第124話 新たなダンジョン探索

 ヤマト帝国属国内で起きた内乱騒ぎや豚皇太子の逐電騒ぎもある程度落ち着きが見え始めたので、俺は俺の子供達や預かっているアリサ公爵令嬢や豪商の双子の兄妹、カボサン王国の皇太子と王女様、それに船長見習いの子供達を連れてテン・ムスタッチに新たに発見されたダンジョン探索に出かける事にした。


 この新たに発見されたダンジョンの探索とダンジョン内に巣食う魔獣の討伐についてはテン・ムスタッチの冒険者ギルドから手紙の依頼を受けているのだ。

 そんな依頼が無くても2Sランクの冒険者でテン・ムスタッチの新たな領主としての力量の発揮の場所としても、そのダンジョンを踏破するつもりだった。


 ランクと言えば、とうの昔に3Sランクで魔王と同じほどの実績を上げているが、俺と敵対する魔王がつくりあげた冒険者ギルドだ、簡単には3Sのプラチナカードはくれないだろう。

 3Sのプラチナカードを貰えば魔王に並ぶ冒険者ギルドの大幹部だ。

 冒険者ギルド内の発言力が強まる。

 魔王が

「獅子身中の虫」

である俺に何故依頼してきた意味が分からん!


 そういうわけで本来は冒険者ギルドの依頼を受ける義理は無いが、領主としてはこれを討伐する義務がある。

 冒険者ギルドから依頼を受けてダンジョン探索とダンジョン内に巣食う魔獣の討伐を終えれば嫌でも冒険者ギルドに顔を出さなければいけない。

 これが終わったらテン・ムスタッチの冒険者ギルドにでも顔を出すか。

 冒険者ギルドが2Sランクから3Sランクにランクアップしてくれないなら、テン・ムスタッチの新たな領主として冒険者ギルドを解体して新たな冒険者ギルドでもつくるか!


 しかし俺の子供達以外は見事なほど預かって連れて来ている子供達は聖魔法使いばかりで、今のところ攻撃魔法が使える者はほとんどいないようだ。

 今回のダンジョン探索の目的は預かっている子供達の魔力量上げと少しでもで良いから攻撃魔法が使えるようにすることだ。

 少し年嵩のカボサン王国の皇太子と王女様が加わっているので、子供達がレベルアップできるかということも問題なのだが?

 それと、依頼がくるほどの新たに発見されたダンジョンだから、何か目新しい宝でもあればと思っている。


 ただね⁉この新たに見つかったダンジョンは豪雨被害で土砂が崩れ偶然に出口が現れたものだ。・・・俺のステータス画面では存在が表示されていない。発見されたと聞いてもステータス画面では表示は無いのだよ?

 ダンジョンが発見された直後から、ダンジョン特性が無いのに魔獣が住みついているようだ。・・・う~ん、これではただの洞穴だ!


 ただこのダンジョンに巣食っている魔獣が問題だ、今まででこの国ではあった事がない化け物のような魔獣だという。

 それで、これは外からダンジョン内に魔獣が入ったものではなく、ダンジョン特性が無いのに魔獣を生み出したことになるのだ。


 この新たに発見されたダンジョンは一層目からこのあった事も無いとんでもない強い魔獣が現れたために冒険者達は撃退されてダンジョン内の探索は進んでいないそうだ。

 これでは2Sの資格を持つ俺に冒険者ギルドから連絡が入りこのダンジョン内の探索と魔獣の討伐以来がきたのも道理だ。

 本当にダンジョンならば踏破してしまえば封印されて何百年かは安全なのだ。


 新たに発見されたダンジョンの場所まで子供達を乗せた馬車を連ねてやってきた。

 そのダンジョン一層目からのとんでもない強い魔獣の正体は軍隊蟻の化け物だった。・・・この軍隊蟻、以前の恐竜の住む島で出会った奴の進化版か?

 恐竜の住む島での蟻は茶色で大きさもこの当時の成人男性と同じ150センチほどだったが、この軍隊蟻は真黒で体長2メートル程で大きさが揃っているのだ。


 前世でも軍隊蟻という名の蟻がいるが、この蟻を魔獣なので大きくしたものがダンジョン内に巣食っているのだ。

 しかしその蟻をよく見ると頭には大きなヘルメットのようなを被っており、手には槍を持ちその槍の穂先から蟻酸を吹きかけてくるのだ。


 蟻酸これは厄介だ。

 皮膚は溶かす、肺は痛める、目に入ると失明する可能性まである代物だ。

 こいつらが何十匹、何百匹と集まって槍の穂先を侵入してきた冒険者達に向けると蟻酸を吹き付けて撃退していたのだ。

 軍隊蟻にやられた冒険者達がダンジョン前の広場でぐったりとしている。


 流石に俺の預かっている子供達は聖魔法を使え、それにテン・ムスタッチの医大で学んでいるだけあって皆で手分けして治療をテキパキとはじめた。

 暖かい聖魔法の光が溢れて見る見るうちに冒険者達の怪我が治った。

 しかし治った端から冒険者達はダンジョンに突入しては軍隊蟻に返り討ちにあっては戻って来て、子供達に治療をお願いしようとする。


 俺は怪我をすれば子供達が治すという、その悪循環と魔力切れで辛そうにしている子供達を見て冒険者達を一喝する。

「馬鹿者!何を考えているのか!

