終章 決戦

終章-1:研がれる刃と、いつも通りのありがたみ

 サラピネスとの戦闘後、命彦はすぐにミサヤから幾らかの魔力を分けてもらったにも関わらず、意思儀式魔法《戦神》による、過度の魔力消費から生じた重い倦怠感や脱力感によって意識を失い、3時間ほど眠っていた。

「……う、むうぅ」

 魔力が回復して目を覚ました命彦は、まだ少し身体に重さを感じたため、目だけを動かして今自分がいる場所を確認する。

(ここは……店の別荘階か?)

 見覚えのある天井から、【精霊本舗】店舗棟最上階、魂斬家の別宅にある寝室の1つで、自分が寝ていることに気付いた命彦。

 その命彦が、腕に温かみを感じて首を動かし、自分の身体を見ると、かけ布団がこんもりと盛り上がっていた。

 ミサヤと命絃が、命彦に身体に左右からピッタリとくっ付けて、眠っているのが感覚から分かる。

(魔力をまた分けてくれてたのか……ここ数日、2人には心配をかけてばかりだ)

 命彦がゆっくりと寝台から身を起こすと、かけ布団がめくれ、命絃とミサヤが目を覚ました。

「……あ、命彦、目が覚めたのねっ!」

『良かった、心身に異常はありませんか?』

「痛いところとか、違和感を感じるところはある?」

 命絃とミサヤが心配そうに命彦の身体に触れ、心を見通すように目を覗き込む。

 ミズチ戦で一度過度の魔力消費で昏睡し、回復したと思ったら、間を置かずにまた過度の魔力消費で意識を失ったために、命彦の身体と心について、2人はとても心配している様子であった。

 とりあえず安心させるため、いつも通りに命彦は答え、2人に心配をかけたことをまずびる。

「いや。特に異常はねえよ……それよりごめん。2人とも、また心配かけちまって」

 命彦が頭を下げると、子犬姿のミサヤが命彦に身体を擦り付けた。

『いいのですよ。家族を想うマヒコの気持ちは、私もよく理解しています』

「私もよ。命彦が無事でいてくれさえすれば、それでいいわ」

 ギュっと命絃が、下着姿で命彦を抱き締める。

 気付けば、命彦も姉と同様に下着姿であった。

 寝台の傍の椅子には、まるで洗濯したように戦闘時の土埃が落ちた、〈陽聖の迷宮衣〉と〈風地の具足羽織〉が、それぞれ2着ずつかかっている。

 命彦をここに運んだ命絃とミサヤが、精霊治癒魔法《水流の清め》で自分達ごと魔法具を丸洗いし、命絃が寝にくいと判断して、命彦の魔法具を脱がせた上で、自分も魔法具を脱ぎ、椅子にかけていたのであろう。

