6章ー30:眷霊種魔獣の力と、駆け付けたマヒコ
廃墟と化した瓦礫の山が街路を塞ごうとも、多脚戦車達は確実に踏破し、目的地に到着する。
〈ツチグモ〉の1体、指揮官機が荒れた車道を歩き、魅絃達と眷霊種魔獣との間に立った。
魅絃達の眼前に位置する〈ツチグモ〉の、後部に設置された空間投影装置が起動して、平面映像が出現し、映像に映るミツバが頭を下げる。
『魅絃さん、遅れて申し訳ありません』
「いいえ、早かった方よミツバ。助かったわ。さすがは多脚戦車、瓦礫の山も余裕ね?」
『余裕とまでは言えませんが、多少移動に時間がかかった程度ですね』
「謙遜しちゃって。……ところでミツバ、軍や警察の魔法士はどこかしら?」
魅絃の言葉に反応し、舞子が〈ツチグモ〉達の周囲を見る。
「あ、ホントですね? 魔法機械達ばかりです、それも全部陸戦型の……」
続々と出現する小型多脚戦車達が、魔獣を威圧するように包囲するものの、魔法士と空戦型の都市防衛用魔法機械、〈オニヤンマ〉の姿は皆無であった。
『実は、魔法士小隊の展開に少々時間を取られています。相手が眷霊種魔獣ということで、とにかく逃げ道を塞ぎ、被害を低減できるように封鎖範囲を確立するため、軍と警察の魔法士達が今動いています。この場から200m圏内を完全封鎖し、住民の避難が完了後、すぐ駆け付けるでしょう。私の役目は、軍や警察の魔法士が到着するまでの間、封鎖範囲内で眷霊種魔獣を足留めし、魅絃さん達を連れ帰ることです』
「陸戦型の〈ツチグモ〉だけじゃ……それは多分無理よ?」
『百も承知です。しかし、奇襲を受けた時点で、こちらが無理を通さねばこの局面は打開できません。よって、今できる範囲でやるしかありません。せめて〈オニヤンマ〉は使いたいところですが、〈オニヤンマ〉は索敵能力が高いので、住民の救助に全て派遣してしまいました』
「そう。苦肉の策というわけね? 被害は相当出てるの?」
『はい。奇跡的に死者こそまだ出てませんが、重傷者多数、軽傷者無数で、行方不明者と要救助者も相当います。どちらかと言えば、戦場であるこの場にいた住民達の方が、早めに避難できている分、人的被害が軽微ですね? 他の地域では、突然無数の攻撃魔法が飛来したため、避難行動もほとんど取れず、多くの市民達が魔法弾や瓦礫に巻き込まれ、負傷しました』
平面映像上のミツバに渋い表情を返し、〈ツチグモ〉の指揮官機の陰から、魔獣の様子をうかがう魅絃。
余裕の表れか、はたまた関心を引かれたのか。眷霊種魔獣は戦闘行動を停止して、面白そうにニヤついて自分を取り囲むように移動する〈ツチグモ〉達を見ている。
「……商業地区は、迷宮防衛都市でも特に多くの人達が出入りしてるし、都市の外からもたくさんお客さんが来てるわ。この時間帯もお昼の買い物時で、人口密度が高まる時期。襲撃する側にしてみれば、こっちにより多くの被害を与えられる場所と時機だったわけね? それを意図して、あの魔獣が仕かけたかどうかは、不明だけど……」
「魅絃さんを狙っているようにも見えましたが、今のあの姿を見る限り、魔獣の目的がよく分かりませんね?」
舞子が魅絃を狙うように戦闘していた眷霊種魔獣の姿を思い出しつつ言うと、魅絃も思うところがあったのか、首を縦に振った。
「ええ。積極的に戦闘行動を取ったかと思えば、今はこちらの出方をうかがうように戦闘を停止してる。襲撃目的も不明のままよ? こういう時こそ、魔獣達との戦闘経験が多い軍や警察の魔法士がいて欲しいんだけど……」
