第3話クロノスの災厄
今年からこの学校に着任した大橋照子は、職員室で全治派と黒之派の争いについて頭を抱えていた。
「全治派の生徒たちは学級崩壊を望んでいないようだったけど、問題は黒之派の生徒たちね・・・。私が強く言っても完全に無視しているし、あれは完全に大人を舐めているわね・・・。」
大橋は一度全治に悪いイメージをつけ全治派を空中分解させようとしたが、結局は失敗し校長からも「二度とこのようなことが無いように!!」と、厳しく注意された。
「あの寡黙ながらも穏やかで優しい性格、質問が過ぎるという癖はあるにしてもみんなから人気なわけね・・。」
大橋は全治の事をよく知る機会として、五月八日に家庭訪問に向かった。その時玄関に出たのは、見るからに老夫婦だった。老夫婦は全治の父方の両親と言っていた。
「えっと、全治君の両親は留守ですか?」
大橋が尋ねると祖父は答えた。
「全治の父は、全治が三歳の頃に事故で亡くなりました。母はそれから後を追うように自殺しました。」
衝撃の事実だった・・・、全治君は両親を失いながらも真面目に頑張っていた、対立の中心人物として腫物扱いしていた自分が馬鹿だと思った・・。
「となると学級崩壊の元凶は黒之派か・・・、担任の松宮は上手く行っているかしら・・・?」
丁度そこへ、松宮が職員室に入ってきたので声をかけた。
「松宮さん、最近どうですか?」
「どうしたもこうしたもない、僕はあの生徒達を教える自信が無い・・・。」
松宮はため息をつきながら自分の机に座った、そういえばこの学校に着任してから松宮はいつもこんな感じだ。
「そういえば今月のレクリエーションは五年生でしたね、松宮先生の方はどうですか?」
「何とかさせることができたけど・・・。」
「ん?どういうことなの?」
「あいつら先生が決めた遊びを生徒がするのは間違っていると聞かなくて・・・、それで来週一週間小テスト無しを条件にさせることが出来たんだ。」
「まあ・・・教師を相手に取引なんて・・・。」
「あいつらは子供離れしている・・・もう教師辞めようかな・・・。」
大橋は松宮が情けなく感じた。
そしてレクリエーション当日、五年生の四クラスがドッジボール大会を行う事になった。トーナメント方式で、優勝したクラスは優勝旗(先生達が作ったお粗末な旗)がクラス内に飾られる。
「全治、絶対勝とうな!!」
「うん、頑張るよ。」
優勝目指して意気込む全治派に対し・・・、
「あーあ、また先生の道楽に付き合うのかよ・・。」
「仕方ないよ、これで小テストが抜きになるなら。」
と黒之派は完全にダルそうでやる気が無い。
「五年各組の皆さん、団結と己の力で優勝を目指してほしい。」
校長が宣誓を言うと、ドッジボール大会が始まった。全治のクラスでは全治が一人で五人もボールを当てて大活躍し決勝戦へ、黒之のクラスはやる気が無さそうな割には猛攻し相手クラスに圧勝した。そして今ここに全治派と黒之派の、全面対決が行われようとしていた。
「絶対黒之派には負けない、お前ら気合入れろ!!」
「ここまで来たら、優勝を目指して頑張るしかない。」
北野と全治がクラスを鼓舞させる、そして互いに礼をしてポジションに就き、試合が始まろうとした時だった・・・。
「何だ、この気配は・・・。何かとんでもないのが来る!!」
「フフフ・・・さあ、神のデスゲームが始まる。」
空に神々しい雲が現れたかと思うと、そこから神が降臨した。神はゼウスより若々しく、好青年のような印象だ。
「ほう、そなたが千草全治か・・・。確かにゼウスの力と同じものを持っている。」
「まさか・・・、あなたがゼウスの言っていたクロノス!!」
「如何にも、我が名はクロノス。封印したゼウスに復讐するためによみがえったのだ、そしてゼウスの力を絶つためにそなたを殺す。」
クロノスは黒之派の生徒達に自らの力を授け操り、自分の手下とした。無論、黒之は別である。
「全治を‥殺す。」
「全治を殺せ・・。」