 いつもの命彦であれば、頬に感じる命絃の胸の感触に溺れているところだが、この時ばかりは違った。

 寝台に座って抱き締められた命彦の視界の端に、隣接する寝台で眠る魅絃の姿が映ったからである。

 昏睡状態の魅絃を見て、脳裏に一瞬、血しぶきを上げて倒れる母の姿を思い出した命彦が、目を閉じて問う。

「……母さんの、容態は?」

「お店のトトばあの診断では、身体的異常は全て回復済みだそうよ?」

『魔力消費の方も、マイトが魔力を分け与えたおかげである程度回復しており、このまま寝かせていれば、明日には目を覚ますそうです』

「私が命彦の回復に多くの魔力をいたから、命彦の方が早く回復したのよ? 感謝してよね」

『違います! マヒコの魔力回復は私も同時に行っていたので、その分ミツルよりも回復量が多いのです。まるで全てが自分の手柄のように言うのは、やめて欲しいものですね』

 眉根を寄せて額を突き合わせる命絃とミサヤの、いつも通りの姿を見て、命彦が安心したように表情を緩め、命絃を見た。

「姉さんはその……平気か? 俺と母さんに魔力を分け与えたんだ、疲れてるだろ?」

「全然平気よ。命彦と一緒に寝たおかげで、身も心も癒されて元気一杯だしね」

 命絃の明るい顔を見て、命彦が俯いた。

「……そう言ってくれると、救われるよ。姉さんの笑顔で、気持ちが洗われるからさ」

 命彦が静かに声を震わせる。拳をギュっと握り、歯を食いしばった。

「自分が守るって約束したのに……母さんを傷付けられた。その母さんのかたきも討てず、俺は無様に負けてちまった。おまけに、魂斬家の先祖代々の魔法まで見下されて……悔しくて、自分が腹立たしくて、母さんの顔がまともに見らんねえよ」

 握った拳の上に、命彦の涙がポタリと一滴落ちる。

 命絃とミサヤは顔を見合わせ、そっと命彦を抱き締め、身体を擦り付けた。

「それじゃあ、まともに見られるように、決着を付けましょう?」

『1人で挑み、負けたのであれば、次は皆で挑めばいいのです。そもそも相手は、神を味方に付けている眷霊種魔獣。マヒコの師であるトウジやユイトでさえ、他の魔法士達と徒党を組んでようやく勝てる相手ですよ? 1人で勝てると思うこと自体が誤りです。今回は負けるべくして負けただけ。であれば、次は勝つべくして勝てばよい。こちらも多くの味方の力を借りて、また挑めばよいだけの話です』

 2人の言葉に、俯いていた命彦がハッと顔を上げた。

 命彦の濡れた目尻を指で優しく拭い、命絃が言う。

「ミサヤの言うとおりよ? いつもお祖父ちゃんやお祖母ちゃんが言ってた口ぐせを、よーく思い出して?」

「……不屈の魂ある限り、魂斬家に負けはねえ」

『挫けても倒れても、また立ち上がるその不屈の魂が、最後の最後で勝ちを呼び込むんや。ですね?』

 命彦が祖父の刀士の口ぐせを言うと、ミサヤが祖母の結絃の口ぐせを思念で語った。

 命絃がくすくす笑う。

「ええ。たとえ一度膝を屈しても、負けから考えて勝つために手を尽くし、またすぐ立ち上がって戦う。そして、最後は勝つべくして勝つ。それが魂斬一族よ? 命彦はその魂斬一族の子。すぐ立ち上がるわ、そうでしょう?」

 命絃の言葉に命彦は目に力を取り戻し、しっかりと首を縦に振った。

「……ああ。ごめん、すぐ復活するから。このままじゃ絶対終わらねえから、今は少しだけ……心を整理する時間をくれ」

「ええ、分かったわ」

『はい。今は欠けた刃を研ぎ澄まし、新しい刃を作る時。待ちましょう、その刃が生まれる時を』

 命絃とミサヤの体温が、命彦に活力を与える。くすぶっていた魂が、今一度滾り始めた。

(もう負けねえ……魂斬家の者は、同じ相手に2度も負けん! 神の使いだろうが関係あるか! 次は仕留める、必ずこの俺の手で。あの眷霊種魔獣が見下した、魂斬家の魔法を持って絶ち斬り、突き滅ぼす!)

 命彦の決意と覚悟が、戦意を呼び戻した。

 自分の命と等価とも言うべき人を傷付けられ、全力を出すも撃ち負かされた命彦。

 文字通りの完敗により、命彦の心がひび割れていることに気付き、命絃とミサヤはただ傍に寄り添うが、2人は信じていた。

 いや、確信していた。この負けが、命彦をより成長させ、進化させると。

 命彦の欠けた心の刃が自力で再生し、より切れ味を増すことを、いつも傍にいた2人は確信していたのである。


 【精霊本舗】の6階、魂斬家の別荘階の居間で、ポマコンを起動して、メイアと【逢魔が時】についての報道を無言でじっと見ていた舞子は、居間の扉を開いて姿を現した、戦闘前に着ていた背広姿である命彦と命絃、人化したミサヤを見て、特にゆるゆるとした表情の命彦をまじまじと見て、心配そうに声を上げた。