魅絃がそう言った時である。眼前にいる指揮官機の〈ツチグモ〉が、後ろにゆっくり後退した。
平面映像上のミツバが言う。
『配置完了、仕かけます。魅絃さん、舞子さん、この機体の上に乗り、後退してください』
ミツバは会話している時から、魔獣に一斉攻撃を仕かけられる配置へ、〈ツチグモ〉達をずっと移動させていたらしい。
眷霊種魔獣を取り囲んでいた〈ツチグモ〉達が、不意に魔獣へと一斉に突進した。
都市内では魔法機械の持つ火器類の使用は制限されるし、そもそも科学兵器は相手が高位魔獣の場合、通用するかどうかいまいち不安が残る。
精霊付与魔法を封入された魔法機械の場合、科学兵器を使うよりも、魔法力場を活かした突進のように肉弾戦の方が、攻撃手段として魔獣に対し、遥かに有効であった。
眷霊種魔獣が追尾系魔法弾を無数に具現化し、瞬時に迎撃するが、封入された魔法術式は違うものの、高層建築物と同じく魔法防御機構を有する〈ツチグモ〉達は、被弾しても全く止まらずに距離を詰める。
追尾系魔法弾では少々火力不足だと気付き、集束系魔法弾に切り替えて〈ツチグモ〉を撃破する眷霊種魔獣。しかし、気付くのが遅かった。
魔獣の全周囲から高速で接近する〈ツチグモ〉達は、高層建築物の上からも次々飛び降り、一瞬で目前まで迫って魔獣の逃げ道をつぶす。
案の定、眷霊種魔獣は回避することを早々に放棄し、周囲系の精霊結界魔法を使って、〈ツチグモ〉達の突進を受け止めた。
薄ら黒く半透明で、半球状の周囲系魔法防壁が3重に展開され〈ツチグモ〉達を阻むが、〈ツチグモ〉達は壁ごと押しつぶすと言わんばかりにひたすら突貫する。
足の一部や体当たりで魔法防壁を殴打し、結界魔法を叩き壊そうとする〈ツチグモ〉達。
〔魔工士〕によって表面装甲は勿論、内部機構までも完全に魔法具化され、精霊付与魔法を封入された魔法機械達は、物理攻撃自体が魔法攻撃の性質を併せ持っている。
つまり、過信はマズいものの、魔獣相手の肉弾戦に関しては、魔法機械は結構良い勝負ができた。
眷霊種魔獣の展開した3重の周囲系魔法防壁のうち、2枚が〈ツチグモ〉達に叩き壊され、舞子が喝采の声を上げる。
「凄い! 魅絃さん、これだったら行けるかもしれませんよ?」
指揮官機の〈ツチグモ〉の上に座り、その場から離れつつあった舞子と魅絃。
希望を込めた舞子の言葉に、横に座る魅絃は冷静に、
「いえ……無理よ」
魅絃が言った矢先、突然空間が震える。平面映像上のミツバが警告した。
『
「くっ! 使うと思ってたわ、神霊魔法よっ!」
魔獣へ殺到して団子状態だった〈ツチグモ〉達が一斉に弾かれ、黒色の魔法防壁諸共に、街路や車道、瓦礫の山へ叩きつけられる。そして、魅絃と舞子は見た。
眷霊種魔獣が、メイアと同じくその背後に神霊種魔獣の姿を投影するのを。
「舞子ちゃん、降りて! ミツバ、舞子ちゃんを覆って!」
「はえっ! い、痛いです、魅絃さん!」
『了解しました』
危機を察知した魅絃は〈ツチグモ〉から舞子を引きずり下ろすと、〈ツチグモ〉の足の隙間に舞子を放り込み、自分は手を上に付き出して、一気に精霊結界魔法を多数具現化した。
「間に合って! 建て、《陽聖の円壁》……多重展開!」
詠唱を短縮して具現化された、4重の薄らと白く半透明で半球状の周囲系魔法防壁が、〈ツチグモ〉ごと魅絃達を包み込む。そして、衝撃が地面を揺らした。
ゴガガガガっと地面が揺れる。迫り来る魔法攻撃を見て、魅絃は2人の子ども達のことを思った。
