第120話 トラファルガー王国の後始末
義姉カシスが嫁いだトラファルガー王国において、トラファルガー国王が首長国の娘で何方かと言うと口うるさい古女房の義姉カシスの口を永遠に塞ぐこと。
そして、何よりも産まれてから常に比べられ、最近では国政にも口をはさむ目障りで優秀な義兄の存在が疎ましかった。
王よりも人気の高い国王の義兄を始末する、それも義姉カシスとの不義密通という冤罪をかぶせるという計画が練られ実行された。
トラファルガー国王の暴走が起こした悲劇によって、トラファルガー王国はヤマト帝国の攻撃部隊によって王城に籠った城兵もろとも殲滅された。
これはヤマト帝国が
「反乱を許さない!」
という事をヤマト帝国内や傘下の属国に意志を示すためであった。
トラファルガー王国はカシスの一粒種の旧皇太子カシムが成人するまでの間、ヤマト帝国帝王が預かる直轄統治国になったのだ。
今回の攻城で反逆者の血は流れて統治しやすくなった。
真実のように見えるが反面血を流しすぎた、統治するための補佐官や次代を担う人物までもがいなくなり、恨みだけが残った。
これでブスブスと不満や批判の音をたてる反乱の火種はトラファルガー王国内に残っている。
それに大きくなったカシムが今回の事件をどう思うかだ!
インドラ連合国の真正カンザク王国以外には歴史書や戦史など書ける人物が見当たらない。
正確な史実が残らない以上、この戦いを湾曲して伝える者がいたら大変だ。
俺の膝を枕にして眠っていた、義姉カシスとよく似た美少年カシムの将来に暗雲が立ち込めて見える。
そのカシムは、トラファルガー王国皇太子の地位に復権して、今後の王としての教育を受けるためにヤマト帝国に残った。・・・ヤマト帝国の直轄統治国になったのだからしょうがない。
ヤマト帝国の俺の父親のもとでカシムは帝王学を学ぶことになったのだった。
俺は義姉カシスの弔い合戦が終わり戦勝に喜ぶ・・・ヤマト帝国からインドラ連合国の首都に戻ることにした。
その俺は一番下の義妹のカサンドラを預かっていた。・・・義妹のカサンドラを襲った豚皇太子から離すためだ。
ヤマト帝国等インドラ大陸にある各国の皇位、王位継承権は男性にある。
男性がいない場合は女性にも皇位、王位継承権がまわってくる。
ヤマト帝国ではカサンドラが豚皇太子の母親に次いで皇位継承権第3位の地位にあった。・・・俺は出奔して廃嫡扱いなので皇位継承権はない。
ヤマト帝国内で女性問題で悪い噂が絶えない豚皇太子としては、いつ廃嫡されてもおかしくない状況だった。・・・自業自得なのだが、反省が無く何度でも同じ過ちを繰り返しその尻拭いを豚皇太子の母親がしているのだ。
俺がアリサ公爵令嬢を救出する際、豚皇太子の部屋で見かけたのは、攫った女性を切り刻む猟奇殺人鬼の姿だった。・・・いくら何でも国王や帝王の息子であっても即刻縛り首が相当な罪だ。
母親が犯罪者の息子の徒ならぬ犯罪を消す。
これでは母親も犯罪に手を貸しているようなものだ。
始末に負えない、母性愛とまた貴族の特権意識、選民思想の最たるものだ。
今回の戦闘の発端となったのも、豚皇太子がアンリケ公国のアリサ公爵令嬢との結婚を求めたことだ。
悪い噂は千里を走る。
ヤマト帝国の属国であったアンリケ公国ではあったが、猟奇殺人鬼の豚皇太子の元にはやれず、また地方領主の座からの転落という事もあった。
これがアンリケ公国がヤマト帝国への不信感を募らせ、インドラ連合国参加のきっかけをつくったのだ。
アンリケ公国を巡ってインドラ連合国とヤマト帝国が戦争になり、ヤマト帝国が大敗を喫したのである。
これではアンリケ公国のアリサ公爵令嬢と、とても結婚出来そうもない豚皇太子は廃嫡の危機に怯えた。
豚皇太子は実の妹カサンドラを襲った。・・・前世の歴史でも古代エジプトのファラオ(君主・王)は女性が王位継承権を持つため嫡出の長女をもらう近親結婚をしていた。日本神話でも日本国誕生のイザヤギとイザナミは兄妹神で結婚して日本の神々を誕生させていった。
この世界では近親結婚は褒められた行為で、認められてもいた。
豚皇太子は皇位継承権第3位のカサンドラとの事実上の関係を結び、自らの地位を確固たるものとしようとしたのが裏目に出た。
その結果、豚皇太子はカサンドラに目を刺されて、目のかわりに真黒な禍々しい気を放つ魔石をつけて復活したのだ。
真黒な禍々しい気を放つ魔石、ゾンビのように短時間経過によって知能が衰えて飢えだけが支配するわけではない。
知能や意識は真黒な禍々しい気を放つ魔石によって操られる。
外見上も体表が直ぐには腐って行かないだけで、体の中には白いウジ虫のようなものが湧いているはずだ。
それはこの世界で初めて人、義叔父を殺したが、そいつが同様に真黒な禍々しい気を放つ魔石をつけて復活してそいつを倒す時にわかったものだ。
豚皇太子は真黒な禍々しい気を放つ魔石にコントロールされていると言っても過言ではない。