「あ、命彦さん! もうお身体はよろしいんですか?」

「ああ。心配かけてすまん2人とも。俺はもう平気だ」

 完敗をきっし、精神的に弱っているだろうか、それとも荒々しく怒り狂っているだろうかと、目覚めた命彦の精神面を心配していた舞子だったが、いざ当の命彦と会ってみると、いつも通りののんびりとした空気を感じて驚いた。そして同時に、安心した。

 勿論、完全にいつも通りかと聞かれると、少し違和感はあったが、それでも日頃から見ている命彦の印象と今の印象はそこまでズレておらず、自暴自棄といった雰囲気も、弱々しい表情も皆無であった。

 眷霊種魔獣相手に怒り狂っていた時の、剥き出しの荒々しさや恐ろしさも、影を潜めている。

 表面上はいつも通りに見える命彦の様子を見て、鞘に納まった日本刀を連想した舞子。

 その安心する舞子の横では、メイアも同様の印象を受けたのだろうか、フッと頬を緩めていた。

「……見た限り、ホントに平気みたいね? 一応トト婆とソル姉を呼ぶわ。意識を失って寝込んでた間に、魅絃さんと一緒にトト婆に診てもらったんだけど、もう1度身体を診てもらって、診察結果を聞きましょう? その後に、命彦が寝込んでいた間のお店のことや、迷宮のことを話すわ」

「ああ。すぐに2人を呼んでくれ」

 メイアが自分のポマコンを操作して連絡すると、命彦が居間の皮椅子に座り、美女姿のミサヤと女性物の背広姿である命絃が、居間と隣接する台所へと入って行った。

「早く魔力を完全回復させるために、軽食を作るわね?」

「この後は夕飯もありますから、3時のおやつにはおむすびくらいがいいでしょう」

「ああ。ありがとう、2人とも。……うん? どうした舞子、俺達を見て?」

「あ、いえ、今まで通りの命彦さん達だと思っただけです。あははは……」

 命彦と台所の命絃達を交互に見ていた舞子は、笑って命彦の問いかけを誤魔化した。

 どういう時であっても、全くブレずに甲斐甲斐しく命彦の世話を焼こうとする命絃達を見て、舞子は少しだけ羨望の念を抱いたのである。

 3人の間には、余人を排する心の結び付きが感じられた。

 ミサヤと命絃が自分達の分も合わせて三角おむすびを10個ほど作り、飲料水と一緒におむすびを持って来て、3人が飲み食いしていると、居間の扉を開けて、営業部長のエルフ女性と舞子が初めて会う白衣白髪の女性が、姿を現した。

 おむすび4つをぺろりと胃に収め、湯飲みの水を飲んだ命彦が、2人を見て頭を下げる。

「ソル姉、トト婆、忙しいところをごめん。そいでまた心配かけちまって、ホントごめん」

「頭を上げてください、若様。若様が戦ったおかげで魅絃様が救われ、街の被害も抑えられたと聞いています。謝る必要はありませんよ? 眷霊種魔獣を相手に、立派に時間を稼がれたのです。誰にでもできることではありません。さて、若様にご報告したいことも幾つかあるのですが、とりあえず先に……トトア先生、若様の診察をお願いします」

「あいよ。んじゃ若様、楽にしておくれ。今から魔力を見るからね、気分を落ち着けとくれよ?」

「ああ、頼むトト婆」

 命彦の額に白衣の女性が手を触れて、魔力を確認した。

 その間に舞子は、命彦達から少し離れた位置の皮椅子に座るメイアの横へ移動し、小声で話しかける。

「メイアさん、あの白衣の女性は?」

「ああ、舞子は初めて見るわね? トトア・三島みしまさんよ。勇子の母親と同じシュラ族の鬼人で、私達はトト婆って呼んでるわ。【精霊本舗】の衛生管理部の部長さんで、ソル姉や親方と同じく、お店の創設当時からいる古株の従業員よ? 神樹家家令の紅葉さんと同じく、〔魔法医師〕学科を修了した魔法士であり、従業員の健康管理や傷病の診察と治療、あと、お店近隣の亜人家庭の訪問診察や治療も行ってる、ウチの店のお抱え医師ね? 人間も亜人も両方診れる、実はとても凄い人よ?」

