第122話 逐電した豚皇太子
今回のヤマト帝国対インドラ連合国の戦いは、インドラ連合国の科学力の勝利で終わった。
ヤマト帝国の大敗で、ヤマト帝国の
これによって最初は一番上の義姉カシスの嫁ぎ国、トラファルガー王国において義姉カシスを亡き者にして国を潰した。
今度は二番目の義姉カレンの嫁いだ、ヤマト帝国の属国の一つフイルコン王国でも、王の義理の兄と王弟との違いがあるが、同様な事が起こったのだ。
今回は義姉カレンとフイルコン国王の一騎討で義姉カレンの勝利となった。
その場にいたフイルコン王配下の降伏した兵士達によって、カレンの子供達が地下牢に幽閉されていると告げられる。
俺と姫将軍カレンは、降伏しないでまだ向かってくる守備兵や近衛兵を倒しながら王城内の地下牢に向かって進む。
途中でカレンの二人の子供達と出会うことが出来た。
降伏していた近衛や守備兵が先に地下牢から義姉付きの女官とともに幽閉されている義姉の子供達を保護して連れ出してきたのだ。
その後ろには包帯だらけのカレン付きの兵士達がいた。
姫将軍カレンは地下牢で幽閉されていると聞いていた二人の子供の無事な姿を見てホッとしている。
救い出された姫将軍カレン付きの武官や女官そして、二人の子供達を連れて謁見の間に赴く。
姫将軍カレンは謁見の間に赴むくと、直ぐ城内外に御触れを出して、重鎮達を集める。
重鎮達を待つ間に謁見の間に衝立が立てられて、義姉カレンや二人の子供達が寝かされ、俺は傷を負ったカレン付きの武官や女官の治療に当たる。
城内の騒動の音を聞きつけておっとり刀で駆けつけてきた重鎮もいる。
逆に御触れを聞いて事敗れたと知って逃げ出した重鎮達もいる。・・・身一つで逃げれば良いものを宝石類どころか家財道具一式持ち出して逃げ出そうとして王都を守る城壁の城門で捕まっている重鎮達が多数いた。
罪を暴く必要も無く、自ら進んで罪を申告したようなものだ。
しかしものの見事に
謁見の間に集まった重鎮達と今回の騒動を受けて、今後のフイルコン王国のあり方について話し合いが行われた。
翌日、姫将軍カレンの幼子にはできるだけ元フイルコン国王の生首を見せないようにしながら盛大に国葬を行ったのだ。
俺と義姉カレンは、その場でインドラ連合国とフイルコン王国との間に不可侵条約を結ぶ、俺は義姉カレンの後見人として義姉カレンが女王としての仮の戴冠式をするのを助けたのだ。
後日義姉カレンの治めるフイルコン王国はインドラ連合国に正式に参加することになったのだった。
ヤマト帝国傘下の二人の義姉が嫁いだトラファルガー王国とフイルコン王国において二人の義姉を亡き者にしようとした事件だけでなく、ヤマト帝国内においても皇后派と第二宰相の率いる内務大臣派が激しく対立し、ついには死人が出たことにより内乱が
このような事件が起こっている中においても異彩をはなっていたのが豚皇太子だった。
俺が三人の義理の姉妹を助けてから今までの奇行が嘘のように収まり、皇太子然としてきた。
それは上面だけだった、豚皇太子の粛清が始まったのだ。
皇后派に反対する第二宰相と内務大臣派に関する全ての罪が暴き立てられていった。
それも些細なものまでもだ。
当主や次期当主どころか一族郎党全てが些細な罪まで問われていったのだ。
それも苛烈な刑罰としてなされていったのだ。
赤い血の川が流れた。
彼等の恨みの声がさらなる
豚皇太子のうわべだけの奇行が収まったかに見えたが、これは公の機関や公権力を利用した奇行の延長であったのだ。
それを知った皇后は自らが豚皇太子を諫めようと豚皇太子の部屋に赴いたが、それは皇后の破滅への一歩であった。
豚皇太子の部屋は一見片付けられたように見えたが、部屋の片隅にあるクローゼットの扉が開けられていて、腐臭が流れ出ていたのだ。
クローゼットの中から豚皇太子の機嫌の良さそうな鼻歌が聞こえてきた。
皇后はクローゼットを覗いて仰天した。
クローゼットの棚には女性の生首が瓶に入れられて、所狭しと並べられていたのだ。
その一つの生首、エルフの女性の生首で、いつの間にか行方不明になった俺の母親のものもあったのだ。
また、何人もの行方不明になっていた女官や町方の少女の生首が並べられていたのだ。
豚皇太子は皇后がクローゼットに入って来たのに気が付き、皇后を残った血走った赤く濁った左目で見つめるとニヤリと笑うと、風魔法で皇后の首を落として、その首をいそいそと瓶に詰めるのだった。
皇帝は戻って来ない皇后を探させた。
皇后の首の無い遺体は豚皇太子の部屋の前に打ち捨てられていたのだった。
皇后を探す名目で豚皇太子の室内に皇帝の近衛部隊が乱入して、クローゼット内に豚皇太子の禍々しいコレクションの数々を見つけたのだった。
さしもの勢力を誇った皇后派も皇后が亡くなった事により勢力が極端に脆弱化して、第二宰相と内務大臣派が息を吹き返してきた。
しかしながら第二宰相と内務大臣派は豚皇太子の血の静粛によって数量的にも旧皇后派より劣ったために、第二宰相達が望んでいた俺の王太子への復権はならず、代わって皇后の産んだ三姉妹の一番下の娘カサンドラ王女を次期女帝とする事で意見の一致を見たのだ。