(命彦、命絃、ごめん……母さん、ここまでかも)
舞子も〈ツチグモ〉の足の間から、白く半透明の魔法防壁の内側から、それを見ていた。
「う、そ……」
高い魔法防御力を有する魔法機械の〈ツチグモ〉達が、見えざる手で押し潰されるかのように、一瞬で破壊され、爆発する。天から落ちて来る風の圧力が、周囲にあった高層建築物を巻き込み、1機2機どころか、その場にあった数十機もの〈ツチグモ〉を一斉に押しつぶし、破壊したのである。
眷霊種魔獣の立つ半径100mの一帯だけ地面が陥没し、それまで無事だった建物も一瞬で瓦礫と化していた。
当然、その魔法の効力範囲内に、まだ魅絃達もいる。
ゴワンっと周囲系魔法防壁が揺れて、魅絃が苦しそうに顔をしかめた。
「くうっ! 短縮詠唱の効力低下が響いてる! ありったけの魔力を注ぐから、お願い……もう少しもって!」
「み、魅絃さん! た、助けて、助けてください、命彦さぁああーんっ!」
『舞子さん、気をしっかり持ってください!』
ゴォーッと激しい振動が結界魔法内部の空気を揺らし、ビシリと舞子達が見ている4枚の魔法防壁も、早速1枚目がひび割れて霧散する。
神霊魔法の魔法攻撃にも種類はあるものの、精霊融合魔法を使わずに、単一の精霊付与魔法や精霊結界魔法を使って、神霊魔法から身を守るためには、最低でも9種の魔法力場か9枚の魔法防壁による、魔法防御が必要だと言われている。
しかし、一般の学科魔法士が短縮詠唱時に具現化できる精霊結界魔法の魔法防壁は、3枚が限度と言われており、比較的扱いやすい精霊付与魔法の魔法力場でも、無詠唱や短縮詠唱で使えるのは4種が限度であった。
一流と言われる魔法士でも、短縮詠唱で具現化できる魔法防壁は、移動系魔法防壁に限ると5枚、周囲系魔法防壁に限ると4枚までと言われ、魔法力場も6種が限界である。
魔法の具現化に長い時間をかけられるのであれば、魔法士の能力にもよるが、9枚以上の魔法防壁や9種類以上の魔法力場を、独力で具現化することは可能であろうが、命のやり取りをしている戦闘時において、魔法の具現化にそこまで長い時間をかけることは非常に難しい。
そもそも神霊魔法は、脳裏で想像した魔法が一瞬で具現化するため、悠長に魔法防御を構築している間に、普通は命を奪われてしまう。
つまり、どう
当然のことだが、神霊魔法の魔法攻撃は多彩かつ高破壊力であり、魔法の制御も容易い上、神霊種魔獣の有り余る魔力を湯水のように使えるため、魔力切れも起こらず、一方的に攻撃が可能であった。
治癒魔法の効力も高く、一撃で即死させる魔法攻撃以外はほぼ無意味であり、結界魔法や付与魔法で2重3重の守りがある上、移動方法も空間転移による瞬間移動が基本であるため、普通の魔法攻撃では一撃必殺もほぼ不可能と、反則過ぎてドン引きするほどの戦闘力を有していた。
メイアのように未熟である神霊魔法の使い手でも、一度《神降ろし》を使えば、手負いとはいえ高位魔獣へ一方的に攻撃し、圧倒できるほどである。
神霊魔法の使い手が、一般の魔法士1000人分の戦闘力を持つと言われるのも、至極当然のことであった。
2枚目と3枚目の周囲系魔法防壁も、ひび割れて次々に霧散し、残る魔法防壁は1枚のみ。
規格外の魔法系統を使う眷霊種魔獣と魅絃は対峙し、今、その魔法攻撃を1人で受け止めている。
これは死の宣告を受けるのと、同義であった。
「くうぅぅううっ、もう駄目……砕かれる!」