操られた生徒たちは、ブツブツと殺意を呟いていた。
「戦うしかない・・・、みんな逃げて!!」
「わかった、みんな逃げろ!!」
北野の掛け声で、全治のクラスの生徒は逃げ出した。
「おい、しっかりし・・・。」
「松宮さん、どうしたんですか!!」
操られた生徒に声を掛けた松宮だったが・・・、
「先生、そんなことしたら・・。」
「全治は殺さなければならない・・。」
黒之が言う前に松宮は操られた。
「松宮さん、どうしたの・・?」
「行くぞ、眷属たちよ!!」
全治はホワイトとルビーを召還し、二匹とも戦闘スタイルになった。
「大橋先生、逃げて!!巻き込まれたら命が無いよ!!」
全治の鬼気迫る忠告に大橋は従い、校内へと逃げていった。
「さあ、行くぞ全治!!」
「黒之・・・、今度こそ君を止める!!」
そして神童の戦いが始まった。
戦闘開始から三十分、全治と眷属達はは操られた生徒達を全員気絶させた。
「流石全治、僕と戦いながら生徒達を助けるなんて・・。」
「当然の事だ、そもそも僕と黒之の戦いに巻き込もうとするのが可笑しい。」
「じゃあ、僕も強くなろう。」
すると黒之は魔法陣を発動し、自分の力を高めた。すると松宮が突然苦しみ、そして死んだ。
「なっ・・・黒之、何をしたんだ!」
「魔法で強くなったんだ、ただこの魔法には自分より年上の生贄が必要でね。」
そして黒之は波動で全治を攻撃した、全治は軽々と吹っ飛び墜落した。
「全治様!!」
「・・・っ。黒之君、僕も本気で行くよ!!」
全治は覇気を纏い、黒之に向かって行った。
そしてそこから更に三十分後、全治と眷属と黒之は互いにボロボロになっていた。
「全治、お前が全知全能だとは言えここまでしぶといとは・・・。」
「ハア・・・僕は負けない・・。」
するとここでクロノスが全治の動きを封じた。
「黒之、よくやった。止めは我がやる。」
「うっ・・・しまった!!」
クロノスは光の力を込めた球を全治に向けて放とうとした。
「全治を守るぞ、ルビー!!」
「分かったわ!!」
ホワイトとルビーが全治を守るように、身構えた。
「無駄だ、この球は人間にしか当たらない。」
そう言ってクロノスは球を放った、そして球は目の前で炸裂した。
「ついに、全治を倒したのか・・。」
黒之が目を開けた時、全治はクロノスの呪縛から逃れていた。
「なっ、何故無事なんだ!!お前何かしたのか!!」
「ただ、体が動けるようにしただけだよ。」
「黒之、どうやら愚者が割り込んだようだ・・。」
その者を見た時、全治は悲鳴を上げ、黒之は舌打ちをした。その者とは、大橋照子だった。
「黒之、悪いがこれ以上は身が持たん。今回はここまでだ。」
「くっ・・・次は必ず殺す!!」
クロノスはまだ完全に復活したわけではないので、ここは引く事にしたのだ。クロノスと黒之が去った時、全治は大橋に駆け寄った。
「どうして・・、逃げてと言ったのに!」
「それはこちらのセリフよ・・・、私には生徒を守る責務があるの・・・。」
「大橋先生・・・。」
「ただ一つ悔いがあるなら・・・あなたに謝れなかったことね・・。」
すると全治の手に魔導書が握られた、そして光を放つページを開いた。
「全治様、やるのですか・・。」
「命よ、新しい姿となり我に使えよ。」
全治は大橋に自分の眷属として転生する魔法をかけた、すると大橋は人から鷲の姿になった。
「あれ?私、生きてる!?」
「僕が生まれ変わらせたんだ、これからは僕の眷属として生きていく。」
「よろしくね、僕はホワイト。」
「私はルビー。」
鷲は戸惑ったが、これも何かの縁と受け入れた。」
「全く、全治君は面白いんだから。」
「こら、全治様だぞ!!」
「ところで君の名前は?」
「そうね・・・、アルタイルがいいわ。」
「じゃあアルタイル、これからよろしくね。」
こうして全治は新たな眷属を得た。
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