これをもってヤマト帝国の皇帝は豚皇太子を廃嫡して、俺がインドラ連合国で保護している三姉妹の一番下の妹カサンドラを連れ戻して次期女帝とすると布告したのだった。
逐電した豚皇太子はヤマト帝国の隣国とはいっても、その間には聖龍山系と呼ばれる高山を越えた魔法使いの王国に逃げ込んで行ったのだ。
聖龍山系は、この世界の最高峰9千メートル級の山々が連なる連山で、その最高峰が聖龍山で標高1万2千メートルを誇るのだ。・・・前世でも世界最高峰はヒマラヤのチョンランマ サガルマータで8,848メートルなのだ。それよりも高い山々が連なっているのだ。
聖龍山系はとんでもない高山であるばかりではなく、聖龍山と呼ばれるようにワイバーンやドラゴンが飛び交う竜の住む山なのだ。
本当にこの聖龍山系を超えるのは至難の業と言ってもよいのだ。
この高山を越えて辿り着いた国は魔王の配下が治める魔法使いの国だ。
その魔法使いの国を越えれば北極の大陸が氷で繋がっているのだ。
さらにその先には同じように氷で繋がった、まだ見ぬアイランド大陸が広がっているのだ。・・・アイランド大陸、俺の魔力量を持ってしてもステータス画面の地図表示が、魔王と思われる者の魔法阻害の力を打ち破れないで真黒な大陸の表示のままなのだ。
同様に魔王の配下が治める極寒の国家の魔法使いの国も俺のステータス画面の地図表示でも、魔王国と同様に魔法阻害の魔法でも使われているのか、何か靄がかかったようで表示がはっきりしないのだ。・・・魔法使いの国がもやもやと
「おいでおいで」
をしているような感覚を覚える。
魔法使いの国には豚皇太子と決着をつけるために向かわなければならないのだ。
豚皇太子は、その9千メートル級が連なる聖龍山系を越えて魔法使いの国に逃げ込んでいるのだ。・・・本来の豚皇太子の持つ力か、それとも豚皇太子を連れ出せた者の力か、侮ってはならないその力は驚異的なものなのだ。
ヤマト帝国の皇后を殺して逐電した豚皇太子が廃嫡されて、俺が庇護している義妹の三女カサンドラがヤマト帝国の女帝となる事になったのだ。
真正カンザク王国に住む俺のもとに第二宰相が使者となって訪れた。
丁度、カサンドラもヤマト帝国の大使としての業務を終わって、俺達の家族と共にくつろいでいる所だった。
当然、カサンドラの女官付きになった、第二宰相の娘の能天気二人娘の一人マリンもいる。
第二宰相の姿を見た途端、俺の体の後ろに能天気二人娘が隠れる。
俺の陰で
「何であんたまで隠れるのさ!」
等と大声で言い争うので、第二宰相が娘に気が付いてしまった。
第二宰相は俺達が見ているにもかかわらず、オイオイ泣きながらマリンを抱きしめている。
相当心配をしていたようだ。
ところが、マリンもマリヤもヤマト帝国には帰りたくないと言い出した。
何でも子供の頃からの許婚が、大人になるうちに豚皇太子のように醜くなり、考え方も貴族思考、悪く言えば選民思想で家僕や女官を鞭打ったり、飲み打つ買うを平気ですることが嫌で飛び出したらしい。
今はヤマト帝国の皇女帝となるカサンドラ付きの女官になっているので、カサンドラの一言で婚約破棄は簡単に出来るという。
そのうえ二人の相手の許婚は豚皇太子の御学友と言う奴で、豚皇太子の悪行に手を貸したりしている事がばれて廃嫡の上処刑されてしまったそうだ。
何も知らず、このまま許嫁で婚姻でもしていたら、許嫁の同様の罪を着せられて悪くすれば首が刎ねられ、良くても家の片隅で飼い殺しか、どこかの金持ちの妾になって残りの人生を送っていたのだ。
家から飛び出して冒険者になった事やカサンドラ付きの女官になっていたことで能天気二人娘の首が繋がったのだ。
第二宰相と共にカサンドラが帰国する際は、能天気二人娘は女官として一緒に帰国する事になったのだ。
にぎやかな能天気二人娘がいなくなるのは、俺の妻達だけでなく子供達も寂しそうなのだ。
現ヤマト帝国皇帝は末娘のカサンドラが女帝になると決めると直ぐに退位して廃棄帝と名を改めた。・・・皇帝は退位したと言っても陰でカサンドラを支えるつもりでいたのだ。
ヤマト帝国には幾人もの優秀な宰相がいるので、皇帝の席が空位でも何ら問題が無いのだ。
廃位帝となった俺の父親は、今までは皇后に頭を押さえられて何も出来なかったが、念願だったヤマト帝国内等を漫遊しているのだ。
腕の立つ太い鋼をよりあわせた筋肉を持つ影の将軍を始めとした、影の腹心の部下10名を引き連れてぶらぶらとヤマト帝国内等を漫遊しているのだった。・・・さすがに連絡が取れないと不便なので豪商の持っていたのと同じ伝言魔獣を二羽交互に使っているようだ。
伝言魔獣の有用性に気付いた皇帝は、ヤマト帝国内の帝王城内に広い伝言魔獣専用の繁殖施設を設けさせているのだ。
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