遂に、最後の魔法防壁にもひび割れが方々に走り、砕けかけたその時。魅絃の豊満極まる胸元が輝いた。
「ふぅえっ!」
「ええっ!」
『……っ!』
魅絃がいつも首にかけて持ち歩いているお守り袋、その
「母さん、無事かっ!」
第一声で魅絃の無事を確認した命彦の頭の上で、現状を即座に把握したミサヤが、すぐに精霊結界魔法を展開した。
『結界魔法、多重展開』
人間以上の魔法能力を持つ魔獣でも、頂点に近い能力を持つ天魔種魔獣【魔狼】の力を十全に発揮し、ミサヤが砕けた魅絃の周囲系魔法防壁の内側から、合計9枚の周囲系魔法防壁を出現させて、神霊攻撃魔法を受け止める。
そしてようやく、振動と圧力は収まった。
「はあ、はあ、はあ……うっ!」
「母さん!」
宴会出席用の背広から着替え、魔法具を装備した臨戦状態の命彦達の姿を見て気が抜けたのか。
それとも、単に魔力の枯渇によるものか。顔色を失った魅絃が倒れかけるのを、命彦が受け止める。
「遅れてごめんよ、母さん」
命彦に謝られ、呆然とした表情の魅絃が口を開く。
「命彦に命絃、ミサヤちゃんも……どうしてここへ」
「警報が聞こえてすぐ、母さんに危険が迫ってるって、命彦が騒いでね?」
『無事で良かったですミツル。マヒコがミツルに危険が迫っていると言うので、戦闘の用意をしてから、ミツルが常に身に付けているお守り袋へマイトが付け足していた、魔法結晶の効力を使いました。精霊儀式魔法《空間転移の儀》を封入した、1対の小さい魔法結晶だそうです』
「私が手を加えた改良型〈転移結晶〉よ。魔法結晶の持ち主を、対の結晶の持ち主のところへ瞬間移動させるの。命彦に懇願されて、もしもの時のために私が作ったのよ? 実は私の分もあるわ。使い捨てだから、母さんの分はまた作ってあげるわね」
「対の魔法結晶は、俺が常に持ち歩いてる。今回ばかりは、ホント姉さんに助けられたよ」
「そうでしょ、もっと褒めて? 愛してるって100回言って?」
「幾らでも言ってやるさ、家に帰ったらね」
そう言って命彦は、白く透明がかったミサヤの周囲系魔法防壁の内側から、眷霊種魔獣を見上げた。
眷霊種魔獣は、命彦達の出現後、どういうわけか攻撃を控え、酷薄に笑いつつこちらを観察している。
その眷霊種魔獣を見る命彦の眼は、若干血走っていた。確実に怒っている様子である。
怒れる息子の横顔を見て、魅絃は途切れ途切れに問うた。
「魔法具の力で……ここへ。でも私……伝達系の探査魔法は、別に」
仮に緊急警報を聞いたとしても、どうやって自分個人の危機を知ったのかと、言外に問う魅絃へ、命彦が言う。
「声がしたんだ」
「声?」
「ああ。母さんの、俺を呼ぶ声がした」
それが全てと言うように語る息子。
魅絃は確かに、精霊結界魔法を多重展開した時、自分の2人の子ども達のことを考えていた。
特に、自分が死んだらどうするのかが心配だった命彦のことを、よく考えていたのである。
命彦の発言を聞き、魅絃はホッ安心したのか、穏やかに笑う。
「ありがとう、命彦。……命彦は時折、魔法士の常識を超える力を、発揮するわね?」
「母さん、言っとくけど、命彦は家族の危機について、凡そ分かるらしいからね? 別に母さんだけが特別とか思っちゃダメよ? 私が危機の時も、きっと駆けつけてくれるわ!」
自分で作った魔法具だからだろうか。命彦とこれまたお揃いの防具型魔法具を身に付けて、いつも通り嫉妬深い様子の命絃。
その命絃の言葉に触発されたのか、ミサヤも思念で語った。