このようなことをしでかした豚皇太子であるが、母親の懇願のおかげで廃嫡は免れていた。
豚皇太子の異常な性格からカサンドラを今後も襲うことが危惧されたために、俺の親父でもあるヤマト帝国皇帝だけでなく、豚皇太子、カサンドラの母親も俺にカサンドラを預かってもらうことを願ったのだ。
義妹カサンドラには便宜上ヤマト帝国の大使という身分になってもらい、インドラ連合国の首都にヤマト帝国大使館を作って住んでもらうことにしたのだ。
これ幸いにとヤマト帝国の諜報員が何人も大使館員となったのだった。・・・逆に彼らには巡検士部隊が張り付くことにもなったのだ。
これはヤマト帝国の諜報員が侵入したと言う悪い事ばかりではない、ヤマト帝国の大使館を造った事によりヤマト帝国との外交に関する協定が結ばれて、更には通商条約等も締結されていった。
またヤマト帝国の帝都に堂々とインドラ連合国の大使館を置くことにもなった。
インドラ連合国大使館の開所式は勿論の事、夜な夜な晩餐会等を行い、インドラ連合国の文明文化の宣伝の場にもなった。
例えば最初のうちは富の象徴である首がもげるほどのある重さの金の首飾りが、すっきりとした金や宝石で飾られたネックレスへと取って代わられた。
図書館を併設して一般にも開放した。
焚書坑儒のような法律が今もヤマト帝国内では生きており、馬鹿な皇后派の腰巾着が図書館焼き討ちの為に押し寄せた。
大使館の治外法権は条約締結の際に守るように周知してある。・・・文盲で告知分が読めなかったのか⁉
これをやったらヤマト帝国とインドラ連合国との全面戦争になる。
これはヤマト帝国側の守備兵達によって鎮圧された。
図書館の横にインドラ連合国の幼年学校を建てた。
学校等と言う目新しいもののため、ヤマト帝国帝都在住の貴族の子弟がこぞって通い始めた。
最初は第二宰相の親族や反皇后派の貴族の子弟が多かった。
しかし、ヤマト帝国側も幼年学校の卒業生を重用して、ヤマト帝国独自の幼年学校を建て始めた事から皇后派の子弟も通うようになった。
毒苔の悪性を宣伝して、対処法を伝えた。
こちらは上手くいかない、中国大陸で起こった阿片戦争の阿片のようにヤマト帝国内で蔓延しており、食糧難の時期と相まって安価で高カロリーの毒苔を食する習慣は無くならなかった。
義妹カサンドラをインドラ連合国の首都に招いた時は、俺は現在20歳であり、義妹カサンドラは4歳年下で年齢16歳になったところだから、前世の高校1年生にあたる。
現世でいえば俺が建てた幼年学校を卒業して、士官学校の1年生に当たるのだがどうもやることが幼い。
やはり識字率の問題と御姫様として我が儘に育ったためか⁉
ヤマト帝国の話では才媛才女の誉れも高かったはずなのだが?噂倒れか!
学問よりも武闘派で脳筋の方か!ただ、御姫様教育のおかげで立ち居振る舞いもなかなかのものだ。
カサンドラを見ていると、これなら甥っ子のカシムもしばらくの間でも俺が預かれば良かったかも?
カサンドラは魔法が使え魔力もあることから、王立幼年学校魔法分校の特別教室を設けてあるので、そこで勉強させることにした。
王立幼年学校魔法分校は魔力があれば誰でも入学できるが、基本的に魔力があったがゆえに国の貴族になった経緯があることから貴族が多い。・・・貴族社会で育ったカサンドラとしてはある程度安心して授業が受けれるはずだ。
王立幼年学校魔法分校には、暗殺ギルドの騒動になった時に俺の配下に加わったマリンとマリヤの能天気二人娘も勉強させるために入校しているので、分校内でカサンドラに会うと驚いていた。
マリンとマリヤの能天気二人娘が青い顔をしている。
この二人後で知ったが、ヤマト帝国の有力貴族、それも何人かいる宰相の娘達で堅苦しい生活が嫌で冒険者になっていたのだ。・・・マリンは何と俺の面識がある第二宰相の娘だそうだ。実はもう一人も第五番目の宰相の娘らしいのだ。
俺は何となく怖くて確認が出来なかった。
当然カサンドラも同年の二人の顔を見知っており驚いていたが、いまでは商館の売り子からカサンドラ付きの女官になったのだ。
三人とも、王立幼年学校魔法分校での授業がどうしても理解が追い付かないようなので、宇宙エルフ族の高度な教育を睡眠学習で受けることができる図書館の椅子をこっそり使って学習をさせることにしたのだった。
睡眠学習は三人にはあったようで何とか授業に追いついてきた。
能天気のマリンとマリヤは
「私達天才かしら!」
等と
俺はトラファルガー王国の義姉カシスの弔い合戦を終えて、インドラ連合国の首都に義妹カサンドラを連れて戻ると直ぐに、王の義理の兄と王弟との違いがあるが、同様な事が今度は二番目の義姉カレンの嫁いだ国フイルコン王国でも起こったのだ。
この凶報は巡検士部隊から直ちに俺のもとに伝わった。
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