 無謀で子供の事を思わない者は俺が成敗してやる‼」

そう言うと俺は守り刀を抜き出す。

『バリ』『バリ』

と刀身に雷が纏う。


 流石に新たにテン・ムスタッチの領主となった俺が雷神という名の守り刀を持っているのを思い出してギョッとしている者もいたが、冒険者と言っても無頼の集まり、反抗心と今まで子供などは親の為の労働力で亡くなれば産めばよいと言う無謀な考えが支配していたために

「こんな便利な娘っ子がいるなら安心してダンジョンに入れるぜ。」

と言ってアリサ公爵令嬢やカボサン王国の王女を人質に取った者がいた。


 その阿保な冒険者の後ろにいつの間にか金の鎧と銀の鎧が立っていた。

 阿保な冒険者は後ろからの気配に気づいて振り向いた時には破壊神と破壊女神が振り下ろされて分子になって消え去った。

 それを見た冒険者達は大慌てで逃げ去った。

 領主が連れて来ていた身内を刀を使って人質にしようとして、領主を怒らせたのだ、この世界では全員が同罪で死刑になっても不思議は無いのだ。


 蜘蛛の子が散るように逃げ去った冒険者は放っておいて、魔力切れで辛そうな子供達を魔法の袋に入っていた医療ポットを出して休ませる。

 魔法切れだけなので2時間から3時間でこの改良された医療ポットならもとに戻るだろう、その間に昼食の準備でもするか。

 この新たに見つかったダンジョンのそばには大きな川が流れている。

 豪雨災害でこのダンジョンが見つかったが、その豪雨の水の汚れも無くなり、川底までが見える清流になった。

 そのおかげでイワナのような魚がうじゃうじゃと泳いでいるのが見える。


 このイワナは姿は前世のイワナと良く似ているが、とにかくデカイ!

 2メートル級どころか3メートルもある奴がうじゃうじゃと泳いでいるのでそれもあってか直ぐ見えるのだ。

 

 このイワナの化け物は、水スライムを美味しそうに食べるうえに、実は毒苔が水に入った際の藻を食べてくれるのだ。

 こいつを養殖して毒苔の藻を食べてもらおうと考えているのだが、この地域独特の水生魔獣であり、この川の水以外での養殖が難しいのが問題だ。

 この化け物イワナについては、川辺に水を飲みに来ていた親子連れの鹿モドキに飛びあがって体当たりをくわせて倒すと群がって二頭ともあっという間に骨だけにしたのを見かけたのだ。


 それでも昼飯はこの化け物イワナで決まりだな。

 化け物イワナたくさん獲って残れば養殖用の研究材料にでもするか。

 生きたまま捕まえたいので、木魔法で競泳用のプールほどもあるデカイバケツを作る。

 鹿モドキが食べられるのを見ても、化け物イワナを手づかみて捕まえてやるつもりで、身体強化魔法で身体の能力を最大限に上げて川に入る。

 化け物イワナのおかげか、それ以外の水スライムのような危険な水生魔獣はいないようだ。

 化け物イワナが川に入って来た俺に気が付く、前世の普通のイワナなら逃げ散ると思われるが水の中に入って来た獣や魔獣はこの化け物イワナの格好の餌なのだ。

 化け物イワナの目がギロリと光る。

 何十匹もの化け物イワナが俺に向かって飛びかかってくる。


 体長2メートルや3メートルもある化け物イワナが襲い掛かってくるのだ。

 化け物イワナは3メートル級で体重が40から50キロもあるのが鉄砲玉のように口を開けて飛びかかってくるのだ。


 この世界の一般的な成人男性の身長は前に書いたが、体重は食べ物の栄養価が低いためか化け物イワナと同じ40キロ程しかない。

 こんなデカイ化け物イワナがこの世界の成人男性に襲い掛かれば、一発でこいつらに押し倒されるとあっという間に喰いつかれて骨しか残らないのだ。・・・イワナの姿をしたピラニアだな!口の中の歯が凄い‼

 俺に向かって飛んでくる化け物イワナを木魔法で造った競技用のプールほどもあるデカイバケツに向かって足で蹴りこみ、手で掴んでは投げて放り込んでいく。

 瞬く間に2メートルや3メートルもある何十匹もの化け物イワナがデカイバケツに放り込まれた。


 さしもの競技用のプールほどもあるデカイバケツが一杯になり、もう終わりかと思ったところで川が割れる。

 川の主だ体長5メートル、体重も百キロはあろうという程の大物だ!

 俺に向かって、でかい口を開けて飛びかかって来た。・・・今までの化け物イワナに比べても歯が物凄い!歯がデカイナイフのようだ。


 こんな奴に噛みつかれたら俺でも大変だ!

 それで飛びかかってきたデカイ化け物イワナの横っ面を平手で叩いて河原に飛ばす。

 もう一発蹴りをデカイ化け物イワナに入れようとしたら、デカイ化け物イワナが三枚おろしになってデカイ木の皿にのっているではないか。・・・三枚おろし?デカイ木の皿⁉何時の間に!


 皿の横にはいないはずの俺の妻達が鬼の形相でいた。

「子供達に酷い目に合わせて貴方は水遊びですか?

 良いご身分で、貴方も三枚におろされたいのですか?」

と怒られた。・・・子供達が心配でつけて来ていたようだ。


 子供達が医療ポットから出てきたところで、デカイ化け物イワナの刺身や串焼きが昼飯として出された。

 医療ポットから出てきた子供達は俺の妻達がいたのを驚いて見ていた。

 昼飯のあと一服してからダンジョンにまずは俺だけが入る事になった。・・・俺の妻達の目が険しい!


 ダンジョン内の通路の天井には間接照明が取り付けられておりほの明るい。

 今までのダンジョンとは違う⁉

 俺がダンジョン内に入ると遠くでサイレンのような

「ウーウー」

という警報音が聞こえて、間接照明が赤くなり瞬く。

 すると侵入者を排除しようと全身が真黒な軍隊蟻がぞろぞろと出てきた。

 軍隊蟻は穂先をそろえて、俺に向かって蟻酸を吹きかけてくる。

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