悦従の呪い蟲〉でも、同化する前に叩かれれば無力。呪詛としては機能しねえよ」

「そのとおりです。今私達が求めるべき呪詛物は、体内に埋め込まれると同時に、眷霊種魔獣の思考を乱すほど、神霊魔法の行使を阻害するほどの、極めて高い即効性と呪詛の効力を持つモノ。残念ですが、〈悦従の呪い蟲〉は呪詛の効力はともかく、呪詛の発動までに時間がかかり過ぎる。宿主に同化するまで十数秒の時間差があるため、初動が遅く、候補から外れてしまいます」

 ミサヤが言い終わると同時に、命彦が思案顔で言う。

「ただまあ、そういう呪詛物には1つ心当たりがあるだろう、俺達は?」

「心当たり? ……あ、お祖母ちゃんの持ってる[陰龍の爪]ねっ!」

「そうだよ。祖母ちゃんの呪詛研究対象であり、10年もの間、その呪いの力を高めて濃縮したアレだったら、さしもの眷霊種魔獣でも弱体化する筈だ」

 命彦の言葉に命絃がうんうんと首を振る横で、ミサヤが冷静に言う。

「しかし、アレの使用には問題が2つあります」

「ああ。1つ目の問題は、祖母ちゃんの説得だ。呪詛の研究対象としては、[陰龍の爪]はある意味最高級の一品。これまで廃棄しようって散々提案しても、首を横に振り続けたあの祖母ちゃんを、どうやって説得するのか。そこが問題だ。最終的には、呪詛物も眷霊種魔獣ごと《魂絶つ刃》で消し飛ばすつもりだから、そもそも失われることが前提。それを知って、あの祖母ちゃんが首を縦に振るかどうか。交渉は厳しいだろう。ふうー……」

 命彦がため息をついて頭を抱えていると、人化したミサヤが苦笑して言う。

「マヒコ自身が交渉しようとするから考え込むのです。私達やトトアも言ったでしょう? 一人でできることには限りがあると? 打って付けの人物がいるではありませんか。交渉には交渉の専門家を使うべきですよ?」

 ミサヤの言葉に命彦がハッとする。

「タロ爺か! そうだ、法務部の専門は取引先との契約交渉。法務部長のタロ爺に頼めば、祖母ちゃんを丸め込んでもらえるかも……タロ爺から祖父ちゃんに根回しもしてもらって、トト婆も補佐に付ければ、祖母ちゃんでも[陰龍の爪]を諦めるかもしんねえ!」

「三葉市の危機だもの。お祖母ちゃんだって、交渉次第では折れてくれる筈よ? これで1つ目の問題は、解決の糸口が見つかったわね」

「ええ。しかし2つ目の問題が残っています。呪詛物を用意することができたとして、その呪詛物を、どうやって眷霊種魔獣に気付かれぬよう、体内へ仕込むのですか? 呪詛物を持ち運ぶ私達も、触れてる以上は当然呪詛の影響を受けます。相手の体内に仕込むにしても、こちらが呪詛の影響下にあり、弱体化した状態では、簡単には仕込めませんよ? 相手が相手ですからねえ、万全の状態でも厳しいでしょう。そもそも呪詛物だと気付かれれば、それで終わりですし……」

「そう、そうだ。実はそれが、目下一番の問題だったりする」

 ミサヤの言葉に、命彦が渋い表情で小さく首を振った。命絃も眉根を寄せて天井を仰いだ。

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