「はぇー……〔魔法医師〕学科を修了した魔法士って、確か医師として活動する時は、人間専門か亜人専門かで、普通は分かれてましたよね? まだ全然お若く見えますけど、両方診察できるって凄いんですね、あの方?」

「ええ。見た目30代だけど、あの話し方からも分かるとおり、相当の年齢よ? この店の法務部の部長さんと結婚されてて、すでに数人のお子さんとお孫さんまでいるからね」

「き、既婚者だったんですか、あの方?」

「そうよ。まだお店が作られる前に、地球側へ次元転移したらしくて、その当時ですでに250歳を優に超えてたらしいわ。そして、命彦の祖父母である刀士さんや結絃さんに助けられ、2人の友人で法律関係の相談役だった今の法務部長に一目惚れして、口説き落としたとかどうとか聞いたわね? そう言えば、今の実年齢は300歳を超えてるって噂も聞いたわよ?」

 メイアが小声でそう言うと、白衣の鬼人女性が注意する。

「聞こえとるよメイア? 言っとくが、あたしゃまだ296歳だ。300は超えとらんよ」

「あ、ごめんトト婆」

 メイアが思わず苦笑して頭を下げると、エルフ女性が肩を落として首を振った。

「やれやれ、3桁年齢で誤差4歳でしたら、もういいでしょうに」

「いいわけあるかい! あたしゃまだピチピチの200代だよ? ねえ、若様?」

「いや、あのトト婆。ピチピチの20代みたいに言われても、返答に困るんだけど? 桁が10倍も違うしさ」

「10倍も10分の1も、あたしにとっちゃあほとんど同じだよ」

「いやいや全然違うからね。……トト婆が若いのは私達も十分に理解してるから、肝心の命彦の診察の方を今はしっかりしてね?」

 命絃が苦笑して言うと、ミサヤも問いかける。

「そうですよトトア。それで、どうですか、マヒコの容態は?」

「んむ、まず心配はいらんね? 魔力の方は相応に回復しとる。夕飯食ったら完全に戻るだろうさ? お嬢とミサヤ嬢のおかげだよ。良かったねぇ、若様?」

「ああ。2人にはいつも感謝してる。ありがとう」

 命彦が左右に座る人化したミサヤと命絃を見て、ぺこりと頭を下げると、命絃達が顔を見合わせて笑った。

「うふふ、改まって言われてもねえ?」

「ええ、いつもその気持ちは感じておりますから」

 命彦達3人が肩を寄せ合い、イチャついていると、白衣の鬼人女性が楽しそうに笑って言う。

「うひゃひゃ、いやはやおさかんで。はようええ子を作りんさいよ、若様?」

「またそれを言うか。もう少し待ってくれよ、トト婆」

「もう、気が早いわ」

「そうですよ」

 命彦が苦笑し、命絃やミサヤが照れたように命彦へ身を寄せた。

 3人の反応を見てため息をつくメイアと、困惑する舞子。

 舞子が、戸惑いがちに命彦へ問うた。

「こ、子どもって……命彦さん自身もまだ16歳で、子どもですよね?」

 世間一般の常識で命彦に問いかける舞子へ、白衣の鬼人女性が魔法士の常識を説明する。

「バカ言っちゃいかんよ、初めて見るお嬢ちゃん? 学科魔法士はその資格を取得した時から成人扱いさね。本人らが望めば、年齢的に未成年の男女でもすぐ結婚できるよう、法定もされとる。まあ、普通に考えりゃ早死にする職業だからねえ、早婚化してもいいから、さっさと産めよ増やせよ次世代の魔法士ってことさ」