『そうです。私が危機の時も、きっとマヒコは駆けつけてくれます』
2人の視線が魔獣を見続ける命彦に集まると、すぐに命彦が口を開いた。
「当然だよ。姉さんもミサヤも、母さんも、俺が守る。絶対に守る」
打てば響くとばかりに応じた命彦の言葉。感情を抑えて言う命彦のその言葉を聞き、現状も忘れて照れる命絃とミサヤであった。
その2人へ、呆気に取られてしばらく蚊帳の外だったミツバと舞子が、声をかける。
『そろそろよろしいでしょうか?』
「あのーお2人とも、現状をもう少し深刻に捉えてくださいよ」
「ああ、ミツバと……舞子、生きてたの? しぶといわね」
「今しぶといって聞こえましたよ! どうして残念そうに言うんですか!」
『はいはい、言いたいことは後で聞きますから、現状の説明を端的に行ってください。私の結界魔法でも、あまり安心できませんからね?』
視線を眷霊種魔獣に移し、ミサヤが思念で言うと、舞子も魔獣を見上げて語った。
「むー……まあいいです。現状説明ですが、突然あの眷霊種魔獣から襲撃を受けて、他の学科魔法士達と市民達を逃がし、どうにも魔獣に狙われてるっぽい魅絃さんが、囮役として今まで戦っていました」
「母さんを狙ってただと? あいつ許さん……」
殺意を纏い始めた命彦を気にしつつ、ミサヤが思念で問う。
『ミツバ、というか魔法機械の〈ツチグモ〉がここにいるのは分かりますが、マイコはどうしてこの場にいるのですか? 恐らくミツルであれば、すぐに避難するよう指示したと思うのですが?』
「えーと、単純に逃げ遅れました」
「ほほう? ってことは、母さんがここまで消耗したのは、あんたのせいってことかしら?」
この命絃の発言に、魅絃が途切れ途切れに抗議する。
「違うわ。舞子ちゃん、お手柄だったのよ? 一般市民を連れて……逃げようとする他の学科魔法士達へ、魔獣が攻撃したんだけど、舞子ちゃんが魔法散弾を叩き落して、守ってくれたの。……私も驚いたわ」
「母さん、無理してまで言わんでいい。舞子、母さんを頼む」
「あ、はい!」
魅絃を抱える舞子に、命彦が小さく言う。
「よくやった」
「……っ!」
褒められたことが余程うれしいのか、舞子の顔がパッと輝いた。
舞子から命絃とミサヤに視線を移し、命彦が言う。
「姉さん、ミサヤ、手を貸してくれ」
「任せて!」
『私もお任せください』
命彦は小さく首を縦に振ると、〈ツチグモ〉にも語りかける。
「ミツバも、力を貸してくれると助かる」
『当然です。人命尊重は人工知能の基本原則ですので』
「ありがとう。……映せ《旋風の眼》。そして包め、《旋風の纏い》と《火炎の纏い》、《地礫の纏い》と《水流の纏い》。最後に包め、《陽聖の纏い》」
全周囲を見通す魔法視覚を手に入れた後、薄い緑と赤、黄と青、白の5重の魔法力場を重ねて具現化し、6つの魔法を同時に使った命彦が、眷霊種魔獣から一切目を離さず指示する。
「ミサヤはこの結界魔法の維持を最優先にして、余力があれば俺の援護を頼む。姉さんは、この場から俺の攻撃に合わせて魔獣を攻撃してくれ。ミツバは、動ける魔法機械で俺達全員の援護と魔獣の撹乱を頼む。あと舞子、くれぐれも母さんを頼んだぞ?」
「はい……気を付けてくださいね」
ミサヤを肩に乗せて首を振った命彦は、〈ツチグモ〉と共に結界魔法の効力範囲から出た。
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