「補足で付け加えると、学科位階が8や9の高位の魔法士は、当人達に合意がある場合に限り、一夫多妻いっぷたさい一妻多夫いっさいたふも認められています。優れた魔法的素養を、できる限り後世へ多く受け継がせるための、苦肉の策ですね?」

「まあ、批判は多いけど合理的ではあるのよね? 次世代に優れた魔法士をより多く残すという意味では」

 エルフ女性やメイアの発言も聞いて、舞子がポカンと口を開ける。

 どうやら、こういう面での魔法士の常識については、初めて聞いたらしい。

 その舞子を無視して、美女姿のミサヤが口を開いた。

「マヒコは16歳時点で学科位階が6ですから、遅くとも20代後半で学科位階が8に至り、合法的に一夫多妻を選択することができるでしょう。勿論、妻であろう筈のマイトが、第2夫人を認めれば、ですが?」

 ミサヤが命彦を挟んで横にいる命絃を見ると、間髪入れずに命絃が宣言した。

「絶対、ぜーったいに認めませんっ! 誰が認めるもんですかっ! 命彦の妻は私1人で十分よ!」

「そうでしょうね。まあ私は魔獣ですから、人間同士の婚姻契約はどうでもいいのです。愛妾あいしょうというか、人化した愛魔獣あいまじゅうとして、マヒコと子を作るつもりですしね? 種族を超えて愛する人の子を産める意味では、《人化の儀》は素晴らしい魔法ですよ。この魔法を修得していたおかげで、ユイトやトウジも、私とマヒコの関係を認めてくれていますし。……ああ、勿論マイトの本妻という立場は尊重しますよ、そういう約束ですからね?」

「くっ……そうね、約束は約束だわ。あんたが私との約束を守る限り、私もあんたとの約束を守ってあげる。すこぶる腹立たしいけれど、それで他の虫を避けられるんだったら、手を組む意味はあるわ」

 悔しそう言った命絃がほんの一瞬、素知らぬ顔のメイアとオロオロする舞子を一瞥する。

 ミサヤがその命絃と顔を見合わせ、首を縦に振った。

「結構です。それを聞いて、私も安心しました」

 水を飲もうと皮椅子傍の机にある湯飲みに手を伸ばし、姉の視線を完全に見逃していた命彦。

 その命彦を間に挟んで、ミサヤと命絃が女同士の約定を再確認した。

 目と目で通じ合っている様子の姉達に気付き、また姉達の約定についても聞いて、疑問を抱いていた命彦が思わず問う。

「その2人の約束というか密約について、当事者の1人である筈の俺が、全く知らねえんだけど?」

「ええ、知る必要がありませんからね?」

「命彦は黙って私達に任せとけばいいのよ」

「そ、そうですか……」

 冷めた目で言うミサヤと命絃に怖気づき、命彦はビクリと震えてガクリと肩を落とした。

 その命彦の様子を見て、鬼人女性がゲラゲラ笑う。

「あっははは! 早くも尻に敷かれてるねえ、若様? いやあ、いつも通り若様達をいじるのは面白いわ」

「トトア先生、若様で遊ぶのはしてください!」

「はいはい、分かった分かった。お堅いねえ、ソルティアは。暗い話題が多い時にこそ、色恋話でもして明るくすりゃあいいのに。まあ役目も終わったし、あたしゃそろそろ退散するよ? ……最後に若様、一言だけ言わせとくれ。あんまり無茶しちゃ駄目だよ? もっと周りを使って上手く立ち回ることだ。1人でできることには、自ずと限界がある。人間である限りはさ?」 

 年の功というものか。鬼人女性の命彦への助言は実に的確であった。

「……さっき姉さん達にも同じことを言われたよ。助言ありがとう、トト婆。胸に刻んどくよ」

 扉に手をかけて言う鬼人女性の言葉に少し驚きつつ、命彦は礼を述べた。

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